何を贈ればいい?
日々は、少しずつ過ぎていった。
アルバイトを探すと決めてから、俺の中には一つだけ、はっきりしていることがあった。
舞夜に贈るプレゼントを見つけること。
適当なものを買いたいわけじゃない。
できるだけ長く、大切に残してもらえるものがいい。
その日の放課後。
俺は、プレゼントを探している途中で見つけた、小さなアクセサリーショップへ向かった。
店の中には、ネックレス。
ブレスレット。
イヤリング。
小さなブローチ。
そして、いくつものペンダントが並んでいた。
店員さんが、いくつかの商品を見せてくれる。
「何か特別な方へのプレゼントをお探しですか?」
その質問に、俺は少し驚いた。
「……はい」
「彼女さんですか?」
「……正確には、まだ違います」
店員さんが微笑む。
「では、とても大切な方なんですね」
「はい」
俺は並んでいるアクセサリーをもう一度見る。
「何か意味のあるものを贈りたいんです」
「どんな意味のものがいいですか?」
俺は舞夜のことを考えた。
紫色の髪。
これまで一緒に過ごしてきた時間。
そして、お正月に交わした約束。
――これからも一緒にいる。
「……これからも一緒に歩いていく、みたいな意味を持つものがいいです」
店員さんは、いくつかのデザインを見せてくれた。
一つはハートの形。
もう一つは月をモチーフにしたもの。
そして最後に――。
小さな星と花が並んだペンダントが出てきた。
俺は、それをじっと見つめた。
以前、ネットで見つけたものとよく似ている。
「……これ」
俺は慎重に手に取った。
「気に入りましたか?」
「はい」
「とても繊細なデザインですよね」
俺は値札を見る。
……やっぱり、今の俺には高い。
「……いくらですか?」
店員さんが金額を教えてくれる。
俺は頭の中で、今まで貯めたお金を計算する。
まだ、かなり足りない。
「……分かりました」
俺はペンダントを元の場所へ戻した。
そして、少し考えてから尋ねる。
「これ、取り置きできますか?」
「できますよ。ただ、いくらか先にお支払いいただく必要があります」
俺は頷いた。
「じゃあ、お金が貯まったらまた来ます」
店を出る前に、俺はもう一度だけペンダントを見る。
小さな星。
そして、花。
なぜだろう。
舞夜が身につけている姿が、自然と想像できた。
───
翌日。
学校の休み時間。
松が俺のところへやってきた。
「大樹」
「何?」
「最近、放課後になるとすぐいなくなるよな」
「ちょっと用事があるんだ」
「どんな用事?」
「大したことじゃないよ」
松が俺をじっと見る。
「……何か隠してるだろ」
「隠してない」
「いや、隠してる」
「隠してないって」
「絶対隠してる」
俺は小さくため息をつく。
「……ちょっと複雑なんだよ」
松が笑う。
「舞夜絡みか?」
俺は黙った。
「……あ」
松が俺の表情を指差す。
「今のは『そうです』って顔だぞ」
「正確には違う」
「じゃあ、何を準備してるんだ?」
「言えない」
「どうして?」
「サプライズにしたいから」
松から、いつものふざけた表情が消えた。
「……それ、本当に大事なことなんだな」
「うん」
「手伝おうか?」
俺は首を横に振る。
「自分でやるよ」
松が笑った。
「そっか。じゃあ、頑張れよ」
「ありがとう」
松が離れていく。
俺は舞夜のほうを見る。
舞夜は結衣と話をしていた。
その瞬間――。
舞夜と目が合った。
舞夜が微笑む。
俺も笑い返す。
そして、もう一度あのペンダントのことを思い出した。
まだ、買うことはできない。
でも――。
必ず手に入れる。
たとえ、何週間も放課後に働くことになったとしても。
今回は――。
俺が舞夜のために、サプライズを準備する番だから。
そして舞夜が何も知らないまま――。
俺のホワイトデーに向けた、小さな秘密が始まった。
読んでいただき、ありがとうございます!
次の話でまたお会いしましょう!




