灰燼に帰す
「我が血に眠る赤き鱗――」
その声がレオンの喉から出たとき、あたりには手を止める者もいた。
人の言葉ではなかった。
地の底から滲み出る、古い言語のようだった。
黒茨領の土の下で、五百年前の言葉を誰かが話しているようだった。
兵士がひとり、這うようにダミアンのところへ来た。
「若様、レオン様が……」
ダミアンは振り返った。
レオンは地面に倒れ、すでにひどく殴られていた。
それでも、唇は止まらなかった。
古い音節が水のように口から流れ出し、聞く者の骨を冷たくさせた。
彼は竜穴を見ていた。
暗い。
空気は鱗と血の匂いで満ちている。
赤疤は隅で丸まり、目を半分開けていた。
彼を見ているようでもあり、死を待っているようでもあった。
一歩近づくと、赤疤は低く唸った。
「お前も出られないのか」
レオンは言った。
赤疤は彼の前腕に噛みついた。
歯が肉に刺さり、血が竜の顎を伝って落ちた。
レオンは逃げなかった。
叫びもしなかった。
赤疤の目を見て、一字ずつ言った。
「噛めよ。俺は帰らないから」
赤疤は口を離した。
鼻先を近づけ、血の出ている前腕にそっと触れた。
レオンが初めて、自分はひとりじゃないと思った瞬間だった。
それから、人を殺したくなると、彼は竜穴へ行った。
怒りを爆発させたくなると、自分の腕を刃で切った。
「狂人」「怪物」という囁きが聞こえるたび、自分に言った。
我慢しろ。
まだ、あいつらの言うとおりになるな。
でも、我慢すればするほど、中のものは大きくなった。
火を呑み込んだように、彼は毎晩眠れなかった。
腕は切り傷だらけになった。
新しい傷が古い傷に重なり、誰にも読めない地図のようだった。
それから、エレナが見えた。
「兄さん、最近また眠れてないの?」
「お前には関係ない」
彼は言った。
「いつもそう」
彼女は立っていた。
小さいころと変わらない。
近づきたいのに、近づけないような顔だった。
「近づくな」
レオンは言った。
彼は背を向けて歩き出した。
あのまま立っていたら、突然泣き出してしまいそうだった。
見せたくなかった。
---
「来い、赤疤」
レオンは地面に倒れたまま、ひどくゆっくりとその句を唱えた。
叫びではない。
懇願だ。
呼ぶ声だ。
地の底から最後の一音まで搾り出そうとする声だ。
「来い」
エレナが遠くに立っているのが見えた。
怯えた目で彼を見ていた。
彼が怖いんじゃない。
祖父の予言のとおりになってしまった彼を、あの子は怖がっている。
そして、彼はもう、そうなっていた。
「空を裂いて――」
彼の指が泥のなかでゆっくりと閉じた。
何かを掴もうとするように。
「俺の名を呼べ」
彼は唱え終えた。
最後の音節が落ちたとき、自分の中にずっと張りつめていた一本の線が、ついに切れた。
引っ張られて切れたんじゃない。
自分で切った。
彼はもう、我慢しなかった。
---
空が暗くなった。
レオンの体の下の泥から、巨大な法陣が轟音とともに浮かび上がった。
黒赤い光は、地の底から溢れる溶岩のようで、彼を囲んでいた者たちを一斉に弾き飛ばした。
空気が一瞬、吸い尽くされた。
全員が顔を上げる。
法陣の中央から、まず暗赤色の巨大な竜の爪が伸びてきた。
次に頭。
首。
翼。
赤疤が、地獄の火のなかから降臨した。
着地の衝撃で、灰葉村全体が揺れた。
まだ正気だった戦馬が三頭、その場で崩れ落ちた。
いちばん近くにいた村人たちは衝撃波で吹き飛ばされ、低い石垣に叩きつけられた。
混乱は、一瞬の静寂に変わった。
レオンは泥のなかから、ゆっくりと起き上がった。
彼は周りの人間を見なかった。
長い夢から醒めたばかりのようでもあり、まだ夢のなかにいるようでもあった。
黒い髪が顔の半分を覆い、血と泥が混じって額から顎まで流れていた。
彼は赤疤に歩み寄り、首に手を置いた。
竜は頭を下げ、鼻先を彼に寄せた。
動きはとても軽かった。
彼がまだ応えるかどうか、確かめるみたいに。
レオンは竜の背に跨がった。
彼は人を見なかった。
見ていたのは、火だった。
「焼け」
彼は言った。
竜の炎が落ちた瞬間、まだ皆、逃げていた。
赤疤の口から放たれた最初の一筋は、どの家にも向かわなかった。
地面に落ちると、砕けた赤い川のように、人のいちばん密集した方へ流れた。
老人。
子ども。
赤子を抱えた女。
先に倒れた者から、もう起き上がれない。
火は生きていた。
衣服を這い上がり、髪から背中へ燃え移り、母親の腕から赤子の体へと走った。
悲鳴が村の入り口で裂け、次の悲鳴に呑み込まれた。
井戸に飛び込む者。
泥に転がる者。
火のついた服を地面にこすりつける者。
だが、こすりつければこすりつけるほど、火は勢いを増した。
男が燃える息子を抱えて村の外へ走り、十数歩で二人とも倒れて、動かなくなった。
老女が粉挽き場のそばに跪き、ひっくり返った麦を一掴み握ったまま、何かを呟いていた。
火が迫っても、彼女は逃げなかった。
赤疤が口を開けるのを見て、言った。
「罰当たりめ」
それが、ダミアンが逃げる前に最後に見た光景だった。
彼は馬上で振り返り、灰葉村がもう村ではないことを見た。
誰かがひっくり返した炭の鍋のようだった。
火の粉が散り、泣き声と木の燃える音が混ざり合い、地獄から溢れた音のようだった。
彼はそれ以上見られず、必死に馬を打ち、砦へと逃げた。




