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喜連川妄想譚 五千石の小藩から始める一橋討伐 ~俺を殺した男の先祖を経済で追い詰めます~  作者: さくらゐ


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七話

通常木でできた駒はパチリと良い音がするが金と銀で出来た駒は独特の鈍い音がする

それがより一層緊張を高めていく

しばらく無言で指す

「ここまで二十七手にて詰みとなります」

男が唸った、口惜しさと感嘆の声が混ざった唸りだった

「参った。改めてご挨拶させて頂く」

そういって居住まいを正して

「徳川家家臣、御側御用取次を勤めておる田沼意次にござる、数々の無礼の段、ご容赦願いたい」

そう言って頭を下げる

「こちらこそ突然の訪問にお応え下さり有難うございます」

と我ら一行も頭を下げる

「ところで伊予大洲藩のご実子が何用で我が屋敷へお越しか?まさか本当に将棋だけ指しに来たわけではあるまい?」

意次は金銀の駒を手に取って出来のすばらしさを眺めながら聞いた。

「このまま喜連川藩に着けば加藤ではなく喜連川となります、その前に田沼様にご挨拶とお願いがございまして参りました」

「して願いとは?」

「一局指しながらではいかがですか?」

「面白い、儂の腕前を知っての挑戦、まずは褒めよう、しかし手は抜かぬ。将棋は戦そのもの、命がけで来い」

「胸をお借り致します」

意次は純金の王将、廉之助は純銀の玉将

まずは駒を並べるとお互い礼をして指し始めた


「しかしこの駒はおもいのぉ、なぜこのような駒をお作りになった」

「将棋は戦、人の命を木で示すにはちと軽すぎます。それにこの先金銀で世が動くと思っております故、金銀で作ってみました」

この言葉に意次は反応した

「ほほぅ、金銀の世とな?」

「はい、今は米が国の基本。確かに無くては飢えて死にまする。その米は民たちが命を削り、育て上げ年貢として納めます、それを武士は受け取り食って生きております。されど味噌を買うにも塩を買うにも今は銭が必要です。米を銭に換えねばならないのです。これは誰しもが同じです。田舎ならつゆ知らず、江戸市中では米を売って銭にしているのは武士だけにございます、武士は米を銭に換えて日々暮らしております、ならば最初から金子で渡せばよいのです。さすれば余分な手間も米価の上下も気にならなくなる。ではその金子はどのように納めさせるか?それは・・・」

そう言いかけた時、屋敷の門の方が騒がしくなった

意知が部屋に入ってきた

「父上、門前に大勢の蝋燭商人どもが押しかけて参りました、何でも伊予大洲藩の若君はここか?蝋燭を売ってくれ、としきりに申しております。いかがなさいますか?」

これに意次は驚いた、他家に将棋を指しに来た若君を追いかけてくる大勢の商人など聞いたことが無い

「田沼様、今の話の続きですが、今から目の前でお答えしたく。商人達を屋敷の一室に入れて話をしてもよろしいでしょうか?」

意次は考えた。このまま商人たちを追い返して将棋の続きをしても礼は欠いていない、しかし目の前にいる少年は自分の目指す政治の根幹を理解している、それどころか、その理想に足りない何かを知っているかの如く話す

「面白い、しかと見せてもらおう。意知、すべての商人を広間に通せ。わしも加藤殿と臨席する」

「承知しました」

そう言って障子を閉めようとした意知に

「意知、そなたも臨席せよ。面白きものがみられるやもしれん」

「まさか」といいながら、少し鼻を鳴らして意知は商人たちを広間に通すために廊下に消えていった


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