23話
「クーちゃん、ご飯食べよ?」
「その呼び方やめろ」
「えー?かわいいのに………」
ふざけんなバカ姫。
「クー君、今日はどうしたの?いつもなら寝てる時間じゃない?」
「またノエルさんに呼ばれたんだよ。要件は聞いても後のお楽しみだとか言って教えてくれん」
正直嫌な予感しかしない。
授業の手伝いを始めて早半年。
バカ姫様以降の生徒諸君は真面目に授業を受けてくれた。まぁその分疲れたけど。
そしてその後はバカ姫がマーリン軍団の一員となった様だ。マジで勘弁。
そして悪いニュースが、バカ姫様が俺の話し方や言葉を真似する様になった。
俺にはあんまり使わないみたいだが、周りのやつには結構好評らしい。なんで。
「クライスト君、大体要件について心当たりはないのか?」
「あるよ。でもマーリンさんが知らなそうなのが一番怖い」
「私だっていつでもノエルと一緒じゃないもの。知らない事だってたくさんあるよ」
「そーかい。なら心当たりもないと?」
「もちろんあるよ。多分一緒のね」
なるほど。共謀してないと。つまり2人で別々に企んでいると。うわー。
「その心当たりとは?」
「……………お見合い」
「なんで!?ダメ!」
「それノエルさんに言ってよ。姫さんならなんとかなるんでね?」
「わかった!すぐに止めてくる!」
「はーい待ってー」
「なんですか」
「まだ決まったわけじゃないでしょ?話聞いてからにしましょ。だからみんなで行こっか」
いやわかってて言ってるしょ。楽しんでますよね。
「失礼しまーす」
「はいどうぞ。あら、お客さんがいっぱいね」
「いいでしょ?楽しいことは共有しないと」
「そうね。それじゃ、早速クライスト君にお話がありまーす」
テンションたけぇな。勘弁してよ。
「大事なお話とは、…………なんでしょうか!」
「帰る」
「はいはい、ちょっとした冗談でしょ。お話っていうのは、お見合いです!」
「帰る」
「待ってよー。少しくらい興味持ってよー」
いい大人が駄々こねんなよ。もう疲れてんの。
「学園長、クーちゃんは嫌がっています。それにクーちゃんは私がお嫁にもらいます」
「俺男だよ。いつの間に女の子になったの」
「姫様、残念ですが決めるのは彼です。ですからいくら貴方に言われてもこれは変えられません」
「嫌って言ってんじゃん。もう決まってるよ」
そろそろ聞いて?もしくは助けて。
「学園長、ちなみに相手はどんな子なんですか?同じ学校の子ですか?」
「シエルちゃんさー、話広げないで。俺しないからね?」
「一応だから、クーも見てみなよ。気にいる子がいるかもよ?」
「えー、勘弁してよー」
結局お嬢3人組に引きずられ椅子に座る。
「では、お披露目でーす」
というと5人の写真を広げて見せた。
……………全員歳上だね。しかも20代じゃね?
「あのさ、1つだけ確認。なんでみんなお姉様なのさ」
「え?だって歳上好きでしょ?みんなクライスト君より歳上じゃない」
「そうだけど違うよ?俺より歳下が身近にいないだけじゃん。そもそもこの学校にいないでしょ」
「いるわよー。ここ12歳からだから」
マジかよ。授業で見たことないぞ。
「クーちゃんは、歳下がいいの?」
「そう」
「………そっか」
「クライスト君最低」
「それ本当?それなら先に言ってよ」
「私も選び直さなきゃ。てっきりシエルみたいな子が好きだと思ってたし」
2人ともなんだ。かわいいけど好きとは言ってないだろ。アンナちゃんを見習え。あれが普通だぞ。
「クー、それ嘘でしょ?」
「……………シエルさ、言わなくていいから」
「え?どっち?」
「クーはどっちも関係ないですよ。強いて言うなら、どっちも好き?」
「クーちゃん最低」
「クライスト君最低」
「クライスト君、それは許されないよ」
「そうなの?ならどっちも紹介しーちゃお」
マーリンさん、違う。お願いだからそこから離れて。
「弁解の余地は?」
「いいでしょう。聞きます」
「歳は関係ないよって意味です。つまり、ノエルさんもいけるけど性格的に無理ってこと」
「なんで私で例えるの!?無理って言わないでよ!!」
わかったから泣かないでよ。俺だって泣きたい。
「つまりクーちゃんは私が好きだと」
「言ってない。バカもいい加減にしろ」
「照れてるの?かわいい」
「どこがだよ。お前には何が見えてんの?空間歪んでる?」
「確かにクライスト君はかわいいよね。という事は、自分よりかわいい子じゃないとダメとか?」
「アンナさんよ、男が自分かわいいとか思わないから。そういうことでもないから」
この人達すごくずれてんな。ここまでくるとずらしてるくらいの勢い。
「それじゃクー君は誰が一番?」
「結局お見合いさせんのかよ」
「じゃなくて、この子達の中で」
「それはやめろ」
後戻り出来なくなる。あとアリスだけ目力ハンパない。
一応困ったのでアイコンタクト。伝わるのはシエルとマーリンさんだけだが。
まずシエル。
助けて。
……………姫様でいいでしょ?おバカ。
マーリンさん、助けて。
……………よりどりみどりね?バカか!
仕方ない。一応アンナさん。
助けて。
……………照れんなや!そうじゃねぇよ!
嫌だがノエルさん。
助けて。
……………あかん。キョトンとした顔された。
初めてまともな返しもらった気がする。
「クーちゃん、誰」
待って、この緊迫した雰囲気なんなん。普通にストレスなんですけど。
「んじゃシエルで」
「消去法じゃない」
他2人はめっちゃ本気にするでしょ。助けてよ。
「むー。やっぱり付き合い長いからシエルが一番なのね。2人とも目で会話してたし」
「気づいてたんかい。よくわかるな」
「大切な2人の事だもの。それくらい当然だよ」
初めてドキッとしたわ。急にいい女出すなや。
「まぁそれはそれとして、はい、どの子?」
「続けんなよ。嫌だって」
「でもみんな可愛いでしょ?それにみんな貴族の子だから働かなくていいのよ?」
この人も俺の事わかってきてんな。ちょっと気持ちが揺らいでしまったじゃないか。
「でもクー君は貴族の子好きじゃないでしょ?」
「え?そうなの?なんで?」
「さぁなんででしょう。みんなに聞いてみてよ」
すると一斉に目を逸らした。ですよねー。
「………なにかあったの?」
「貴族様には俺は貧相で、弱そうで、バカっぽいらしいですよ」
「……あー、まぁ、確かに。先生方も同じ態度だったもんね」
今は授業で関わったやつは丁寧になってくれた。
最初からそうしないところが嫌いだがね。
「でも会ったらそんな事無いかもよ?」
「マーリンさんがそう言って大丈夫だったこと無いから。一回も」
「…………まぁ物は試し!」
なに押し切ろうとしてんだよ。絶対ダメな流れだろ。
「私からも言っておくから。大丈夫大丈夫」
「ホントかよ。そもそも俺まだ13だぞ?」
「なに言ってるの。その歳で相手を決めるのなんて普通よ普通」
「王族では生まれる前から決まってる事もあるからね」
「それマジかよ」
パンピーでよかった。
「はぁ、んじゃ一回だけね」
「やったー!どの子?どの子?」
なんでそんなに嬉しがってんだよ。楽しみにし過ぎだろ。
「んじゃ一番右の人」
「お!さすがクライスト君、私の一押しの子を選ぶとは」
「テキトーだよ。んで、なんでその人が一押しなわけ」
「ふっふっふ。この子は私の学生時代の後輩でね?賢くて、優しくて、とても思いやりのある子で」
「んで?」
「一番おっぱいが大きいの!」
「バカ」
こんな先輩に絡まれるなんて………ドンマイ。
10日後、お見合い当日になった。大事な休日にです。
一応無礼は無いようにアドバイスを求めたが、
「クーなら大丈夫」
「クライスト君は特に何もすることはないと思います」
「クーちゃんの浮気者」
という意見。誰も参考にならん。特にアリス。
場所は学校でやるとか言われた。………なんか仕込んでんだろ。やだなー。
一応、来客用の一室で会うことになったのだが、俺は正装などなく普段の格好で行った。ズボンにTシャツという近所のコンビニに行く時のスタイルだ。怒られそう。
俺は先に来ていて部屋で待っていた。案内してくれたノエルさんはなんにも言わなかったからまぁ大丈夫かな。格好は。
10分ほど待つと人がきた。多分お見合い相手か。
……………はぁ、急に帰りたくなってきた。
ノックして入ってくる。
「どうぞ」
「失礼します」
面接みたいだと思った。萎えた。
「初めまして、クライストです」
「…………初めまして、クリスティーナ・レイモンドです」
はいアウト。貴族様の目をしてらっしゃる。
もう本当に嫌だ。帰りたい。
とりあえず挨拶は済ませたので、2人とも椅子に座る。ちゃんと立って挨拶したよ!褒めて!はぁ。
ここからが問題。お見合いなんてした事無いから何すればいいかわからん。メンドイ。
なんか話してみましょうか。
「あの、ご趣味は?」
「無いです」
「そ、そうですか。では好きな食べ物は?」
「無いです」
「は、はぁなるほど。では好きな色とかは?」
「無いです」
なんでだよ!普通の会話にすら出ないクソみたいな質問だからか?でも答えるくらいできんだろ!
一度相手の出方を見てみよう。何か掴めるかも知れん。
…………………爪見てんな。
…………………あくびしてる。おい女の子。
…………………睨んでる?なんで?
「あ、あの、そういえば、学園長とお知り合いなんですよね。どういうご関係で?」
「無いです」
その答えおかしくね?それ聞いたらノエルさん怒るよ?
「え、えっと、クリスティーナさんもこの「気安く名前で呼ばないで」あ、はい」
圧がすごい。目で殺されるかもってくらい睨んでくるよぅ。
「あの、レイモンドさんは、元々この学校の生徒さんだったんですよね?とすると魔術が得意だとか?」
「無いです」
「あぁ、闘士科でしたか」
「無いです」
他にあんの?貴族科か?聞いた事ねぇぞ。
「そうですが、あの、なんで今日は来てくれたんですか?」
「チッ無いです」
イライラし過ぎじゃね?カルシウム足りてる?
…………もうダメだ。話す事ねぇよ。ごめんな。コミュ力低くて。でも限界なんだ。はぁ。
「ねぇ」
「え?はい」
「他に何かいう事ないの?つまんない」
「チェンジで」
「………何それ」
女の子に嫌われる魔法の言葉だよ。
「はぁ、ねぇ何か芸でも見せてよ。少しは私を楽しませること出来ないの?」
「はぁ、すみません」
2人してため息とかヤバイね。意味は違うんだけどね。
もう俺は諦めた。何をするかって?
寝る。机に突っ伏して寝ることにした。すやぁ。
「ちょっとあんた!何寝てんのよ!この私を放っておいて、何様のつもりよ!」
「痛!」
ゲンコツされてもーた。もういや。
すると様子を見ていたノエルさんが入って来た。
10分も経ってないと思うがもう少し早く来てほしかった。………さすがに早いか。
「2人とも、もういいよね」
「先輩。この子なんなんですか?これ本当に闘王様の弟子ですか?嘘っぽい」
これって、もういや。
「はぁ、この子これでもおじいちゃんの秘蔵っ子よ。弟子の中でも断トツの実力だって」
「それ本当ですか?これが団長より強く見えないんですけど」
「レイモンドさんって騎士団の人?」
「チッ、そうよ」
その舌打ちなんだよ。入れなきゃ返事出来ない系女子?口痛くならない?
「学生時代は闘士科の中で一番の成績だったの。すごいでしょ」
「はぁ、まぁ」
「なに?」
「いや、なんでノエルさんが自慢みたいに話してんだろって思って」
本当はこんなとこで一番だからなんだよです。
「それじゃ、1回手合わせしてみる?」
「嫌です」
「俺もやだ」
「えー?クライスト君はいつもの事だけど、クリスはなんで?気にならない?」
「なりませんよ。子供なんてたかが知れてます」
「でもおじいちゃんはもう俺と同じくらい強いって言ってたよ?」
「…………いや、それはさすがに」
マジです。
生命力はまだ多少負けてるけど魔闘気は闘気より力があるからどっこい以上の勝負が出来る。
魔術も使えるし通しも効かない。
だが勝てない。ちっこいから。リーチの差ってやつですな。
「1回試してみなよ。きっと見直すよ。これ先輩命令だからね」
そういうの嫌い。ひどい先輩もいたもんだ。
「はぁ、わかりました。少しだけです」
「俺はやだ」
「それじゃ早速移動しましょう」
ですよね。だる。
ささっと外へ移動。思ったけどこれ誰得?
「それじゃ、準備いい?」
「いつでも大丈夫です」
「いいよー」
「それじゃ始めー」
ゆるいな。気が抜ける。
「バリアー」
「え?ちょっと!それあり?」
「無しとは言ってなかったでしょ」
「んー、無しね」
「ちょい!」
というや否やノエルさんが指を鳴らす。
すると俺の障壁が消えた。それ教えて。
「行くわよ卑怯者!」
レイモンドさんが闘気を纏って突っ込んでくる。
やっぱ騎士様は学生とは違うな。
纏う量が中々だ。子供よりはってだけだが。
痛いのは嫌なので少し闘気を纏う。
そして殴られる。ちょい痛い。
「…………え?」
「…………あの、先輩」
「ち、ちょっと待って」
慌てて俺のとこに走ってくる。来んなよ終わらせろよ。
「クライスト君、大丈夫?」
「もう動けない」
「なんだ、大丈夫じゃない。早く立って続き。ほら」
容赦ねぇな。相手子供だぞ?
諦めて立つ。が、呆れた顔で見られたのでノエルさんを見る。………小声で頑張れって言われた。
いや違う。止めて。
「ねぇ、それで本気?だったら降参しなさいよ」
「降参」
「…………先輩、あの」
「続行」
「えー」
騎士様ももう飽きてんじゃん。やめようって。
だが、やっぱり続けるらしい。また来た。
今度は手加減してるのか、軽く攻撃してくる。
逆に倒れたり出来ないから辛い。しょうがない。
バックステップで大きく後ろに下がり。型通りに構える。
「…………君、型も出来ないの?かなり構え汚いよ」
言い方!これでも結構練習したんだよ!
向こうも同じ構えをとり、同時に相手に飛び込むが、
「うげぇ」
リーチの差で蹴飛ばされた。もういや。
「……………」
「先輩、もういいですよね?」
「クライスト君、真面目にやらないと次の子とお見合いさせるからね」
「はぁ!?もういいでしょ!そろそろ諦めろよ!俺より自分の相手見つけろや!」
「もう散々探しましたー。はい続き」
くそ、いじりすぎたか。ダメージ全然無いな。
この後も何度も同じ様に吹っ飛ばされた。
だが同じ様に終わらない。何させたいんだよ。
「はぁ、先輩。いい加減終わりにしましょう。もういいでしょ」
「あなた、不思議に思わない?この子が何度も攻撃を受けているのに立ち上がれる事に」
「闘気で防いでいるからですよ」
「……………そう。じゃ続けて」
闘士に質問したって意味ないだろ。わかってなかったから聞いただけでしょ。
「あんた、そろそろやめたら?もう飽きたんだけど」
「それノエルさんに言って」
「どうせ聞かないよ。昔からああだから」
「そりゃ残念。んで何しろって」
「防ぐのやめて」
「痛いじゃん」
「あんただけね」
子供相手に何言ってんだよ。騎士らしく助けてくれや。
「これで終わり!」
断る。痛いのは嫌です。
躱して脇をすり抜ける。止めないんかい。
「チッ、往生しな」
「あんたがな」
試しに殺気全開で脅す。弱い魔物なら逃げるレベルにはなった。俺これでも結構頑張ってます。
「え、うそ」
成功みたいだ。その場で足が震えて動けないらしい。戦わずして勝つとはこの事か。
「クライスト君、もう大丈夫」
「はーい」
ちょっとマジな感じで言われた。いつもマジでいてほしい。
「どう、言った通りすごいでしょ」
「………えぇ、本当にすごい」
「でしょ。どう?アリでしょ」
「アリですね」
「無しだろ。ふざけんな」
ガキんちょ前にして何しろって言ってんだ。
「えー、こんなにボインボインなのにー?」
「そんな事しか考えてないから自分が貰われない理由もわからねぇんだよ」
「うぅ、でも魅力の1つでしょ」
「いいとこ一個で山ほどの悪いとこと釣り合うわけ無いだろ」
「うぅ、でも可愛いでしょ?」
「好みじゃない」
「もーー!!」
もう諦めてよ。自分だって嫌なの断ってんだからさ。
レイモンドさんはテキトーに挨拶して帰った。
ちょいちょいこっち見んな。帰れ。
「クー君、残念だったね。でも次は大丈夫!」
「もうやらないから。こりごり」
「えー!?でもいい子いっぱいいるよ?」
「んじゃアリスより可愛くてアンナより胸がデカくてシエルよりいい子で」
「そんな子いるわけ無いでしょ。はぁ、じゃあクー君の気が向いたらまたお見合いしよっか」
いやしないって。
せっかくの休みに疲れた。………お嬢さんら、こっち見んな。




