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ローワン家

土屋の扉は半開きだった。


レオンが中にいて、入り口に背を向けている。


彼の前には若い士官が一人、真っ青な顔で立っていた。


その手には、まだ餅を握ったままだった。


「お前の部下が小道で倒れていた。二人だ。一人はまだ生きている。お前、一体何を見張っていたんだ?」


レオンの声は異様に平らだった。


まるで、どうでもいいことを聞いているようだった。


「わ、我々は二手に分かれて巡回していました。小道も往復したんです。誰も見かけませんでした」


「見かけなかった」


レオンは、その言葉を繰り返した。


次の瞬間、彼は不意に手を上げた。


扉のそばにあった木の腰掛けを掴む。


そして――


壁に叩きつけた。


腰掛けは真っ二つに割れた。


兵士たちが、一斉に身をすくめる。


「お前らが見かけなかったものは、いま地下牢で寝ている」


レオンは言った。


「半面を、電気で焼かれてな」


士官の顔から、さらに血の気が引いた。


「明日、俺を灰葉村へ連れて行け」


レオンは続けた。


「見つからなければ、お前らの中から一人残して、倒れていた二人の代わりにそこに寝かせる」


そう言って振り返る。


そのとき、ダミアンがちょうど入り口に立っていた。


レオンと目が合う。


「何か用か?」


レオンが聞いた。


ダミアンは慌てて道を開けた。


「今晩、灰葉村へ徴税に行きました。あの村の連中は、税も出せず、泣き言ばかりです。家も一通り見させましたが、見知らぬ者はおりませんでした」


そこで、ダミアンは少し間を置いた。


「ただ……ああいう場所ほど、人は隠せるものです」


レオンは彼を見て、先を促した。


「それに……」


ダミアンは声を潜めた。


「先ほど聞きましたが、倒れていた二人の衛兵は、灰葉村の西側を巡回していた者だそうです」


「……」


「あの場所で倒れた。灰葉村の仕業でなくて、誰の仕業だというんです?」


レオンは何も言わず、厚外套を羽織り直した。


「明日、もう一度捜す」


彼はそう言った。


「あなたも来てくださいますか?」


「行く」


レオンは短く答えた。


ダミアンはうなずき、半歩下がった。


「すぐ父に話してきます。正体の知れない者が衛兵を襲った。増援が必要だと」


ダミアンは口元をわずかに上げた。


「その名目なら、反対はできません」


レオンはもう遠くへ歩いていた。


ダミアンは廊下に立ち、自分の心臓がまだ早いのを感じていた。


彼は酒瓶を持ち直し、父の書斎へ向かった。


---


ガレス・ローワンは、まだ起きていた。


書斎には蝋燭が一本灯っているだけだった。


彼は古い革の椅子に座り、目の前に領地の税台帳を広げていた。


そこへ、酒の匂いをまとったダミアンが入ってくる。


「父上」


ダミアンは机の前に立った。


「明日、もう一度灰葉村へ行きます」


ガレスは顔を上げ、眼鏡を外して眉間を揉んだ。


「昼にも行っただろう」


「昼はただの徴税です」


ダミアンは答えた。


「今夜、レオン様が灰葉村の西で、襲われた二人の衛兵を見つけました。まだ目を覚ましません。傷が妙です」


一度、息を吸う。


「灰葉村の連中が明日逃げ出すかもしれません。今行かなければ、遅れます」


「何人連れて行く?」


「三十人。騎兵も出します。レオン様も来ます」


ガレスはしばらく黙った。


蝋燭の炎が、風で揺れた。


「三十人で、村を一つ捜すのか?」


彼は言った。


「人を捜すのか、戦をするのか」


「父上、素性の知れない者が衛兵を襲ったんです」


ダミアンは言った。


「今日は巡回の二人をやった。明日は砦に突っ込んできます」


そして、さらに言葉を重ねる。


「いつもこの土地を乱すなと仰る。今が一番、調べるべき時ではありませんか」


ガレスは息子を見た。


この子は昔から落ち着きがない。


だが、今言っていることも、あながち間違いではない。


衛兵が魔法でやられた。


何か説明をつけなければ、砦の兵士たちの心は緩む。


「死人を出すな」


ガレスは最後に言った。


「向こうが抵抗しなければ」


ダミアンは答えた。


「約束します」


彼は書斎を出た。


扉が閉まる。


ガレスはしばらく、その扉を見つめていた。


それから眼鏡をかけ直す。


だが、目の前の数字の列が、どうしても頭に入ってこなかった。


---


エレナが砦へ戻った頃、夜はもっと深くなっていた。


彼女は正門からは入らなかった。


正門は兵が多く、外套姿で帰る彼女を見れば、何かと聞かれる。


彼女は東の通用門へ回った。


そこには老兵が二人、門の隅でうたた寝をしている。


エレナは軽く三回。


間を置いて、二回。


扉を叩いた。


扉が少し開いた。


老兵は彼女を見ると、慌てて頭を下げた。


「エレナ様」


「声を出さないで」


彼女は体を横にして、中へ入った。


廊下は狭く、湿っていた。


壁の松明は低く燃え、光は床に張りついている。


まるで油が浮いたように、ゆらゆらと揺れていた。


彼女は足音を忍ばせ、泥水を階段に付けないよう、スカートの裾を手で持ち上げていた。


部屋の近くまで来たときだった。


角の向こうから、話し声が聞こえた。


二人の衛兵だった。


声を潜めている。


「西の小道で倒れてた二人、レオン様が見つけたらしい」


「死んでないのか?」


「生きてる。一人は体中火傷みたいで、雷に打たれたみたいだって。ダミアン様が連れて帰った」


「明日、村を捜すのか?」


「捜す。夜明けと同時に灰葉村からだ。ダミアン様が自分で兵を率いる。レオン様も行く」


「灰葉村? あんな辺鄙な所に何があるんだ?」


「見慣れない顔があるらしい。レオン様は今晩、機嫌が悪い。竜にも誰も触らせないって」


エレナは影に立ったまま、動かなかった。


二人の衛兵が遠ざかるのを待つ。


それから、彼女はゆっくり階段を上がり、自分の部屋へ戻った。


扉に鍵をかける。


外套も脱がなかった。


彼女はベッドの端に座り、自分の手を見た。


その手は、数時間前まで教会でパンを配っていた。


今は石のように冷たかった。


雷。


見慣れない顔。


灰葉村。


あの男が目の前で、


「あなたから……竜の匂いがする」


と言ったとき。


彼女は、すでにおかしいと思っていた。


市で、濡れた黒髪の下から銀色が見えたときも。


妹の反応があまりに早く、言い訳も上手すぎた。


今なら、わかる。


彼女は窓辺へ行き、少しだけ窓を開けた。


夜風が入り込み、灰燼荒原のかすかな焦げた匂いを運んできた。


竜降場には、まだ油灯が二つ灯っていた。


赤疤はもう降りていて、何かに刺激されたように、落ち着きなく尾を振っている。


まだ夜明けではない。


だが、彼女にはわかっていた。


夜が明ければ、灰葉村は包囲される。


彼女は長い間、立っていた。


やがて窓を閉め、階下へ降りた。


細い階段を回り、普段は誰も使わない西側の古い祈祷室へ向かう。


扉を開ける。


そして、中に向かって低く声をかけた。


「灰葉村の北で二人を待って」


「旧粉挽き場へ連れて行って」


「大通りは使わないで」


黒い外套を着た、背の曲がった人影が闇から立ち上がった。


その者は何も聞かず、ただ頷いた。


そして、すぐに階段の奥へ消えていった。

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