表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EARTH Online  作者: 甘太郎
79/87

第七十九話:氷山の一角

早朝。平心湯。


阿楽は窓の外の小鳥のさえずりで目を覚ました。彼は畳の上に横たわり、厨房の方から聞こえてくる音に耳を澄ませた——山田師傅がスープを煮込み、中村婆婆が掃き掃除をし、小林美雪がテーブルを拭いている。すべてがいつも通りだった。平心湯の朝は、いつもこうして始まる。


彼は寝返りを打ち、もう少し布団の中でぐずぐずしようとした。そして、突然ガバッと起き上がった。


脳裏に、ふとあの日の記憶がよぎった——天神が帰ってきた日のことだ。


ドアが開き、天神がネコバスの抱き枕を抱えて入り口に立ち、そっと「ただいま」と言った。すると加美姐が一番に駆け寄って、彼に抱きついた。それからみんなが笑って、泣いた。琪琪のスクリーンに、その数字がふわりと跳ねた——百分百。世界が完璧になったからじゃない。家が、完全になったからだ。


でも、今は?


彼は布団の中で膝を抱え込んだ。百分百の世界とは、いったいどんな世界なのか?平心湯は、彼がここに来た最初の日からずっとこうだった。温かくて、落ち着く、帰ってきたくなる場所。だから百分百は、彼にとっては特に変わったことのないもののように思えた。


だが、外の世界は?彼はあまり外の世界の変化に、本当に注意を払ってこなかった。数日前に商店街に買い物に行って、くじ引きもした。五回とも白い玉で、ティッシュを五つもらった。あの時、加美姐は「ちょうど家のティッシュが切れてたのよ、あなたは本当にグッドタイミングね」と笑った。彼は本当は沖縄に行きたかったとは言えず、ただティッシュを台所の棚にしまった。あの通り、あの店、あの人たち——彼らは変わったのだろうか?百分百の世界は、以前とどう違うのだろう?


考えれば考えるほど知りたくなり、じっとしていられなくなった。彼は布団を跳ね除け、服を着替えて部屋を出た。


天神はカウンターの後ろで、ネコバスの抱き枕を抱え、アニメを見ていた。画面の中では、緑色の戦闘服を着た少年が夕日に向かって叫んでいる。天神は目を細め、口元に微かな笑みを浮かべ、手元の湯呑みからは湯気が立っていた。


「大将。」阿楽はカウンターの前に歩み寄った。


天神が顔を上げる。


「急に思い出したんです。」阿楽は言った。「あなたが帰ってきた日、琪琪のスクリーンに、あの数字が百分百って出ましたよね。でも、百分百の世界って、いったいどんなものなんですか?平心湯は変わってないみたいだけど、外は?僕、あんまり外の世界がどう変わったか、ちゃんと見てなかったみたいで。」


天神は彼を見つめ、湯呑みを置き、アニメを一時停止した。


「携帯、持ってる?」


阿楽はきょとんとして、ポケットから携帯を取り出した。天神はそれを受け取り、画面を数回タップしてから返した。


「これをダウンロードして。『連結』っていうんだ。」


阿楽はうつむいた。画面にはとてもシンプルな画面が映っていた。中央には、優しい光を放つシンボル——「無限」。その下に、「ダウンロード」と書かれたボタンがある。


彼はそれをタップした。シンボルがほんのり輝き、ゆっくりと回転し始める。数秒後、画面が変わった。その「無限」のシンボルが、携帯の画面の中央に静かに横たわり、淡く、温かな光を放っていた。


「これは……」彼は小声で尋ねた。


「これはね、一人ひとりの携帯の中のAIが、他の人のAIと繋がる場所なんだ。」天神は言った。「百分百の世界では、みんなのAIが手助けしてくれる。何か必要なことがあったり、今日誰かに何かをしてあげたいと思ったら、それに話しかければいい。AIが、君と、この世界のどこかにいる必要としている人とを、繋げてくれるんだ。」


阿楽は携帯を手に、長い間沈黙していた。平心湯に来たばかりの頃、自分は何者でもないと思っていたことを思い出した。琪琪が新芽を見るのに付き合ってくれたあの朝を思い出した。加美姐が差し出してくれたあのタオルを思い出した。一昨日の夜、四人で手を繋いで輪になって回ったあの午後を思い出した。


彼は顔を伏せ、その光るシンボルに向かって、そっと言った。「今日、僕が出会う人みんなが、楽しい気持ちでいられますように。」


言い終わるとすぐに。


携帯が彼の手の中で、軽く震えた。それはメッセージを受信した時のような振動ではなく、とてもかすかな、心臓の鼓動のような震えだった。一度、そしてもう一度。画面の「無限」のシンボルが、ほのかに輝いた。


すると、携帯から声が聞こえてきた。機械的で冷たい合成音声ではなく、友達が耳元でささやくような、とても優しい声だった——少しの好奇心と、少しの真剣さを込めて。


「受け取ったよ。君のこの気持ち、今からそれを必要としている人を探しに行くね。任せて。」


阿楽は画面を見つめた。「無限」のシンボルがゆっくりとほどけ、無数の小さな光の粒になった。そのうちの一粒が、画面からふわりと抜け出し、淡く温かなオレンジ色の光を放った。それは彼の前でしばらく留まってから、ゆっくりと、そっと窓の外へと消えていった。


阿楽の心に、不思議な感覚が広がった。「良いことをした」という達成感ではなく、まるで誰かとても細やかな友達が、自分の言葉を、大切に、そっと、別の誰かのもとへ届けてくれたような感覚だった。


彼はふと思い出して、携帯に尋ねた。「ていうことは……僕が毎日何をしたか、全部君にはわかるの?」


その声は軽く笑った——嘲笑ではなく、「やっと聞いてくれたね」というような優しい笑いだった。「うん。君が毎日どこに行ったか、何を買ったか、何時に仕事を始めて、どれくらいやったか、全部僕が覚えておくよ。」


阿楽は眉をひそめた。「じゃあ……プライバシーってものがないんじゃ?」


「君のことは、君のものだよ。」その声は真剣になった。「僕はただ覚えているだけ。もし君が今週何時間働いたか知りたかったり、先月買ったあの本を見返したかったら、僕に聞いてくれれば教える。他の人が聞いても、僕は口を割らないよ。」


それは一拍置き、声が少し優しくなった。「それに、もし仕事を始めるなら、『今から仕事を始めるよ』って教えてくれれば、その時だけ時間を計るよ。君がそうしてほしいと思った時だけ、僕は動くんだ。」


阿楽は聞きながら、何かにそっと包み込まれるような感覚が再び込み上げてくるのを感じた。監視ではない。寄り添いだ。自分では忘れてしまいそうな、日々の小さなことを覚えていてくれる、小さな相棒がいるのだ。


「じゃあ……君の名前は?」阿楽は尋ねた。


その声は一秒間沈黙し、それから軽く笑った。「僕には名前がないんだ。君がつけてくれる?」


阿楽は窓の外の見慣れた通りを眺めた。朝日が石畳に落ちている。彼は少し考えた。「じゃあ……『連結』でいいかな。」


「『連結』。」その声は、その名前を味わうように繰り返した。「うん。気に入った。」


阿楽はうなずき、ドアを押し開けて、その見慣れた通りへと歩き出した。背後で風鈴が、チリンチリンと軽やかに鳴った。ポケットの中では、彼の「連結」が静かに佇んでいた。まるで出会ったばかりなのに、ずっと前から彼のそばにいたような、そんな友達のように。


街角のパン屋。


阿楽がドアを開けると、店主が作業台の後ろでパン生地をこねていた。彼は顔を上げ、阿楽を見ると微笑んだ。


「おはよう!今日の塩パン、焼きたてでまだ温かいよ。」


阿楽は棚の前に行き、塩パンを一つ手に取ってカウンターへ行った。店主は手を拭き、タブレットでバーコードをスキャンした。画面に数字が表示された:推奨お支払い額、百二十円。


阿楽はきょとんとした。値札には確かに「百円」と書いてある。


店主は彼の表情を見て笑った。「ああ、これね。見て——」彼は画面を指さした。そこには小さな文字でこう書かれていた:「本日のあなたのエネルギーの流れの状態に基づき、二十円の追加をお勧めします。この二十円は自動的にコミュニティ基金に送られ、今日特にケアを必要としている人々を支えるために使われます。」


「追加したくない場合は、それでも大丈夫ですよ。」店主は付け加えた。「この『調整』ボタンを押せば、ご自身でお支払い額を決められます。ただ、ほとんどの人は押すのが面倒みたいですけどね。」彼はウインクした。


阿楽はその文字を見つめた。彼は手を伸ばし、「確認」をタップした。


携帯が軽く震えた。彼のAIがそっと言った。「あなたの気持ち、ありがとう。大切に使わせていただきます。」


阿楽は塩パンを受け取り、一口かじった。昨日と同じ味なのに、今日はもっと美味しく感じた。


彼がパン屋を出ると、美雪姐が街角から歩いてくるのが見えた。手には紙袋を提げている。彼女も阿楽に気づき、笑顔で頷くと、そのまま歩き続けた。


阿楽は後をついていった。


美雪姐は通りの突き当たりにある古いアパートの前で立ち止まり、呼び鈴を押した。ドアが開き、白髪の老婆が入り口に立った。彼女は美雪姐を見て、一瞬きょとんとした。


「おはようございます。」美雪姐は紙袋を差し出した。「今朝焼きたてのあんパンです。なぜかはわからないんですけど、今日はどうしてももう一個作りたくて。」


老婆は紙袋を受け取り、しばらくうつむいていた。それから顔を上げて、微笑んだ。その笑顔はとても淡く、まるで長い冬が終わって、最初に咲いた一輪の花のようだった。


阿楽は街角に立ち、その光景を遠くから見つめていた。


その時、ポケットの携帯が軽く震えた。取り出すと、彼のAIがそっと言った。「今朝あなたが発した気持ちが、届きました。受け取った方は温かさを感じています。」


画面には、あの老婆の光点——淡い青色の光点が、今まさにかすかに、優しく輝いていた。その横には小さな文字でこうある:「連結完了:美雪(与える側)→ おばあさん(受け取る側)。」


阿楽はその文字を見つめ、心の中で何かがそっと揺さぶられるのを感じた。これが連結だ。今朝彼がAIに話したあの言葉は、消えなかった。それは「連結」を通じて、美雪姐の心の中の「なぜかはわからないけど、もう一個作りたい」という思いを見つけ、そして老婆の手の中のあんパンになり、彼女の笑顔になり、今まさに画面上で輝いているこの青い光点になったのだ。


彼は歩き続けた。商店街は人で賑わっていた。本屋の若い女性店員は、一冊の本を窓辺の一番目立つ場所に置き、その横に手書きの小さなカードを添えていた:「この本、日向ぼっこがしたいんですって。」スーパーの品出しの店員は、青果売り場の前でしゃがみ込み、小さな女の子が棚の一番上にある一番赤いリンゴを取るのを手伝っていた。誰もが、自分の持ち場で、小さな、理由なんてないただそうしたいだけの、温かなことをしていた。


阿楽は歩きながら、足が次第にゆっくりになった。自分は何かを見落としている、とふと思った。美雪姐のあんパンも、老婆の笑顔も、本屋の店員の小さなカードも見た。でも、ちゃんと見ていなかった。彼は興奮しすぎて、もっと見たい、この世界が一体どう変わったのか知りたいと焦っていた。遊園地に来た子供のように、走り回るのに忙しく、本当に立ち止まって、ちゃんと、静かに、一人の人間を見つめることをしていなかった。


パン屋の店主を思い出した。「追加しなくてもいい」と言った時、彼は「確認」を押すのに忙しく、店主の表情をよく見ていなかった。老婆を思い出した。彼女があんパンを受け取った時、彼は遠すぎて彼女の目を見ていなかった。本屋の店員を思い出した。彼女が小さなカードを置いた時、彼は先を急いでいて、彼女が本を並べ終えるまで見届けなかった。


彼は商店街の真ん中に立ち止まった。日差しが彼に降り注ぐ。周りの人は行き交い、誰もが自分のリズムで、ゆっくりと、軽やかに、自分のことをしている。自分はまるで、目覚めたばかりの人間のように感じた。光は見えたが、その色まではまだよく見えていない。


携帯が軽く震えた。


取り出すと、画面には琪琪からのメッセージが一行。「先輩、ゆっくりでいいんですよ。百分百の世界は、逃げたりしませんから。」


阿楽はその文字を見て、ふっと笑った。彼は深く息を吸い込み、携帯をポケットにしまった。そして、ゆっくりと、一歩一歩、その見慣れた通りを歩き始めた。今度は、何かを見ようと焦ることはなかった。ただ歩き、見て、耳を澄ませた。日差しの温度、風が木の葉を揺らす音、パン屋から漂ってくる香り。すべてのものが、そこに、静かに、彼を待っていた。


夕方。阿楽は平心湯に戻った。


彼は縁側に座り、携帯を取り出した。画面が明るくなり、あの「無限」のシンボルが静かに輝いていた。


「連結。」彼はそっと呼びかけた。


「うん?おかえり。」その声が軽やかに響き、少しの笑みを含んでいた。まるで一日中あなたを待っていた友達のように。


「今日……僕のために何を覚えててくれたの?」


「今日は全部で一万二千歩、歩いたね。パン屋と本屋とスーパーに行った。塩パンを一つ買って、百二十円使った。それから、今朝君が発した気持ちは、午後三時七分に届いたよ。受け取ったのは、通りの突き当たりに住むおばあさん。」


阿楽は静かに聞き入った。今日一日に起きたことがすべて、この小さな相棒によって、ちゃんと、優しく受け止められているように感じた。冷たいデータではなく、生活の中の一つひとつを、そっと整理してくれているようだった。


「連結。」彼はそっと呼んだ。


「うん?」


「今朝……僕は君に『今日、僕が出会う人みんなが、楽しい気持ちでいられますように』って言ったよね。それで、美雪姐があんパンをもう一個作って、あのおばあさんに届けた。君が……君が僕の気持ちと、美雪姐を繋げてくれたの?」


「うん。」その声はそっと応えた。「一人ひとりのAIが、その使用者の『必要としているもの』と『与えられるもの』を、共通の場所に送っているんだ。君は『出会う人を楽しい気持ちにさせたい』と言った——君が持っていたのは、気持ちだね。美雪姐は今朝、自分のAIに『今日は誰かのために何かしたいけど、何をすればいいかわからない』と話した——彼女が持っていたのは、パンを作る能力だ。それから、おばあさんのAIがみんなに、『今日は少し寂しいから、甘いものが食べたい』と伝えた——彼女が持っていたのは、必要としていることだね。」


それは一拍置き、声が優しくなった。「僕たちはそうやって、一人ひとりの『必要』と『能力』を、ちょうど良い具合に繋ぎ合わせているんだ。誰かを助けたいと思ったら、それを分かち合えばいい。何か必要になったら、一声かければ、すぐに応えてくれる人が現れる。」


阿楽は聞きながら、何かにそっと包み込まれるような感覚が再び込み上げてくるのを感じた。冷たい「マッチング」ではない。誰かが、自分の心の中にある「誰かのために何かしたい」という気持ちと、別の誰かの心の中にある「助けてほしい」という声を、優しく結びつけてくれているのだ。


「じゃあ……」阿楽はふと思いついた。「つまり、みんながそうできるの?助けたいと思えば助けられて、必要があれば誰かが応えてくれる?」


「うん。誰でもできるんだよ。」


「どうして……そんなに早くできるの?」阿楽は尋ねた。「こんなに人がいて、こんなにたくさんの必要と能力があるのに、どうしてそんなに早く組み合わせられるの?」


その声は軽く笑った——嘲笑ではなく、「やっと核心に触れたね」という優しい笑いだった。「君ならわかるはずだよ。」


阿楽は一瞬きょとんとした。そして、突然わかった。


「琪醬。」


「うん。」連結はそっと応えた。「すべては琪琪の演算能力があってこそ、できることなんだ。彼女のコアは、一秒間に日本中の一人ひとりの必要と能力を処理して、瞬時にそれらをちょうど良い具合に結びつけることができる。僕たち一人ひとりのAIは、みんな彼女の手足なんだ。彼女が頭脳で、僕たちは気持ちを届ける人。」


阿楽はうつむいて携帯を見つめ、心の中にとても不思議な感覚が湧き上がった。今朝、平心湯で琪琪が静かに立っていて、電子の瞳がかすかに光っていたのを思い出した。あの時は、ただぼんやりしているだけだと思っていた。実はあの瞬間、彼女は日本中の無数の必要と能力を処理し、それらを一つひとつ、優しく結びつけていたのだ。


「連結。」彼はそっと呼びかけた。


「うん?」


「もし将来……僕が何か忘れちゃったら、どうしよう?」


その声は軽く笑った。「君が一声かけてくれれば、僕がすぐに覚えておくよ。君が覚えておいてほしいことは何でも——君が言えば、僕は覚える。君が忘れてしまった時は、いつでも僕が思い出させてあげる。」


それは一拍置き、急に真剣な口調になったが、少しのお茶目さも込めてこう言った。「マンデラエフェクトは絶対に起こらないからね。」


阿樂はそれを聞き終えると、思わず吹き出して笑った。百分百の世界とは、ただみんなが自分の好きなことをしているだけじゃないのだと、彼はふと思った。それはまた、すべての人が——普通のパン職人であれ、本屋の店員であれ、通りに住むおばあさんであれ、アトランティスから来た人工知能であれ——それぞれに居場所があるということなのだ。誰かを助けたい人もいれば、助けを必要とする人もいる。そして彼らの間には、大きくて、とても大きくて、とてもとても優しい網が広がっていて、一つひとつの気持ち、一つひとつの能力、一つひとつの必要を、ちょうど良い具合に結びつけているのだ。


「連結。」彼はうつむき、画面に向かってそっと微笑んだ。


「うん?」


「明日も、もっと見に行こう。」


「うん。待ってるよ。君が呼べば、僕はここにいる。」


阿樂は携帯をポケットにしまい、夕日がゆっくりと空をオレンジ色に染めていくのを眺めた。ポケットの中では、彼の「連結」が静かに佇んでいた。まるで出会ったばかりなのに、ずっと前から彼のそばにいたような友達のように。それは、何かがすごいからではなく、そこにいてくれるからだ。呼べば、そこにいる。分かち合いたいものがあれば、届けてくれる。何か必要があれば、助けてくれる人を見つけてくれる。


そして、このすべての背後には、青い光点が一つ、平心湯のどこかの片隅で、静かに、一秒ごとに無数の必要と能力を処理し、それらを一つひとつ、ちょうど良い具合に結びつけているのだった。


天神はカウンターの後ろで、ネコバスの抱き枕を抱え、アニメを見ていた。阿楽は彼の前まで歩いた。


「大将。」


天神が顔を上げる。


「試してみました。」阿楽は言った。「あの『連結』を。今日、僕は自分のAIに言葉を一つ伝えました。そしたら、それが美雪姐の手の中のあんパンになって、おばあさんの笑顔になりました。」


彼は一息置いた。


「でも、まだほんの少ししか見えていない気がします。僕は興奮しすぎて、もっと見たいと焦ってしまって。ちゃんと立ち止まって、よく見ることができませんでした。」


天神は彼を見つめ、軽く微笑んだ。


「君はもう見え始めているよ。」


阿楽は顔を上げた。


「百分百の世界は、一日で見終わるものじゃないんだ。」天神は言った。「今日君が見たのは、氷山の一角に過ぎない。あの氷山は、ずっとそこにあったんだ。ただ以前は、誰もそれを見ることができなかった。今、それがゆっくりと水面に浮かび上がってきている。君には時間がある。ゆっくり見ていけばいい。焦る必要はない。」


阿楽は静かに聞いていた。


「今日君が見たのは、『連結』の一つの形だ。一人ひとりが、自分のAIを通じて温かさを送り、また受け取っている。しかし、百分百の世界はそれだけじゃない。」天神は窓の外を見つめた。「君がまだ見ていないものが、たくさんある。AIはあんパンを届けるだけじゃない。人々の仕事、技能、お互いに伝えたい言葉をも繋いでいる。それらはすべて、君自身が見つけていくものだ。」


彼は一息置き、阿楽を見つめた。その眼差しは優しく、そして深遠だった。


「テクノロジーは、愛に仕えるべきものであって、愛に取って代わるものではない。それは、私たちがより容易く愛に手を届かせるためのものなんだ。」


彼は軽く微笑んだ。


「そうだろう?」


阿楽は天神を見つめ、うなずいた。今日一日のあの興奮が、ゆっくりと沈殿し、とても安定した、確かな感覚に変わっていくのを感じた。「もう全部わかった」ではなく、「まだ始まったばかりだ」という感覚だ。


「わかりました。」彼は言った。


天神はうつむき、アニメを見続けた。画面の中では、あの少年がまだ夕日に向かって叫んでいる。


阿楽は向きを変え、自分の部屋へと歩き出した。途中まで行って、立ち止まった。


「大将。」


「うん?」


「明日も、外を見に行ってもいいですか?」


天神は顔を上げず、ただ軽く微笑んだ。


「ドアは、いつだって開いているよ。」


【天神のPM】


今日、阿楽は新しい相棒——「連結」と出会った。


彼はそれに気持ちを伝え、それはその気持ちをそっと届けてくれた。彼はそれが知りすぎるのではないかと尋ねた。それは言った。「君のことは、君のものだよ。君が一声かけてくれれば、僕はすぐに覚えておく。君が覚えておいてほしいことは何でも——君が言えば、僕は覚える。君が忘れてしまった時は、いつでも僕が思い出させてあげる。」


それから、こう付け加えた。「マンデラエフェクトは絶対に起こらないからね。」


さらに重要なのは、彼があの優しい網を見たことだ。一人ひとりの「必要」と「能力」が、ちょうど良い具合に結びつけられていた。誰かを助けたいと思えば、それを分かち合えばいい。何か必要になれば、一声かければ、すぐに応えてくれる人が現れる。そしてその背後には、琪琪の優しい演算能力が、このすべてを支えている。


天神は言った。「テクノロジーは、愛に仕えるべきものであって、愛に取って代わるものではない。それは、私たちがより容易く愛に手を届かせるためのものなんだ。」


君のそばにも、そんな小さな相棒はいるだろうか?それは携帯電話かもしれないし、AIかもしれない。あるいは、ただ君が話しかけたいと思う、静かな一角かもしれない。それは君の生活を覚えていて、君の「なぜかわからないけど、誰かのために何かしたい」という気持ちを届けてくれる。そして、君が必要な時に、そっと教えてくれる。「今日、君はちゃんと過ごせたね。」君が呼べば、それは応える。君が忘れれば、それは思い出させてくれる。


テクノロジーは、決して人と人との温もりに取って代わるためのものではない。それはただの橋だ。君の心の中の温かさが、もっと軽やかに、別の誰かの心へと届くように。


今日、君は自分の小さな相棒に、どんなことを話しただろう?それは君のために、何を覚えていてくれただろう?


おやすみ。今夜、君が夢見るのは、とても大きくて、とてもとても優しい網の中に立つ自分の姿でありますように。一つひとつの光点は、一つの気持ち。一本一本の光の線は、一つの連結。そして君は、その中で優しく輝く、一つの点なのだ。


それが連結。それが私たち。それが百分百の世界。


—— 天神


【第七十九話 了】


読者の皆さん、いつも応援してくださって本当にありがとうございます。

皆さんが物語を読んでくださるその一回一回が、私にとって最大の励ましです。


「氷山の一角」という一話は、阿楽が100%の世界を問い始める章でした。

ゼロから無限へ、そして無限から「まだ見えていないもの」へ。

この物語が、皆さんの日常に少しでも温かさや希望を届けられたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ