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空を燃やし、地面を焼き払う

空は乱戦になった。


しかし――


すぐに形勢は変わった。


俺たちの竜騎士が、奴らの陣形を引き裂き始めた。


一頭の赤竜が鷲獅子の群れへ突っ込み、爪と牙で同時に三頭を引き裂いた。


一頭の青銅竜が巨鷹隊に狙いを定める。


次の瞬間。


竜の炎が、天を転がる雷弾のように炸裂した。


ヴァルデマー家の竜騎士が、側面から回り込もうとした。


だが――


奴らの竜は、まだ俺たちを覚えている。


近づくことをためらう竜もいた。


その一瞬の躊躇を――


俺たちの竜騎士は見逃さなかった。


空が燃えていた。


比喩ではない。


本当に、燃えていた。


だが、空を片付け終わるかどうかというとき。


地上が、動き始めた。


――弩砲だ。


空に向けてではない。


低空を飛ぶ俺たち竜騎士が標的だった。


最初の一斉射で、すでに数騎が反応できなかった。


矢は太く、長い。


穂先には祝福文がびっしりと刻まれている。


空気を切り裂く音。


一頭の灰色竜が、三本の矢を同時に受けた。


左翼を裂かれ、騎士ごと墜ちていく。


続いて――二射目。


もっと多い。


もっと密だ。


地上の兵が弩砲を装填し直す。


聖光牧師が一本一本に祝福を授ける。


矢は白く光り、城下から天へ向けて放たれた。


まるで――


大地が裏返り、空へ向けて矢を放っているかのようだった。


竜騎士が、次々と撃ち落とされていく。


「陛下!」


誰かが叫んだ。


「散開しろ! 低く飛ぶな!」


俺は怒鳴った。


だが――


地上の弩砲は多すぎた。


高空には撃ってこない。


地上を攻撃しようと降下する竜だけを狙っている。


降りなければ、攻城塔も破城槌も城壁に迫る。


だが、降りれば弩砲の餌食になる。


これは攻城戦だ。


俺たちは城を守っている。


空にばかりはいられない。


「ニーズヘッグ」


俺は、あいつの背を叩いた。


「わかっている」


あいつは答えた。


ニーズヘッグが降下を始めた。


最短時間で――


あの弩砲と攻城兵器を、全部焼き払う。


赤い竜雷が、体の内側から湧き出してくる。


俺はニーズヘッグの背に立ち、両手を広げた。


雲の上から雷が落ちた。


弩砲陣地へ突き刺さる。


三基が爆ぜた。


砲手も矢も、一緒に空へ飛んだ。


ニーズヘッグが竜の炎を吐く。


隣の二基も、人ごと黒炭へと変わった。


城壁に沿って、一周飛んだ。


通り過ぎた後の弩砲陣地は、鋤で掘り返された畑のように、黒煙を上げていた。


竜騎士たちも続く。


装填中の弩砲を、次々と破壊していく。


「左翼の攻城塔だ」


ニーズヘッグが言った。


振り向く。


三基の攻城塔が、城壁に貼りつくように迫っていた。


ニーズヘッグが炎を吐く。


塔は中央から燃え上がった。


木組みが爆ぜ、塔全体が火のついた巨大な蝋燭のようになった。


上の兵は飛び降りた。


下の兵は外へ逃げ出した。


二基目。


三基目。


半周回って――


全部焼いた。


次は、破城槌だ。


十二台の重装破城槌。


鉄の頭。


木の胴体。


竜騎士を分けて、対処させた。


炎が天から降り注ぐ。


槌の両側から火が巻き込む。


押していた兵は、風に散った干し草のように消えた。


破城槌は、一台。


また一台と――


黒い骨組みへ変わっていった。


城壁は、なんとか持ちこたえた。


だが――


俺は止まらなかった。


城下の後方。


そこでは、法師協会の魔法部隊が陣を組んでいた。


大量の法師が攻城部隊に魔法をかけ、城壁に向けた大規模魔法の準備も進めている。


魔力の波動が、空気を震わせていた。


「魔法陣を焼く」


俺は言った。


ニーズヘッグが応える。


地面へ向けて、急降下した。


竜の炎が先に届いた。


魔法陣の前には盾兵がいる。


だが――


ニーズヘッグを止められない。


炎が盾壁を呑み込む。


熱湯が泥壁を溶かすように、盾と鎧が赤く崩れていく。


法師たちが走り出した。


魔法を唱えようとする者。


杖を掲げる者。


だが――間に合わない。


ニーズヘッグが頭上を通過した。


竜の炎が、天から剥がれ落ちた赤い布のように、魔法陣全体を覆い尽くした。


このまま焼き尽くせる。


そう思った――


そのときだった。


「九階法術・重力深淵」


「九階法術・龍封咒鎖」


「九階法術・奥術天牢」


「九階法術・元素逆流」


「九階法術・禁空法陣」


五つの九階法術が、同時に地面から昇った。


――帝国は、本当に血を吐く覚悟で来ている。


走っている法師たちではない。


オズヴァル・グリム。


六百人の法師協会主力。


奴らは最初から、ここで待っていた。


俺が地面に近づくのを。


ニーズヘッグが炎を吐くとき――


奴らが望む角度が露わになる、その瞬間を。


今。


奴らは、俺たちを掴んだ。


五つの法術が、地の底から伸びた五本の巨手のように、同時にニーズヘッグへとのしかかった。


巨体が沈む。


押されたんじゃない。


大地が、吸い込んでいる。


四本の爪が地面に食い込んだ。


地面が水のように波打ち、砕けていく。


鎖が虚空から現れた。


四肢と翼に絡みつく。


光の壁が六方から迫った。


俺たちを押し潰そうとしている。


風と火が、喉の中で逆流した。


空そのものが枷になり――


竜を丸ごと押し下げていく。


「行け!」


あいつが叫んだ。


「あと少しだ」


俺は低く言った。


そのとき。


メルキオ二世も動いた。


白い祭壇の上で、両手を広げる。


千人の戦闘牧師が、一斉に詠唱を始めた。


「九階神術・天墜聖火」


「十階神術・ヘルヴェインの手」


光でできた巨大な掌が、雲から伸びてきた。


大きすぎる。


空の半分を覆うほどだ。


それが、ニーズヘッグへ押し付けられた。


まるで――


神が自らの手で、竜を押さえつけているようだった。


聖火が、同時に落ちてくる。


鱗が焼け穿たれた。


黒い血が、石の隙間から滲み出る油のように溢れ出した。


オズヴァルが、最後に手を上げた。


「十階法術・天穹聖棺」


十二本の聖光柱が、天から落ちてきた。


ニーズヘッグを中央に囲む。


交差する。


回転する。


そして――収縮する。


まるで、光でできた棺を、ゆっくりと閉じていくようだった。

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