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もう先延ばしにはできない決意

月曜日の朝、俺はあることに気づいた。


誰かを好きだと認めることよりも、ずっと難しいことがある。


その気持ちを本人に伝えることだ。


「…………」


ベッドの端に腰掛けたまま、俺はスマートフォンの画面を見つめていた。


開いているのは舞夜とのメッセージ画面。最後のメッセージは昨夜のものだった。


舞夜:明日も、大樹と素敵な思い出が作れますように!


俺はもちろん、と返信した。休み時間には俺から会いに行くよ、と付け加えた。いつものように、ほとんど毎日繰り返しているやり取りだ。


そこまでは、何も変わらない。


問題は、そのメッセージを十分近く眺め続けているのに、頭の中が舞夜のことでいっぱいになっていることだった。


美味しいものを食べたときの笑顔。


緊張すると、紫色の髪を耳にかける仕草。


俺が自分のことを考えていたと知ったとき、瞳を輝かせる表情。


そして何より、手が触れ合ったときの彼女の顔。


まるで、その何気ない仕草に、自分が口にする以上の意味が込められているかのように。


もっとも、最近はもう、あまり隠そうとしていないのかもしれない。


俺はため息をつき、頭を後ろに倒した。


「……舞夜、俺はどうすればいいんだよ」


当然、返事はない。


数秒後、別の人から返事があった。


ただし、まったく違う内容だったけれど。


「大樹! 早く降りてこないと朝ご飯が冷めちゃうわよ!」


「今行く!」


スマートフォンをロックして立ち上がり、着替えを済ませる。


鏡の前で髪を整えながら、数日前に結衣から言われた言葉を思い出した。


『そのときが来たら、ありきたりな告白で済ませちゃ駄目だからね』


……余計なプレッシャーをありがとう、結衣。


自分の考えだけで十分なのに。


朝食を食べるために階下へ降り、何事もないように振る舞おうとした。


母さんはコーヒーを淹れていて、俺はトーストが置かれた席に座る。


「何だか上の空ね」


「俺が?」


「いいえ、あなたの席に座っている幽霊のことよ」


「面白くないよ、それ」


母さんは笑いながら、テーブルにカップを置いた。


「学校で何かあったの?」


「そういうわけじゃないよ」


「じゃあ、どうしたの?」


俺はトーストにバターを塗った。


本当なら、ずっと近づいてきてくれた女の子に、自分の気持ちをどうやって伝えようか考えているんだと説明できたはずだ。


バレンタインにはチョコレートをもらったし、今では俺が一緒に選んだペンダントを身につけてくれている。


そう説明すればいい。


けれど、どういうわけか、それらを一言でまとめるのは難しかった。


「ある人に伝えたいことがあるんだ」


結局、そう答えた。


「大切なことをね」


母さんの手が一瞬止まった。


それから、俺がすぐに後悔するような笑顔を浮かべた。


「あら、そうなの」


「その顔やめてよ」


「どんな顔?」


「その顔だよ」


「別に何もしてないわよ」


「母さん……」


「大樹、詳しいことを話さなくてもいいわ。ただ、一つだけ言わせてね」


母さんは大げさに人差し指を立てた。


「自分にとって大切なことなら、完璧な言葉を探し続けないこと。理想的な伝え方を考えているうちに、結局いつまでも言えなくなってしまうこともあるんだから」


俺は黙り込んだ。


こういうときに限って、大人は妙にもっともらしいことを言う。


「覚えておくよ」


小さく呟く。


「それと、考えすぎて遅刻しないようにね」


「分かってるよ!」


朝食を食べ終え、荷物をまとめて家を出た。


四月の朝はよく晴れていた。


春の空気にはまだ少し冷たさが残っていて、風が吹くたびに桜の花びらが歩道を滑っていく。


スマートフォンをポケットにしまい、駅へ向かって歩き出した。


今日の朝のうちに、すべてを解決できるわけではない。


それは分かっている。


何か月もかけて少しずつ距離を縮め、約束を交わし、たくさんの思い出を作ってきた相手に、突然告白するわけにもいかない。


ちゃんと伝えたい。


これまで舞夜が俺にしてくれたことへの返事でも、その場の勢いでもないと、彼女に分かってほしい。


俺自身が、彼女を選んだのだと。


恋をしてほしいと言われたからじゃない。


彼女の気持ちに応えなければならないと思ったからでもない。


舞夜のことを知り、話を聞き、一緒にたくさんの時間を過ごすうちに、いつの間にか彼女のいない未来を想像したくなくなっていた。


それが、今の俺の気持ちだった。


そして、それは何よりも大きな変化だった。


学校に着くと、入口の近くに結衣と松がいた。


「おはよう、大樹!」


結衣が声をかけてくる。


「おはよう」


松は俺の顔を数秒眺めた。


「お前、あんまり眠れてないだろ」


「普通に寝たよ」


「じゃあ、誰かのことを考えすぎている顔だな」


俺は足を止めた。


結衣がゆっくりと松の方を向く。


「松、あなたにしては珍しく、まともなことを言ったわね」


「一言余計だろ!」


「朝から喧嘩しないでくれよ」


二人の間を通り抜けようとしたが、結衣に肩を掴まれた。


「ちょっと待って。今朝、舞夜とはメッセージのやり取りをした?」


「したよ」


「それで?」


「それでって?」


「大樹!」


「何だよ!?」


松が声を上げて笑った。


「こいつ、完全に参ってるな」


「本当にね。最近の舞夜を見る目を考えたら、本人も何か準備していることに気づいているかもしれないのに」


心臓が小さく跳ねた。


「何か準備している?」


結衣が目を細める。


「ほら、その反応。絶対に何か企んでるでしょ」


「何も企んでないよ」


「そう。じゃあ、私は学園長ってことにしておこうかな」


「それなら、いろいろ納得できるな」


松がぼそりと呟く。


「ちょっと! 今、何て言ったの!?」


二人がまた言い争いを始めた隙に、俺は校舎へ逃げ込んだ。


けれど、階段を上ろうとしたところで、視線が自然と三年二組へ続く廊下に向いてしまった。


まだ舞夜の姿は見えない。


それなのに、もう彼女を探している自分がいた。


俺は数秒間、誰もいない廊下を眺めていた。


それからスマートフォンを取り出す。


舞夜とのメッセージ画面を開き、文章を打ち込んだ。


大樹:舞夜、今日の休み時間に少し話せる?


二度読み返す。


何か説明を付け加えようかとも思った。


けれど、考え直す前に送信した。


すぐに返信が届く。


舞夜:もちろんだよ。どうかしたの、大樹?


画面を見つめる。


何でもないよ、と答えることもできた。


適当な理由をつけて、別の日に延ばすことだってできる。


でも、もうそんな小さな逃げ道に隠れるのは疲れていた。


大樹:悪いことがあったわけじゃないよ。ただ、舞夜と話したいんだ。


今度は、返信が来るまで少し時間がかかった。


舞夜:分かった。いつもの秘密の場所で待ってるね。


俺は微笑んだ。


いつもの秘密の場所。


写真を撮ったり、いろいろな話をしたり、気まずさを感じることもなく一緒に沈黙を過ごしたりしてきた場所。


いつの間にか、二人にとって特別な場所になっていた。


スマートフォンをしまい、深く息を吸い込む。


まだ、具体的に何を話すのかは決められていない。


それでも、一つだけ決めたことがある。


もう、自分の気持ちを先延ばしにしたくない。


勇気が足りないからといって、いつまでも伝えずにいるのはやめよう。


舞夜と向き合うときには、まっすぐ彼女の目を見て話したい。


逃げずに。


自分の心が何を望んでいるのか、知らないふりをせずに。


なぜ彼女に近づきたいのか。


その理由を伝える方法を、今度こそ見つけたいと思った。


そして、もしかすると、それこそが何よりも大きな違いなのかもしれない。


俺はもう、舞夜に近づくための理由を探しているわけじゃない。


これからも彼女のそばにいたいと思う理由を、伝えようとしているのだから。

読んでいただき、ありがとうございます!


大樹は、ついに自分の気持ちを伝える決意を固めました。

二人の関係がこれからどう進んでいくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


次回もよろしくお願いします!

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