20話
「クライスト君、君にいい話と悪い話があります。どっちから聞きたい?」
「マーリンさん、どっちもお断り」
「えー?いいのー?絶対聞いた方がいいと思うんだけどなー」
うざ!朝からなんだよ!
試験の次の日の朝なんだが、またマーリンさんとシエルが朝から来た。しかもうざ絡み。
「んじゃ悪い話からお願いしますよ」
「ふむふむ、てっきりいい方しか聞かないとか言うと思ったけど」
「絶対どっちも言うでしょ。いいから、セイ!」
「はい、では悪い話。試験の後にクー君がジェイド君とヴァン君にした事の続きなんですが」
うわ、聞きたくなくなってきた。泣きそう。
「学校側が一度クー君を交えて話し合いしたいって。だから学校に大人しく投降しなさい!とのこと」
「えー、俺が悪いモノ扱いかよ。ひーどーいー」
「大丈夫、私と師匠が味方してあげるから。安心してね?」
どっちもめっちゃ頼りないじゃん。特にあなたの師匠。
「まぁ、その時に話し合わなきゃどうにもならないし。それでは!次の!とってもいい話です!」
「もう嫌な話聞きたくないからいいや」
「えー?いいのー?」
「わかったよ!早く!鬱陶しいわ!」
ニヤケながら言ってくるからなお腹立つ。ヘソで茶が沸かせるんじゃね?意味違うな。
「はーい。実はですね、昨日私の所にアンナちゃんが訪ねてきてね?」
「は?それで?」
「なんと!クー君を紹介してほしいとお願いされました!」
「断る」
「ちょっと!」
どこがいい話なんだよ。あんたにとって面白い話ってだけだろ。
「クー君、いい?彼女はね?今大注目されてる最も有望な生徒の1人って言われてるんだよ?」
最もなのに何人かいるのかよ。話見えないし。
「つまり、将来は騎士団でも上位の地位に行ける可能性を秘めた逸材なのよ!」
「はぁ、それで?」
「それにとってもかわいいし、体つきも男ウケするでしょ?まだまだ若いけどこれからが楽しみじゃない」
「へぇ、んで?」
「あの子といい仲になれば将来安泰!かわいくて、優しくて、おまけに強い!クー君にぴったりじゃない!」
「断る」
意味わからんわ。テンション高すぎて何言いたいかわからん。
「つまりね?師匠はアンナさんと恋仲になったら、クーの大好きな楽が出来るよって言いたいの」
「あー、なるほど。断る」
「え!?なんで?勿体無い!」
あんたは俺の母親か。それとも近所のおばさんか?……………言ったら危険だな。落ち着こ。
「そもそも紹介ってそういう意味じゃないかもしれんしょ。早とちりじゃね?」
「私もそう思います。師匠はおもしろがりすぎです」
「うっ、いいじゃない。ちょっとくらい」
ちょっとじゃないからよくない。控えて。
「どっちにしろ学校行かなきゃならねぇんだろ。とっとと行け。ついでにメリダのとこ寄ってけ」
「はぁ?何聞いてこいってよ」
「なんでもいい。なんか話しゃいいだけだ」
ただの情報収集な。メンドイー。
諦めて今日も学校に行きました。辛いなー。
先に悪い方から処理するらしい。
学園長室ってとこに集合らしい。
マーリンさん曰く、まぁ正直に答えれば大丈夫だよ。らしい。
らしいばっかだな。怖い。
学園長室に到着。意を決してノック。
「どうぞ」
「失礼します」
インザ学園長室。学園長は見た目若いお姉さん。
アンチエイジング流行ってんのか?
「初めまして、学園長のノエルです。知ってるでしょうが、そこにいる大魔導師マーリンの孫にあたります」
「マジか!!」
「うわっ、いきなり大きな声出さないでよ。びっくりしたじゃない」
「あ、ごめんなさい」
めっちゃ焦った。この人は素で若いんかい。
てか孫とかいたのかよ。初めて聞いたわ。
「その様子だと知らなかったのね。ちなみに祖父はあなたの師匠様ですよ」
「マジか!!!」
「ちょっと!耳痛くなるからやめてよ」
「いやいやいやいや、初耳なんだけど」
「言っちゃダメって。アラドが」
あのジジイめ、だが弱みは握ったど〜。ふへへへ。
「それでは話を進めますね」
「あの2人はいないんですか?」
「今は試験の順位発表なので、先にあなたから話を聞こうと思います」
なるほど。マーリンさんと違ってかなりまともな人らしい。マーリンさん見習って。
ノエルさんに質問をされ、昨日の事をまんま話す。
「つまり、アンナさんはあなたが庇ってくれたことに加え、あの2人にお灸を据えたことにより、好意を持った、と」
「なんの話してんの?話聞いてた?」
ダメだった。やっぱ血ですか。
「まぁ、事情は把握しました。虚偽も無いみたいですから、まずなんのお咎めも無いでしょうね」
「え?それって学園長のノエルさんの一存とかじゃ無いの?」
「残念ながら多数決です。ですが、私や祖母が味方になれば誰も反論しませんよ」
悪い顔で笑うな〜。この人達は絶対敵にしたく無いな。
マーリンさんの世間話に付き合って待ってると、例の2人がやってきた。先生を引き連れて。
「すみません。お待たせしました」
「いえ、問題ありません。それでは早速2人に話を聞いてもよろしいですか?」
とノエルさんに問われると、2人が前に進んで話出した。
内容は意外にもそのまんまで言ってきた。往生際は良かったらしい。うむ、いいことだ。
「つまり悪いのは君たち2人で、この子は被害者だと」
「はい、その通りです」
「間違いありません」
「では、この話はおしまいですね。2人はもう痛い目に遭っていますし、君ももう良いよね?」
「はーい。大丈夫でーす」
すんなり話終わったな。ラッキー。
「それとは別によろしいでしょうか」
「はい?どうかしました?ラスコー先生」
なんだ?それ今言うことか?俺が帰ってからにしろよ。
「実はですね、今回の試験なのですが、彼の採点に問題が……」
「はい?なにか遭ったのですか?」
え?ちょっと待って?まさかの俺?………この人試験官じゃね?
「はい、彼の採点なのですが、全生徒の点数が1点なのです。ある生徒を除いて」
は?ここの時点でおかしくね?
「その生徒とは?」
「今回優勝したアンナさんです」
うわ、そこでその名前でんのか。アンラッキー。
「え?ということは………2人は両思い!?」
「まぁ!お祝いね!」
「おいそこ、話聞いてた?しかもなんで俺が話戻すの?おかしいよね?」
ここ最近マーリンさんのせいで疲れてたのに倍プッシュとか死ぬ。
「おほん!話を戻しますが、今回の騒動ですが、全て彼と彼女の2人で企てていたのでは無いかと私は言いたいのです」
「無いです。話は以上ですか?」
「………え?いえ!?お待ちを!」
「くだらない冗談はやめて下さい。それともあなたを処分しましょうか?」
ノエルさんが急にマジになった。怖。
「い、いえ、ですが」
「この子はそんなことしません。そもそもアンナさんがこの子の事を知ってるはずがないですし」
「何故そうと言い切れるのですか。お教え下さい」
「彼は私の祖父の弟子です。彼は常に祖父の元で修行しているので我が校とは関係がありませんので。つまりアンナさんとクライスト君にはお互いを知る機会がありません。だからこの子達には何もやましい事はありません。今は」
「おい、最後のなんだ」
「すみません、つい」
あんたら大事な時でも抑えられないんかい。
マーリンさん、ニヤつかないで。今は物凄くイライラする。
「…………このガキが……いや、まさか」
「嘘だ!だってこいつは魔術を使いましたよ!」
「だからなんだよ。闘気だって使えるっつの」
そんな珍しいのかよ。爺さん早く覚えてくれ。
「で、ですが!採点はどうすればああなるのですか!2人が共謀してないとああはなりませんぞ!」
「ふむ、クライスト君。あなたは彼の言う通りの採点をしたのですか?」
「いえ、全員5点ですよ」
「え!?」
「俺が……5点だと?」
そこでショック受けんのかよ。話続ける気ないの?
「だそうですよ」
「いえ!ですがこいつの採点用紙は確かに!」
「あれ後で書き換えようとすればなんぼでも出来るでしょ。それこそあんただって出来るじゃん」
「なんだと!?私を愚弄するのか!」
人は良くて自分はダメってか。嫌な大人だなぁ。
「この子の言う通りですね」
「そうそう。私だってずっとこの子の隣にいたけど、そんな採点してなかったよ。提出する前にも聞いたし」
確かに聞かれたな。5点以外でなかったからな。
「ぐっ、ですが」
「しつこいです。学園長として指示します。彼の採点を全て言う通りに直して再度結果を通知するように、以上。解散」
うぉ。最後めちゃめちゃ雑だな。マーリンさんと爺さんの悪いとこ足した感じだな。恐ろしい。
結局判断は覆らなく、3人にメンチ切られる始末。
ちなみに点数変えても順位に変動無し。ですよね。
「それではアンナさんに会いに行きましょうか」
「学園長は来ないでいいから。出来ればマーリンさんも」
「えー」「えー」
うざ!勘弁してよ。癒しのシエルも付いてくるとか言って学校入ったらすぐどっか行ったし。なんなん。
結局付いてきた。最悪だぁ。
ノエルさんの案内でアンナさんのいる所まで行くことになった。
今は実戦訓練の授業らしく、またも試験会場へ行くことに。ここ本当嫌な思い出いっぱい。
「失礼します。アンナさんいます?」
え?授業終わるの待たないの?どんだけ楽しみなんだよ。
「はい、どうかしましたか?学園長」
「いえ、あなたがクライスト君に会いたいと聞いて、今来てもらっていましてね」
「え?そうなんですか。ありがとうございます」
普通の返しに何故かマーリンさんとノエルさんが物足りないみたいな顔をする。おい。
マーリンさんに手を引かれ広間に突入。なんでわざわざ扉の前で待たせたの?無駄やん。ドッキリしょぼすぎじゃん。
そのままアンナちゃんの前へ。
とてもドキドキしてます。もちろん悪い意味。
「先日は私のせいで2人に襲われたと聞きました。大変申し訳ありませんでした」
と言って頭を下げた。おや?これは何もないパターンでは?…………慎重に返事をしなければ、やられる!
「はい、わかりました」
「ありがとうございます。お呼びたてして申し訳無いのですが、私が会いたかった理由はそれだけです」
「いえいえ、お気になさらず。それでは失礼します」
キタ!俺はもう、自由だ!
「ちょっと待った!」
「マーリンさん、今は授業中ですよ。邪魔だから帰りましょう。邪魔だから」
「いえ、よくありません。アンナさん、他に彼に言いたいことあるでしょ。ねぇ」
「ノエルさんそれ脅しだからね?脅迫。それこそよくないから」
「え?あの?ですが、本当にそれだけで………」
君は正しい。この大人達が間違っているんだ。良い子は見ちゃダメ。
「待って!何か、何かあるはず!」
「そうよ!ほら!す、から始まってき、で終わるやつとか!」
「こ、から始まってい、で終わるやつとか!」
どんだけ必死だよ。めっちゃ恥ずかしいからやめて。
「あ、では1つだけ。クライスト、君の実力を知りたい、というのはダメですか?」
「ダメ」
「もちろん!」
「オッケーよ!」
マーリンさん、それ俺しかわかんない。あと母さんか。
「クー君、ここで見せないとあの子を落とすなんて夢のまた夢だよ!」
「そうよ!クライスト君、機会は人を待たないわ!」
チャンスな。待ってほしくないし。
「そういうお話しでしたら、わたしがお相手しましょうか?」
うわ、さっきの、えっと、ラスコー!先生が話かけてきた。うわうざ。
「いえ、必要ありません。この子達2人の問題ですから」
ノエルさんありがた迷惑。どっちも嫌だからね。
「ですが、彼は闘王様のお弟子さんだとか。ならば私くらいの実力者でもないと相手は務まらないのでは?」
「いえ、役不足です。あっち行って下さい」
「マーリンさんよ、それだとアンナさんもダメじゃん。てかやるとか言ってない」
「そうですか。無理を言ってすみません」
アンナさん謝らせちゃったよ。誰がどう見てもこっちが悪いのに。申し訳ない。
「いいから、はい、クー君構えて。魔術は禁止ね。ちゃんと手加減するように」
「アンナさんは手加減しなくていいですからね。彼はとても才能のある闘士らしいですから。胸を借りるつもりで行きなさい」
「え?いえ、ですが」
「いいのいいの。ほらやりましょ」
あれだな、俺とこの子に足りないのはこの2人の強引さだな。まぁいらんけど。
「それでは始め」
いつも緩いんだよな。
「行きます!」
と言って飛び込んでくる。結局やる気満々じゃん。
だがはっきり言って弱すぎ。
闘気を纏って突っ込んで来るが、闘気が薄い。
攻撃も型通りのワンパターン。
何度か避けて下がるを繰り返す。だる。
「何故反撃しないのですか。女だからってナメているのですか!」
「いや違うよ。警戒って言葉知ってる?」
「バカにしないで!」
と叫んでまた飛び込んで来る。つまんな。
アンナちゃんの右ストレートを躱しながらカウンターを顔面に思いっきりぶっこむ。男女平等主義だから。
すると、一撃で意識が飛んだらしく、その場で倒れた。全然ダメだな。5点はあげすぎたな。
「……………クー君、あのさ」
「責めるならやらせたお互いを責めてね。俺は悪くないから。しいて言えば弱いこの子が悪い」
「いえ、闘気も無しにこの子を余裕で倒すあなたが強すぎるのですよ。周りを見て下さい」
は?どゆこと?周りをチェック。
……………ははぁ。さっきの先生も他の生徒もドン引きですね。ヤラカシってやつですか。はぁ。
「クー君、何のために試験官やらせたか忘れたの?」
「いや、でも、えー、俺ぇ?」
「そうでしょ。手加減してれば全然良かったのに。何で本気出しちゃったの?」
マーリンさん!まだ助け舟だしてくれるんだね!
でももう戻れないよ!チクショー!
「 元はと言えばマーリンさんのせいだ」
「ハイハイ、ごめんね。とりあえずアンナちゃん起こそっか」
マーリンさんの魔術で殴った箇所を治して起こす。ちょい、なんでそんな揺さぶんの。おい。
「あの、ありがとうございました」
「いえいえ。またいつでもお相手しますよ」
嘘です。社交辞令です。
「え?本当ですか?ぜひ、お願いします」
「ひゅー。クー君やるぅー」
その煽りやめろ!音出てねぇんだよ!口でやんな!
「クライスト君、まだ君たちは子供だからちゃんと段階を踏まないとダメだからね」
ノエルさん。注意するとこ違う。絶対違う。
アンナさんは満足してくれたようでバイバイした。
申し訳ないけど出来ればもう会いたくない。
ノエルさんもニヤニヤしながら俺を見送る。この人とも会いたくないな。
「ねぇクー君」
「マーリンさんまだいたの?研究室帰れば?」
「まぁまぁ、で、本当のとこどうなの?」
「なんもないよ!邪推すんな!」
ギルド寄って帰ってからもずっとこんな感じでいじられた。勘弁してくれ。




