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異世界転移したら軟禁生活がはじまりました ※最強魔法使いによる週1キス付き  作者: 夢旗ひつじ


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異世界の洗礼 1

 魔法の勉強は難しいが、楽しい。

 魔法陣に書き込むルーン文字には種類があり、魔力との相性や注ぎ方によって効果の出方が変わるため、何度も繰り返しいろいろなパターンを試すしかない。

 本に書いてあるままの方法ではうまくいかないことも多く、陽葵は治癒魔法の練習を繰り返す毎日を送っていた。


「陽葵様は本当に勉強熱心だなぁ。あまり根詰めちゃだめだぞ?」


 机の上に魔法陣を書いた紙を広げて唸っていると、今日の護衛であるメラスが後ろから覗き込んできて心配そうに声をかけてくる。

 陽葵が紙の端に『ありがとう』と書いて笑顔でメラスを見上げると、メラスは仕方なさそうに笑みを返してくれた。


 そのとき、部屋のドアがノックされた音がして陽葵とメラスは同時に振り返る。


「ジルです。入っても?」

「はーい」


 ドアの向こうから聞こえてきた声に、陽葵は窓の外に目を向ける。

 今日は魔力の補給日でもなく、まだ日が暮れかけているが夜ではない。

 いつもより早いジルの訪問に少し驚いたが、陽葵は喜んでジルを出迎えた。


「ジルさん、お疲れさんです」

「ああ。変わりないか?」

「今日も変わりなく、陽葵様は勉強勉強お勉強ですよ」


 メラスが呆れ半分、感心半分といった声を出して肩を竦める。


 治癒魔法の練習は花を相手に行っている。

 ジルと摘んできた花に傷をつけて治したり、しおれた花を瑞々しく蘇らせたりすることが治癒魔法の練習になる。


 魔法陣を書き散らした紙が散乱し、花が置かれた机をジルに見られるのが恥ずかしく、陽葵はえへへと照れ笑いをした。


「あまり無理をしてはいけませんよ」

「さっきメラスさんにもそう言われちゃいました」

「そうだ! 聞いてくださいよ、ジルさん。陽葵様、自分の指を切ろうとしたんですよ」

「は?」

「あー! 内緒にしてって言ったのに!」


 花に傷をつけるために貸してもらったナイフでほんの少し指先を切ろうとすると、同じ室内とはいえ離れたところにいたはずのメラスが飛んできて陽葵の手からナイフを奪ったのは昼間のことだ。

 メラス達が陽葵の行動を護衛の務めとしてジルに報告しているのは知っている。

 こっぴどく陽葵を叱ったあとに、ジルには内緒にしてほしいとお願いしたときのメラスは渋い表情をしただけでうなずかなかったが、こんなにあっさり目の前で暴露されるだなんて思わなかった。


「どういうことですか? 説明を」

「いえ、大したことじゃなくて……」

「大したことです」


 美形の真顔は怖い。

 ジルに鋭い視線で射貫かれて、陽葵はたじたじになりながら訳を説明した。


「は、花ばかり相手にしてても実際に人の傷を治せるかわからないと思って、それで……」

「それで自身に傷をつけて、治癒魔法がうまく使えるか試そうとしたということですか?」

「……はい」


 はあ、とジルがこれ見よがしにため息をつく。

 メラスに筆談で訳を説明したときも同様に呆れられてしまった。


「でも、花は治せても人は治せなかったりしたら困るじゃないですか! 実験したくなる気持ちは当然だと思います!」

「その気持ちはわからなくもないです」

「ですよね!」


 メラスにも筆談で力説したことだが、やはり熱意を込めた声の方が気持ちは伝わるらしい。

 これで指先を少し切るくらいなら許されるかもしれないと陽葵が期待していると、不意にジルは腰にいつも佩いている短剣を抜いた。

 何をするつもりなのかと陽葵とメラスが見つめる中、ジルは唐突に自身の手首をざっくりと切りつけた。

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