↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/346

二年生の思い出

次の授業も、何事もなく進んでいった。


少なくとも、僕はそう思い込もうとしていた。


それでも、結衣に言われた言葉が頭から離れなかった。


『自分がいつ舞夜のことを考えてるのかさえ、わからなくなってるんじゃない?』


……もしかすると、本当にそうなのかもしれない。


僕はノートを開き、先生の説明に集中しようとした。


そのとき、ページの間に何かが挟まっていることに気づいた。


小さな写真だった。


僕はそっと取り出した。


それは、舞夜と一緒に撮った、初期の頃の写真の一枚だった。


しばらく、僕はその写真を見つめていた。


この写真を撮った頃、まさか彼女が自分にとってこんなにも大切な存在になるなんて、考えてもいなかった。


そして、ふと別の出来事を思い出した。


写真でも、文化祭でも、デートでもない。


舞夜が、自分の過去と向き合わなければならなかったときのことだ。


───


あれは、二年生の頃だった。


中学生のときから、舞夜がずっと忘れようとしていた出来事が、再び彼女の目の前に現れた。


文芸部。


そこにいた人たち。


そして、二度と戻りたくない場所にしまい込んでいた記憶。


あの日、舞夜の表情が変わった瞬間を、僕は今でもはっきりと覚えている。


舞夜は、いつだって笑顔を見せることができた。


緊張しているときも。


何かを隠そうとしているときも。


けれど、あのときは違った。


彼女の笑顔は、消えていた。


舞夜が過去のことでどれほど傷ついていたのか、僕は初めてはっきりと知った気がした。


そして、何を言えばいいのかわからなかったことも覚えている。


僕には解決策なんてなかった。


起きてしまったことを変えることはできない。


彼女の記憶を消すこともできない。


過去に関わった人たちを、彼女の人生からいなかったことにすることだってできない。


僕にできるのは、そばにいることだけだった。


だから、僕はそこにいた。


何をすればいいのか、正確にわかっていたからじゃない。


舞夜が、あの出来事と一人で向き合わなければならない状況にしたくなかったからだ。


───


僕は、もう一度手元の写真に目を落とした。


「……不思議だな」


あのときは、あの出来事が僕たちの関係を変えることになるなんて、考えもしなかった。


ただ、彼女の力になりたかった。


けれど、今になって振り返れば、あの頃から僕の中で何かが変わり始めていたのだとわかる。


もしかすると、あのとき初めて気づいたのかもしれない。


舞夜は、ただ僕を笑顔にしようとしてくれる女の子じゃない。


傷つくこともある。


怖くなることもある。


誰かにそばにいてほしいと願うことだってある。


そして、僕はそんな彼女のそばにいる人間になりたかった。


舞夜に頼まれたからじゃない。


僕自身が、そうしたいと思ったからだ。


僕はゆっくりとノートを閉じた。


そのとき、過去と向き合った後に、舞夜が僕に言ってくれた言葉を思い出した。


『そばにいてくれて、ありがとう』


あのときの僕は、ただ「お礼なんて言わなくていいよ」と答えた。


でも、今はその言葉の意味が少し違って感じられる。


もし、誰かにどうして舞夜のそばにいることを選んだのかと聞かれたら。


僕は、ひとつの理由だけで答えることはできないだろう。


舞夜だったから。


彼女が苦しんでいる姿を見ていられなかったから。


それとも……あの頃にはもう、自分でも気づかないうちに、彼女をかけがえのない存在だと思い始めていたからなのだろうか。


僕は、もう一度写真を見た。


そして、自然と笑みがこぼれた。


「……思っていたより、ずっと前からだったんだな」


その瞬間、チャイムが鳴った。


僕は写真をノートのページの間に戻した。


けれど、完全に閉じる前に、もう一度だけ写真を見つめた。


そこには、舞夜が笑顔で写っていた。


何の心配もないような、無邪気な笑顔だった。


でも、今の僕は知っている。


その笑顔の裏には、向き合うために大きな勇気を必要とした過去があったのだ。


そして僕は、そのとき彼女のそばにいることができた。


それは、決して忘れたくないことだった。


だって、本当に大切な思い出というのは、ただ一緒に楽しく過ごした時間だけではないのかもしれない。


お互いを信じて、支え合うことができた時間。


そういう瞬間こそが、心に深く刻まれるのかもしれない。


そして、そう考えれば考えるほど……。


僕はもう、自分が舞夜に抱いている気持ちを否定することが難しくなっていた。

今回も読んでくださって、ありがとうございます!


二年生の頃の思い出を振り返りながら、舞夜への想いがずっと前から育っていたことに気づき始めた大樹。


楽しい時間だけでなく、苦しいときに支え合った記憶も、二人を結びつけているのかもしれません。


これから大樹が自分の気持ちとどう向き合っていくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


ブックマークや評価も励みになります。

次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。