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喜連川妄想譚 五千石の小藩から始める一橋討伐 ~俺を殺した男の先祖を経済で追い詰めます~  作者: さくらゐ


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四話

大坂での用事は駒を受け取るだけ、伊予大洲藩では通常蝋燭や米は大坂で売っているが今回蝋燭は大坂では売らない

もし通常の旅程であれば陸路で江戸へと向かう、しかし今回は蝋燭がある。その蝋燭と共に当時では珍しく海路で江戸まで向かうことにしていた

父に頼んで江戸へ藩の特産品である『蝋燭』を運ぶという名目で幕府に許可を取ってもらっていた。養子入りという特別な事も加味されてすんなり許可されたらしい


「さて、では江戸を目指すか」

この言葉に船頭は指示をだして帆を上げさせた

旅程は大坂からまずは鳥羽を目指す、そこで補給と休息を取り下田、浦賀、でそれぞれ荷の改めを受ける、最後に品川沖で小舟に荷を積み替えて大洲藩の下屋敷へ向かう

通常なら十日から十二日の旅程だ

大坂の港を出てからすぐに船頭と船衆が騒ぎだした。今までの航海で一番いい風が吹いているらしい

「若様!矢速丸は元々速く進むようにできておりやす、それでもこの風の良さは異常ですぜ、このままでは江戸まで半分くらいの日にちで着いてしまいそうでさぁ、金毘羅様が若様をお認めになったんでしょうな!」

この船頭の話に皆が大笑いをしながら船べりを叩いて称えた

「そうか、うれしいことを言う。ではこの船の名を今日から『廉之助丸』と改めよ、さすればこれからも金毘羅様がこの船とそなたたちを守ってくれるはずだ」

その声に船頭はじめ船衆達はさらに沸いた

この先矢速丸改め「廉之助丸」は順風を受け続けて各港へ驚異の速さで進んでいく


後日談だが『廉之助丸』と名を変えた伊予大洲藩の船は出航すればいつも順風、嵐知らずという噂が駆け巡り瀬戸内の各藩や商人達が出航を合わせる船が続出した。

「伊予大洲出航予定暦」なるものが大坂で出版されベストセラーになり、伊予大洲藩の収入の足しになったらしい。

更に余談だが、正史ではこの先幕末になると伊予大洲藩は坂本龍馬の勧めでイギリスから蒸気船を買う、それがあの有名な『いろは丸』である。いろは丸は沈んでしまうが坂本龍馬に多大な金を運んだと思えば伊予大洲藩と海は相性が良かったのかもしれない


「若君と出かけるときはいつも快適ですな」

気楽に茶をすすりながら語りかけたのは「長谷川規之(のりゆき)」彼には建築土木を叩き込んである

「規之、そなたは江戸に着いたら日本橋から喜連川まで奥州道中を進む際、街道の道幅や補修具合、各宿場の規模や本陣の様式などすべて記録する役を申し付ける」

「御意にございます」そう言って茶と共に団子をほおばっている

「規之、若君の御前であるぞ!」

「よいよい、規之らしくて良いではないか、江戸に着いたら忙しくなる、今のうちに英気を養っておけ」

「若君は分かってらっしゃる」

そう言って笑いながら更に団子をほおばる規之としかめっ面の珠一郎達を押しのけて残りの三人が割って入った

「我々にも何かお申しつけはございませぬか?」

ひと際大柄の男が言った

「忠矩は私を守れ、江戸での危険は人の多さだけではない、怪しきものが付けて回れば逐一報告せよ

『榊山忠矩(ただのり)』とっさの勘に優れ、剣術や兵学に才を持っている、廉之助のボディーガード役でもある

「万事お任せあれ!」

次に横にいる、見るからに優し気な顔の男に声をかける

「準人、そなたは江戸から喜連川までの天領や各藩の生活度合いを細かく記して進め」

『津田準人(はやと)』には民政や法令などの知識をつけさせてある

「御意にございます」

最後に控えている男に声をかける、年は俺の二つ上の十二歳、俺の家臣の中では最年少だ

「毛利度三郎、そなたは江戸の物価とその道中での物価の変化を細かく記してまとめ上げよ」

『毛利度三郎(たくさぶろう)』彼には流通や商売に関してのノウハウを叩き込んである、計算能力は珠一郎に引けを取らない。負けず嫌いで努力派の秀才である

「承知いたしましてございます」

「して、若君は何をなさるおつもりで?」

珠一郎が俺に聞いてきた

「その将棋の駒を持って挨拶に向かう先がある」

その先は誰も聞かなかった、それを詮索する事は家臣として信頼している証でもある


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