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贈り物が形になる

ホワイトデーまで、あと数日。


そして、ようやく贈り物を仕上げるときが来た。


その日の夕方、カフェでのアルバイトを終えた僕は、小さな袋を手に帰宅した。


中に入っているのは、あのペンダント。


星と花。


何週間も働き、少しずつお金を貯めて、ようやく手に入れたものだ。


僕は慎重に箱から取り出した。


小さな星が、部屋の明かりを反射してきらりと輝く。


「……きれいだな」


店で何度も見たはずなのに、こうして自分のものになってから眺めると、どこか違って見えた。


しばらくペンダントを見つめてから、僕は舞夜のことを考えた。


深い紫色の髪。


二人で思い出の話をするときに見せてくれる、あの笑顔。


「きっと、喜んでくれるよな」


そうつぶやいたところで、ふと思い出した。


まだ、用意しなければならないものがある。


チョコレートだ。


市販のものを買うつもりはなかった。


舞夜は、自分でチョコレートを作ってくれた。


だったら、僕も少しくらい頑張ってみたい。


そう思い、僕は台所へ向かった。


ミルクチョコレートとホワイトチョコレート、それから簡単に使えそうな材料をいくつか用意する。


お菓子作りの経験なんて、ほとんどない。


けれど、舞夜だって最初から上手に作れたわけではなかったはずだ。


そう考えて、僕も挑戦してみることにした。


「よし……」


僕は深く息を吸い込んだ。


「そんなに難しいことじゃないはずだ」


数分後。


「……全然うまくいかない」


チョコレートを溶かしすぎてしまった。


慌てて何とかしようとしたものの、かえって状態が悪くなってしまう。


「いや、これは駄目だな……」


僕は気を取り直して、最初からやり直した。


今度は温度に気をつけながら、慎重に作業を進める。


少しずつ、チョコレートが均一に混ざり合っていった。


それを小さな型に流し込む。


出来上がったチョコレートは、決して完璧ではなかった。


それでも、ちゃんとハートの形になっている。


冷めるのを待ってから、型から取り出してみた。


少し歪んでいるものもある。


一つには、小さなひびまで入っていた。


けれど、全体的には思っていたよりも悪くない。


僕は思わず笑った。


「……まあ、これならいいか」


チョコレートを小さな箱に並べていく。


そして、別の小箱にペンダントをしまった。


一緒に贈りたいけれど、チョコレートがペンダントに触れて傷つかないように、きちんと分けておきたかった。


最後に、メッセージカードを用意する。


ペンを手に取り、しばらく考え込んだ。


難しい言葉を書きたいわけじゃない。


ただ、自分の気持ちを伝えたかった。


そして、ようやくペンを動かした。


『ハッピーホワイトデー、舞夜。

チョコレートをありがとう。

そして、これまで一緒に作ってきた思い出をありがとう。

これからも、君と一緒にたくさんの思い出を作っていきたいです』


書き終えた文章を、一度読み返す。


それから、もう一度。


自然と笑みがこぼれた。


「……うん」


これが、僕の伝えたかったことだ。


カードを丁寧に折り、贈り物のそばに添える。


そして、すべてを箱に収めた。


僕は完成した箱を、しばらく見つめていた。


チョコレート。


ペンダント。


メッセージカード。


この数週間、準備してきたものが、ようやく目の前に揃った。


ここまでのことを思い返す。


カフェで働いた放課後。


疲れ切って帰宅した夜。


何もする気力が残っていなかった日。


そして、舞夜に何をしているのか聞かれるたび、秘密を守るために言葉を濁したこと。


大変だった。


けれど、今なら分かる。


頑張ってよかった。


それは、贈り物が高価だからではない。


この小さな箱の中には、それぞれの意味があるからだ。


舞夜のことを考えながら過ごした、何週間もの時間。


チョコレートのお返しだけでは終わらせたくなかった気持ち。


そして、彼女が僕に向けてくれた想いも、僕にとって大切なものなのだと伝えたい気持ち。


そのすべてが、この贈り物には詰まっている。


僕は箱を丁寧にしまった。


ホワイトデーは、もうすぐそこまで来ている。


そして今度は……。


僕のほうが、贈り物を渡す瞬間を緊張しながら待っていた。

読んでいただき、ありがとうございます!


大樹がついに、舞夜への贈り物を完成させました。

少し不格好な手作りチョコレートと、想いを込めて選んだペンダント。そして、一枚のメッセージカード。


ホワイトデー当日、舞夜はどんな反応を見せてくれるのでしょうか。


次回もぜひお楽しみください!

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