心に残る小さな思い出
ホワイトデーが終わった次の月曜日。
僕はいつもどおり学校へ向かった。
何も変わっていないように見えた。
いつもの廊下。
いつもの教室。
授業が始まる前に、友達同士で話しているクラスメイトたち。
けれど、僕にとっては少しだけ違っていた。
教室に入ると、舞夜はすでに窓際の席に座っていた。
「おはようございます、大樹くん」
「おはよう、舞夜」
彼女はにっこりと微笑んだ。
そのとき、僕は気づいた。
胸元で、小さな星と花のペンダントが輝いている。
「……つけてくれてるんだね」
舞夜はペンダントにそっと触れた。
「つけるって言いましたから」
「特別な日まで、大切にしまっておくのかと思ってたよ」
「私にとっては、今日だって特別な日です」
「どうして?」
舞夜は少しも迷わず、微笑んだ。
「大樹くんに会えるからです」
……何て答えればいいんだろう。
僕が言葉に詰まっていると、近くにいた結衣が吹き出した。
「もう、二人とも日に日にひどくなってない?」
「ゆ、結衣!」
舞夜の頬が赤く染まる。
もちろん、僕の顔も熱くなっていた。
結衣はそんな僕たちを見て、楽しそうに笑いながら離れていった。
僕はもう一度、舞夜のペンダントに目を向けた。
小さな星と、一輪の花。
決して派手な贈り物ではない。
けれど、その小さなアクセサリーには、何週間もかけて頑張った時間も、バレンタインのチョコレートも、ホワイトデーに交わした約束も、そして今も少しずつ増え続けている思い出も詰まっていた。
「大樹くん」
舞夜が僕を呼んだ。
「どうしたの?」
「今年は、まだまだやりたいことがたくさんありますね」
「そうだね」
「旅行に行ったり、お祭りに行ったり、写真を撮ったり……」
「それから、もっと思い出を作ったりね」
舞夜は嬉しそうに笑った。
「……はい。そのとおりです」
ちょうどそのとき、授業開始のチャイムが鳴った。
僕たちはそれぞれの席に戻る。
授業が始まる直前、舞夜がもう一度こちらを見た。
僕も彼女に微笑み返す。
僕たちの関係を、どう表現すればいいのか。
その答えは、まだ出ていない。
伝えられていない言葉だって、きっとたくさんある。
それでも、今は焦る必要なんてないと思えた。
だって、これからも舞夜と一緒に、その答えを見つけていきたいから。
少しずつ。
一日ずつ。
一つずつ、思い出を重ねながら。
窓から差し込む朝の光を眺めながら、僕は思った。
僕たちの物語は、まだまだ終わらない。
二人で紡いでいく、新しい思い出の物語は。
今、ようやく次の一章を迎えたばかりなのだから。
読んでいただき、ありがとうございます!
ホワイトデーを経て、少しずつ変わっていく大樹と舞夜の関係。
首元に輝くペンダントは、二人の新しい思い出の始まりです。
これからも二人の物語を、温かく見守っていただけたら嬉しいです!




