22話
「爺さん、俺旅に出るよ」
「まだ30日しか経ってないだろ。諦めんな」
「いや無理だろ。そんだけ経ってなに1つ変わんねえんだぞ。あと何しろってよ」
「さぁ」
「おい」
そろそろ助けようとか無いの?アドバイスは?
ノエルさんのお願いで爺さんの代理を始めてからはや1ヶ月。もうだめだ。
毎回毎回やること一緒。内容も結果も一緒。
変わってるのは俺の絡まれ方くらいだ。あかん。
先生方ももう俺には何も聞かなくなった。めちゃめちゃ見てくるけど。
「おい、お前は魔物どうしてんだ」
「何もしてないよ。邪魔らしいから」
「アホか。体がなまるだろ。少しはやれ」
「嫌だよ。だから毎朝組手してんだろ」
最近は昼間に寝てます。まぁ夜も寝てるけど。
「そういえばノエルに呼ばれてんだろ。いつだ」
「昼」
「お前いつ寝るんだよ」
「夜」
「バカか」
本当でっせ。実際にやってるし。
朝稽古を終わって飯を食い、ノエルさんに会いに学校へ移動。眠い。
「クライスト君、会議をします」
「断る」
「もう決まってるから」
ですよねー。帰りたい。
「わかってるけど、一応聞くね。内容は?」
「授業に関して」
「はぁ」
「ちなみに君についてだから」
「うぇーい、やめさせろってことでしょ。やっと解放されるわーい」
「残念、無理です。すぐ会議始まるから行きましょ」
これ以上俺に何しろってさ。………なんもしてないからか。
「それでは、これより授業に関する会議を行います。意見のある方は挙手をして下さい」
すると全員から一斉に手が上がった。仲良いね。
「では、ウォッド先生」
「みなさん、恐らく私と同じ内容だと思いますが、彼についてです」
名前くらい言ってよ。覚えて無いの?
「クライスト君がどうか?」
「彼の行動についてです。彼は私達の補佐として来てもらっているわけですが、彼がこれまでの授業で何をしているかご存知ですか?」
「寝ているのでしょう?」
「知っているのですか!何故彼に何もなさらないのですか!私達は彼の要望通りの働きをしているではありませんか!」
俺の要望ってなんだよ。俺帰りたい。やめたいしか言ってなくね?
「一応確認しますが、彼の要望がなんだったかお聞きしてもよろしいですか?」
「はあ?貴方が我々に言ったではありませんか。彼の指示に従うこと、ですよね?今更何を言っておられる」
「わかっているのに彼の指示は聞かなかったでは無いですか」
「それは、最初は確かにそうでした。ですがそれ以降はちゃんと指示を仰いだでは無いですか」
「そうですか。クライスト君、何故ですか」
「生徒は今まで誰も聞いてないよ」
先生が生徒に言う事聞けよ、とか言ってんのも見たこと無いし。
「確かに、生徒達にはキツく言っているつもりですが、それは貴方にも原因があるからでは無いですか!」
「んじゃ俺以外の人にやらせれば?」
「無理です。もう君以外に頼れる人はいません」
「ノエルさんが行けば?」
「忙しいから。ごめんね?」
「学園長!我らも同じ意見です!彼ではなく闘王様にご助力をお願いしたい!」
いいぞ!始めていい事言った!
「却下です。それでも嫌ならご自分で依頼して来て下さい」
「そ、それは………」
諦めんな!まだダメとは決まってない!いける!
「ですから、彼にしかお願い出来ないわけなので、生徒の皆さんにしっかり言い聞かせて下さい」
「確かに生徒は指示を聞きません!それと私達に指示するのは別では無いですか!」
「そうですけど。でも嫌になりますよね」
「そんなの子供の我が儘では無いか!」
「大人の我が儘に付き合ってんだから少しは多めに見てよ」
「なんだと!君には責任感がないのか!」
「無いよ。金も出ないただのお手伝いになんで俺だけ頑張んなきゃいけないんだよ」
強制ボランティアでハッスル出来るほど人間出来て無いから。
「では報酬があれば頑張れると?」
「ノエルさんの言う報酬はホントに当てにしてない」
「まぁまぁ、一応聞いてよ」
「はぁ、んじゃノエルさんは俺にどんな報酬くれんの?」
「私の秘蔵っ子を紹介してあげる!とっっっってもかわいいんだから!」
「却下」
「えー!?」
えー、じゃないでしょ。それで通ると思った?1秒たりともいけると思わないだろ。
俺そんなに女の子に飢えてる様に見えてんの?
「ふん、では金か。卑しい子供だな」
「金とも言ってなくね。俺商人じゃないから」
「チッ、なら何が欲しいんだ」
露骨に態度悪い。ストレートに悪態つかないでね?遠回しに嫌味言いなよ。それなら多分気づかないから。
「いらない、だから俺は降りる」
「ダメ」
「えー」
「君以外いないんだってば。ふぁいと!」
それどっから覚えたんだよ。俺しかわからんし。
「では君は何をすればまともに働くというんだ!はっきりしたまえ!」
「そうだなー。ナメた真似したらお仕置き、ってのはどう?」
「………え?」
「もちろん殺さない様に手加減するよ。多分」
「んー、それでやってくれるならいいか」
「な、何をおっしゃる!そんな野蛮な事、許されるわけがないだろ!」
「でもあんたらも俺の事ナメてるからさ。こうでもしないとヤル気出ないわけよ」
「で、ですが…………」
何全員して聞かないフリしてんだよ。これでも俺かなり譲歩してんじゃん。
「それならいいでしょ。だって、貴方達の態度次第で彼が真面目にやってくれるって話なんだから。これはもう決定ですね」
「いや、でも」
「嫌ならこの学校からて出て行ってもらいましょうか」
「ぐぅ、……………わかりました」
「他の皆さんもよろしいですね?」
みんな渋々返事をする。少しはマシになるかね。
「では会議は終了です。今日の授業は期待してますね」
ウィンクとかいらんから。俺じゃなくて先生方にやってあげな。めっちゃ萎えてるから。
「クー、どうだった?」
「少しはマシになったかな?多分」
「どんな風になったの?」
「言う事聞かないやつはぶん殴る」
「クライスト君最低」
アンナちゃんひどい。授業見てたじゃん。味方してよ。
昼休憩中らしく、マーリンさんの研究室でみんなで飯を食ってる。アンナちゃんも常連らしい。
「クー、私今日からなんだけど」
「ん?そうなん。シエルならなんも問題ないな。むしろ楽出来そう」
シエルとは最近はないが、魔物討伐に行ってたから指示の必要無いからな。死にかける事も無くなったし。
「でも1つだけ問題が………」
「何、不安になるんだけど」
「実は、同じ班に姫様が………」
「……………どんなお方?」
「…………えっと、クーが殴りたくなる感じの方かな」
「シエルちゃんに全てを託します」
「そんなの無理だよー!」
俺下手したら明日からこの世からいなくなるんじゃね?
昼飯を食い終わり、アンナちゃんは授業へ。
シエルちゃんは今晩魔物討伐なので、午後は休みらしい。
マーリンさんの研究室で2人で昼寝した。
…………いかがわしい事なんてないよ!
「皆さん、今日はこの班員で行動します。そしてそこにある方が、今回闘王様の代理で来ていただいたクライスト殿です」
大分態度変えてきたな。揉み手とかはさすがにないか。後ゲス顔も。
「へぇ、貴方がアラド様の代わりなの。なんだか使えなさそうなやつね。まぁいいわ」
こいつか。まさか出発前にこんな事言い放つとは、恐ろしい子!
「ひ、姫様、授業に関するお話をしたではありませんか。どうか、お願いします」
「ふぅ、面倒ね。第一こんなのが居なくても私とシエルの2人がいれば何も問題ないでしょ」
「姫様、彼はとても頼りになる子ですよ。私もとても信頼しています」
「シエル、貴方の事は信用しています。ですが、これのことはさすがに信じられません。こんな貧相で、だらしなくて、下品な顔をしてる平民なんかのどこを信じれば良いのですか」
言いたい放題ですね。もういいや。シエルに任せよ。
シエルちゃんにアイコンタクト。
俺は無理。任せたよ。
……………1人じゃ無理?がんばって?おい。
先行きが不安。帰ろっかな。
初手から凄まじいパンチを喰らったが、まぁ我慢した。出発前にお仕置きとかさすがに笑えないので、シエルたんの美脚を見て我慢する。
………シエルたん、ごめん睨まないで。
「皆さん、もうすぐで山に入りますが、その前に注意事項をもう一度確認します」
「そんなものいりませんわ。早く行きましょう」
「だ、だめですよ!すぐ終わりますのでどうかお聞きください!」
「はぁ、仕方ないですね。早くして」
態度デカすぎワロタ。先生ですらヘコヘコしてるよ、
「では確認します。まずは単独行動はしない。2つ目が、何か問題が起きた時はすぐに報告。最後に最も重要なことですが、私達教師とクライスト殿の指示は絶対に守ること。特にクライスト殿の指示を破った者には罰を与えなければならなくなります。よろしいですか?」
全員がチッしょうがねぇ。みたいな顔で返事してる。うわだる。
「守らなければなんだと言うの?教えてもらっても良いかしら」
なんでこいつはこんなに絡んでくるんだよ。
シエルにアイコンタクト。
助けて。
…………無理だよ?教えてあげれば?えー。
「はぁ、じゃあ」
と言って近くの木に蹴りを入れる。なんもしてないから足痛い。
「こんな感じで」
「はあ?つまり貴方はこの国の姫である私にも同じ事をすると?」
うざ!なんだよメンドイ。
「んじゃ姫様は特別。こんくらいで」
闘気を3割で作る。そして木を思いっきり蹴る。
すると、ちょっと威力強すぎたせいで木がくの字になるようにへし折れた。やりすぎたな。
俺は今は生命力も8000位まで増えてるからな。
割合で作るとこんな感じで失敗する。テヘペロ。
「……………あの」
「なんですか?姫様」
「今日はよろしくお願いします」
「はいよろしく」
みんなも同じ気持ちになってくれたらしい。先生までも見方が変わったな。まぁこの木みたいになりたく無いもんな。
はいシエルちゃん呆れた顔しない。
その日はめっちゃ疲れた。
初めて魔物を討伐出来たからだ。寝る暇ないよ。
シエルは言わずとも行動してくれるし、姫様は本当に優秀だった。
動きとしては結構雑に指示した。
ちょいちょい探知しろーとか、逃すなよーとか、攻撃はちゃんと相手見ろーくらい。
これでも出来たって事はやっぱやる気だな。
「皆さん、一度休憩を取りましょう。誰か一度探知して下さい」
「わかりました。サーチ」
シエルちゃんが率先して探知してくれた。
他のやつじゃ短い距離しかわかんねぇんだよな。
「大丈夫です、いませんでした。クー、いないよね?」
「ん。いない」
「では休憩しましょう。遠くに行かないで下さいね」
はぁ、やっと休める。
と思っていたらお姫様が寄ってきた。はぁ。
「あの、クライスト様」
「へ?なんですか?」
その呼び方なんだよ。キモいからやめて。
「あの、先ほどの私の言った事を謝罪させて頂きたくて………その」
「いいよ、そんなのするよりちゃんと休みな。お姫様はかなりがんばってたから疲れてるでしょ」
「え?………私の事、ちゃんと見てくれてたんですね。………嬉しい」
それなんだよ!やめろ!シエル!どこだ!
シエルを慌てて探すと後ろにいた。アイコンタクト!
なんとかしろ!
…………ふぁいと?おい!
「クライスト様、どうか私の事はアリス、とお呼び下さい」
「やだ」
「………そう、ですか。やはり私の事をお嫌いなんですね」
「その鬱陶しい話し方やめろ。うざい。あと様つけんな。キモい。そしたら呼んでもいいや」
「本当に?それでは、あ、それじゃ、あの、お願い」
「ハイハイ、アリス様ー」
「様は別にいらないですから、あ、えっといらないから。えと、キモい」
最後の悪口だからね?単純に俺の事ディスってるから。………シエルたんニヤニヤしないでね。悪いとこは師匠に似ちゃダメだから。
この日は大体30匹位討伐に成功。
帰る頃にはみんな嬉しそうな顔でいた。まぁえがったね。
「クライスト君、やるじゃない!」
「俺じゃなくてノエルさんとこの生徒でしょ。俺は指示しただけだから」
「違うわよ。お姫様のこと落としたんでしょ!もうすごく噂になってるんだから!」
「詳しく」
ノエルさんが聞いたところでは、なんでもアリス姫が片思いしているとか。
というかシエルが俺の事めちゃめちゃ聞かれた挙句、
「私、あの方に思いを寄せているの……」
と教室で言い放ったとの事。ふざけんな。
シエルは何故か話を掘り下げたらしい。
どこが好きなのって聞いたらしい。やめてよ!
「彼の良いところは、私にも、誰にも態度を変える事もしない豪胆なところです。そして強く、優しく、可愛らしいところです!」
と俺をディスる。顔は未だに母親譲りのきゃわわフェイスなのだ。しょぼーん。てかちょっとバカにしてね?
「との事らしいわよ」
「マーリンさんいつの間にいたの?研究室帰れば?」
「まぁまぁいいじゃない。ね?ノエル」
「ええもちろん。それよりクライスト君があの子をどう思っているかの方が気になるでしょ」
「ババくさいことすんなよ」
「うぐっ」
「わ、私はまだ20代だからね!?」
ならやんないでよ。迷惑だからね?
「それじゃあ、クー君は誰が本命なの?」
「聞いてた?開き直ったの?」
「私はノエルと違ってめげないから。どうせもうおばさんだし!」
辛いからやめて。俺が悪かったよ。ごめんね。
「私も気になる!誰?誰が好きなの?」
「はぁ、何のことだかわかりませんな」
「だ!か!ら!シエルとアンナちゃんとアリスちゃんの誰がいいの!?観念しなさい!」
うわメンドくさ。それ俺じゃなくてまず本人達に聞けよ。姫様以外怪しいぞ。
「んじゃノエルさんで」
「……え!?わ、私!?え!?」
「何真に受けてんだよ。行き遅れてんの?」
「そんなことないよ!まだまだ間に合うもん!」
「………ごめんなさい」
「今のはクー君が悪いわね」
そんな深刻な顔で言わないで。そうだよね。ノエルさん美人だから選びたい放題。
「ほら、白状しなさい。はーやーくー」
ノエルさんの圧が強くなってきた。ごめんって。
「んじゃ、ギルドの受付の人で」
「…………誰?」
「…………誰?」
「マーリンさん見たことあるじゃん。あの行列の子」
「覚えてないや」
そんなもんか。俺も顔しかわからんしな。
「へー、それで、誰が好きなの?」
「聞いてた?言いたくない事言わせないでね?」
「やっぱりいるんじゃない!」
「いや、そんなだから誰も貰ってくんないんだよって」
「ちょっとクー君!ダメだって!」
「…………ぐすっ」
泣くなよ!どんだけ気にしてんだよ!メンドイ!
「はぁ、別に誰がどうとかないよ。はい、これで良い?」
「うぅ………。良くない」
「なんだよ!あと何聞きたいんだよ!」
「………私、どうしたらお嫁にいけるかな?」
「……………そのうちいい人見つかるよ」
「もーーー!!!みんなそれしか言わないもん!!!はっきり無理って言わないじゃん!!!だから未だに期待してるんじゃん!!!」
やべ、壊れた。どうしよ。
困った時のアイコンタクト。
どうすればいいの?
…………本当にクー君がもらえば?嫌だよ。
「ノエルさんさー。無理って言わないのは、ノエルさんが魅力的な人だから相手が見つかるって思ってるからだよ。だからあきらめないでー」
「最後の棒読みなんなのよ。………はぁ」
とりあえず落ち着いたか。なんで子供にフォローされてんだよ。
「とにかく、2人とも身近にいい人いっぱいいるんだから、あんまり選り好みしないように」
「俺はそんなじゃないから」
「どうせ私は見る目がないですよーだ」
「ふてくされないの。またお見合いする?」
「いや!また変なのしか来ないもん!」
マーリンさんどんなの連れてきてんだよ。もの凄く引いてんじゃん。
「クー君はどんな子が好みなの」
「急に何、ノエルさん何したいの」
「いや、クライスト君にお見合いさせよっかなーって」
「自分が嫌な事やらせんなや」
「何言ってんのよ。お祖母様とは違ってちゃんといい子を紹介してあげるわよ」
「おもしろそうね!私も女の子なら自信あるわよ」
男は無かったのかよ。よくそれで自分の孫にお見合いさせたな。
「どっちにしろそんなことしてる暇ないでしょ。俺授業やらされてるんだからね?」
「ちゃんと休みもあるんじゃない。いいからいいから、試しにね?」
俺3年以上サボってるけど旅の途中だからね?




