17話
「おい小僧、ギルドに行くぞ」
「断る!」
2年の間にジジイにお誘い受けた事ない。
絶対悪い何かがある!
「クー、行くぞ」
「聞けよ。その呼び方やめろ」
「早く準備しろ」
「いや聞けし」
もうなんなの!ホント嫌になっちゃう!
爺さんに小突かれて渋々ギルドに向かう。
入るといつも通りの行列。一ヶ所だけね。
あのお姉さんいつも大変そうだけど、逆に元気貰ってます!とか言ってて引いた記憶がある。ごめんね?
「おい嬢ちゃん、来たぞ。メリダはいるか?」
「は、はい!少々お待ちを!」
「ビビらせんなよ」
「知らん」
ひどい爺さんだな。もっとにこやかにしろよ。
……………想像したらめっちゃ怖かった。そのままでいて。
「待たせたね。それじゃ、奥で話そうか」
「そっか。んじゃ俺はその辺ぶらぶらして待ってるから。終わったら気にしないで帰っててよ」
「アホか。お前も来い」
「断る!」
「断る」
あちゃー。人の話聞けってマーリンさんに言われなかった?
あの人も聞かないか。残念。
「アラドさんを呼んだのは他でもない。相談したい事があってね」
「断る」
「小僧、なんでお前が言うんだ」
「俺に振らない?」
「話の内容による」
それだろ。だから嫌なんですー。察してくださいー。
「ははっ、ごめんね。坊やも巻き込んだみたいになって」
「オバさんは悪くないよ。このジジイが悪い」
「うるせぇ。いいから話続けろ」
図星だからって無理矢理そらさないでよ!
俺をもっとかわいがって!楽させて!
…………無いな。
「実は最近、魔物の様子が変なんだよ」
「最近か?結構前からだろ。なぁ小僧」
「あ?確かに。変異種がやけに多いし、王国付近にいないやつがたまに見つかるし」
ちなみにブルっていうイノシシみたいなやつ。
変異種がそれのやつで名前がデッドブル。元気出そうな名前だね。あと俺の嫌いなレッドベアー。
「それは特殊個体が原因だと思うよ。少し前に騎士団が討伐に行ったんだ。オーガの群れがいるらしくてね。そいつらのせいでこっちに流れて来たんだよ」
「んじゃそれが原因だろ」
「それが違うんだよ。魔物は別の種類とは群れを作らないだろ?なのに、って話さ」
「えー、それものすごく厄介な話じゃん」
これは俺流石に関わりたく無い。ホントマジ。
「小僧なんでだ。言ってみろ」
「メンドイ」
「おい」
ジジイもわかってんだろ。もーやだー。
「ごめんね坊や。一応話してみてよ。意見が違うと話し合えるだろ?」
「えー、了解。魔物が別種と混成部隊なんてのは、自分らでは考えない。ここまでは一緒?」
「あぁ」
「……………おう」
その反応なんだよ。違うなら言ってよ。怖い。
「つまり、この件は誰かが統率をとっている。さっき言ってたオーガか、別の魔物か、それ以外か」
「そうだね、私もそう思う」
「……………おう」
「なんだよ、違うなら言えって」
「いや、魔物同士でやったかも、と思ってな」
えー。話聞いてる?それは1番マシなやつだからね?そうじゃなさそうだから嫌なんだよ。
「爺さんよー。なんでオバさんが爺さんにわざわざ来させてこんな話してるかわかるか?」
「だから、その魔物を潰せって事だろ?騎士共が出張ってるから手が足りねえってこったろ」
「アホか。そんだけのことなら受け付けで並んでるやつら使えばなんとでもなるっつの。もしくはいつも通り俺か、俺経由で爺さんに言うだろ」
魔術にばっか頭使ってるから考えないのか?
まぁ今も全然出来てないから悩むよな。ごめん。
「んじゃなんだ。首謀者がいて、そいつを潰せってか」
「ばーかーかー。潰してどうすんだよ」
「は?他に何がある」
「捕まえろって事だろ。まぁ爺さんの言う通りなら必要無いけど」
魔物生け捕りとかマジ無駄だもんね。研究したいとかならわかるけど。
「その通り。実は潜んでる場所もわかってる。そこに行って確かめてほしいのさ。魔物か、それとも、別のなにかか」
「…………その言い方なんだよ。気持ち悪りぃ」
濁してんだよ。そこは本当察して。急にバカかよ。
「おい小僧。わかるか?」
「はっきり言えって?爺さん俺をどうしたいんだよ。下手したら消されてましたー、とか笑えないだろ」
「いいから言えよ」
ハイハイ、気配しないでしょってか。魔術か魔法じゃあんたわからんだろ。
「ハイハイ、良くて王国の研究、もしくは魔導師の研究、実験用の魔物が脱走とか?」
「おう。んじゃ悪い方は?」
「よその国の仕業」
「なるほどな。…………それ、なんか意味あるのか?」
あー、それはわからんなー。なるほど。
「正直わからん。オバさんは心当たりは?」
「んー、無いね。………もしかしたらアラドさんが言ってた事のが当たりかもね」
ちょっとそんな気してきた。むしろそうであって。
「確かに、よその奴らは人族を嫌ってる。もしかしたら奴隷を解放したくて画策してるかもしれんし、戦争の口実作りかもしれん」
めっちゃ考えてた!本当ごめんなさい。
「あとは貸しを作りたがってるとかな」
「は?なんそれ?どうしたらそうなんの?」
「今は騎士団や俺なんかで対応出来ても数が増えりゃ手が回らなくなるだろ。その時に手を貸してやる、ってな」
この人実は敵国のスパイじゃないの?
図体でかいけど気配は消せるし、証拠残さない殺し方出来るし。そもそもメタンコ強い。
お巡りさん。この人です。
「んで、場所ってのは?まさか山ん中の洞窟の奥とか言わねぇよな」
「………いや、そうだけど」
「んじゃ魔物だ。多分な」
「ちょい待ち。魔法でカモフラージュとかは?」
「かも?なんだいそれ」
「んあ?あー、隠蔽」
もー、リズム崩れるー。
「……………いや、それはわからないね。うちの手練れには行かせたんだけど、魔導はねぇ…………」
その人闘士ですね。はいオッケーでーす。
「んじゃお前も行くことは決定だな」
「ダメだろ。俺は諦めるけど専門の人じゃないと怖いだろ。マーリンさん連れてこうよ」
「お前アホか。あいつあれでも重要人物だぞ。んな簡単に連れてけるか」
いやよく俺たちに会いに来てんじゃん。大丈夫でしょ。
「一応聞こうよ。最悪を想定して行動しないと」
「楽したいだけだろ」
バレた!ですよねー。
「それなら私からお願いしようか?」
「いやいい。直接聞いてくる」
「あ?爺さん場所知ってんのかよ」
「騎士団養成学校」
「俺1抜けた!!」
「却下」
「嫌だ!学校だけは行きたくない!行ってきて!」
「諦めろ。行くぞ」
ふざけんな!1人でお使いくらいしろや!
……………おしっこちびりそう。
「おい、マーリンに用がある。いるよな?」
「は、はい……。あの、ご用件、は?」
「関係無い。入るぞ」
「あ、あの………それは、その、困ります…………」
爺さんサイテー。もっと優しくしなさいよ!もう!…………キモいねごめん。
爺さんはダメダメだったので代わりに受け付けを済ませる。許可もすぐもらいインザ校内。
とりあえず爺さんにくっ付いて歩く。場所知ってんのかな。
今は昼時なのでチラチラ人にすれ違うが、まぁ見られる。
絶対目を合わせないようにしてるやつや、爺さんを羨望の眼差しで見るやつがいる。
前者が魔導師で後者が闘士だな。間違いない!かな?
……………結構歩いてるけどまだ会わないね。なんで?
「おい小僧、マーリンの場所わかるか?」
「遅いよ!先に聞いてよ!知らねぇのかよ!」
「当たり前だ。初めて入ったんだぞ」
このクソジジイぃ。お前のせいで俺もずっと変な目で見られてたんだぞぉ。これから先絡まれたら恨むからなぁ。
「俺も知らないから誰かに聞いてよ」
「お前が聞け」
「嫌だよ!子供かあんたは!」
このコミュ症め!また俺にいじめられろってか!
結果、俺が聞きますよねー。クソが!
「あのー?ちょっといいですか?」
見た目好青年にコンタクト。闘士っぽいからいけるかなー。
「なんだ?俺は忙しいんだ」
魔導師か。残念。
「おい」
「は、はい!なんですか闘王様!」
こいつぅぅぅ。いじけてやる!
「お前闘士か?」
「は、はい!闘王様に憧れてます!握手して下さい!」
「嫌だ、それよりマーリンの場所知ってっか?」
闘士かよ!態度!爺さん酷い!自分で聞いてんじゃん!…………はぁ。
兄ちゃんに聞くと5階の1番でかい研究室らしい。
広いよこの学校。エレベーター付けといてよ。
「小僧、ちゃんと聞きやがれ。メンドくせぇ」
…………おい。
着きました。3回ノックしてステイ。いるかね。
「はーい。入ってー」
イェーイ。居てくれて良かった。
「失礼しまーす」
「あれ?クー君?それにアラドも。どうしたの?」
「マーリンさんにお願いが有りまして」
「俺らについて来い」
爺さんバカかよ。怒られっぞ。
「え?どこに?ヒマな時なら全然いいけど」
「マーリンさん怒らないんだね。尊敬するわ」
「この人は昔からずっとこうだからね。今更今更」
「無駄口言ってんな小僧、とっとと話せ」
「断る!」
「断る」
俺はおこですからね?優しくして下さい。
マーリンさんに事情を説明。
「それじゃシエルも連れてきましょ」
「却下!」
言うと思ったー。この人平気で無茶振りするもんな。
「なんで?いいじゃない。減るもんじゃないし。むしろ増えるかもよ?」
「何かは聞かないし言わないでね。理由も言いたく無いけど言うね。危ないから」
「クー君が守ってあげれば大丈夫じゃない。そしたら増えるでしょ?あれだね、前にクー君が言ってた、ウィンウィン?でしょ」
なんか色々違くね?俺が明らかにウィンして無いよね?
「俺も却下だ。邪魔だろ」
「えー?別にいいでしょ?クー君がなんとかしてくれるんだから」
え?聞いてた?俺やだよ?
「魔物でもなんでもどっちにしろ危ないから。俺、自分で手一杯だからね?」
「嘘だー。だってクー君、本当はもっともっと強いでしょ?」
「……………ちょい爺さん」
「バカか。言わなくてもこいつはわかるぞ」
「ふっふーん。これでも最高の魔導師と呼ばれているのよ?それくらいわかるってばー」
「んじゃどれくらいかわかる?」
これは聞きたい。それでこの人の無茶振りがどの程度かわかる。と思う。
「そうだねー、レッドベアーなら簡単に倒せるくらいかな?」
「くっ、さすがマーリンさん。そこまでわかってたとは」
「違う。こいつはオーガの群れも余裕だ。子供ならドラゴンも倒した」
おいジジイ!!ふざけんな!!
「………………ウソ、だよね?」
「嘘です」
「本当だ。オーガもドラゴンも無傷だ。多分魔物なら殆ど相手にならんな」
こらジジイ!流石にそれはやめろ!
「クライスト、私の目を見て本当のこと言って」
「全部本当ですはい」
もー!!!なんだよ!!厄日かよ!!!
「………それいつからなの?」
「ドラゴンは結構前、1年くらい?オーガはちょっと前」
「20日くらいだな」
「群れはどの位?」
「どの位?爺さん」
「それくらい知っとけ。成体のオス20、メス15、上位5、オーガキングの群れだった」
性別以外はキングとそれ以外しかわからん。何で見分けんだよ。
「……………ドラゴンは?」
「子供だが、おそらく上位だ」
「嘘!本当なの!?」
「その反応やめて!俺のほうが嘘だと思いたいから!」
俺これでも繊細だからね?オブラートに包まれてるくらい。
「本当だ」
「………なんでクー君はそれらと戦ったの?まず王国の近くにドラゴンなんて居なかったと思うけど」
「一時期遠出した時あったろ。あん時だ」
「………確かにあったね。でもそれあなたの依頼でしょ?」
「あぁ、こいつに全部やらせた」
「はぁ!?あんたバカじゃないの!?」
そうだ!もっと言ってやれ!お願い!
「うるせぇ、出来るからやらせただけだ」
「はぁー?あんたねぇ、本当、もう、はぁ」
「ちょっとマーリンさん、もっと言ってよ。がんばって」
「無理よ。絶対聞かないもの」
お手上げだー。うひょー。おわたー。
「クー君、どの位すごいかわかる?」
「どん位かはわかんない。ヤバイのはわかるけど」
「一応説明すると、オーガの群れは騎士団総動員くらいの規模だよ。ドラゴンは国が滅ぼされるかもくらい」
「ジジイ!!俺を殺したいんだな!!もう殺せよ!!」
「アホか」
その一言ですますなよ!!これ本気だぞ!!
「はぁ、師弟揃ってズレてるわね。私がしっかりしなきゃ」
マーリンさんが輝いて見えるよぅ。お願い!このジジイをまともな人間にして!……無理か。
「ねぇ、クー君。どうやって倒したの?」
「えー、言わなきゃだめ?結構思い出したく無いんだけど」
実際トラウマ寸前。ドラゴンはジジイクラスのバケモンだし。
「お願い」
「あー、了解。オーガはキング倒したら統率無くなったから一体ずつ順番にしただけ」
「…………あの、キングが1番強いってわかってるよね?」
「もちろん。実は先にやったら降参するかなとか思ってやったんだけど、まぁ失敗」
半狂乱で襲いかかって来たから楽出来たけど。
「あぁ、そう。はぁ、ドラゴンは?」
「聞くのはいいけどため息やめてね?ドラゴンは魔闘気と闘王気を同時に使って、魔術で牽制、魔闘気で防御、闘王気で攻撃ってして、全身ボロボロにしたら噛みつかれて、最後に頭に闘神気をぶち込んで勝った」
「…………よく生きてたね」
本当それ。
実際ずっと際どかった。
魔闘気で殴るとダメージないし、魔術使ってくるし、炎吐いてくるし、攻撃読んで反撃してくるし、そもそも頭が良い。かなりやりづらかった。
噛みつかれた時も魔闘気減っててかなり危なかった。今でもたまに夢に出てくるよ。あかん。
「クー君、思ってたより苦労してるんだね」
「そうですよ。だからみんなもっと俺に優しくした方が良いと思います。いや、して」
「断る」
ざけんなジジイ!お前メインに言ってんだぞ!
「ちなみに、レッドベアーの時とかなんで手加減してたの?」
「シエルに気を配ってたからでしょ。マーリンさんの思ってるよりかなり危ないからね?あの子」
気配もわからん、危機感もない、そもそも集中力ない、あとすぐ疲れる、慌てる、常に落ち着かない。この子と一緒はすごく神経使うんですよ。
「そう、あの子まだ全然なのね」
「はっきり言ってそう。これ言うと泣くかもしれないけど、研究室篭ってる方がシエルには合ってるよ」
「お前ひどいな」
「あんたが言うな!」
自分のこと棚に上げんなし。
「まぁいいわ。話ものすごくズレたけど、とりあえず了解。シエルは出来れば連れてきたいんだけどいい?」
「ダメって言っても連れてくるし付いてくるでしょ」
「これからはクー君に合わせるから」
「いやいいよ。なんとかする」
また泣いちゃうじゃん。しかも俺のせい。
「小僧、いいんだな?もし、魔物じゃなく、この国のやつらでもなく、他国の敵ならもしかするとお前死ぬかもしれないぞ」
「その時は爺さん盾にするから」
「真面目な話だ」
「俺マジだよ?」
本気に決まってんじゃん。何言ってんの?
「魔族も獣人族も魔物と違うぞ。オーガやドラゴンより弱いが戦い方は未知数だ。どうなるかわからんぞ」
「その時は2人がなんとかしてよ。俺シエル担当だから」
「そうね。それならいいでしょ。嫌なら私がなんとかするから」
「わかった。んじゃ明日の朝出る」
「了解。シエルとそっちに行くから待っててね」
「はーい。それじゃまた明日」
これで今回の件は大丈夫かな。
………失うものがあった気がするけど。というか面倒が増えそう。
帰宅。アンド準備。
「小僧、明日は本気でやれよ」
「わかってる。てかいつも本気だよ。死にかけてんのは俺が手抜きしてるからじゃないからな?ジジイ含め周りのせいだからな?」
「嘘つけ」
チクショー。絶対認めないな。諦めよ。
今日も修行はお休み。明日に備えなきゃね。
…………サボりちゃうで!




