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まだ返せない贈り物

あの日の放課後。


家へ帰る途中、俺は松に言われたことをずっと考えていた。


――本当に大切に思ってる。


どうして、あの言葉がこんなにも頭に残っているのか。


自分でもよく分からない。


ただ――。


たぶん、あの言葉が本当だったからだ。


舞夜と少しずつ距離が近くなってから、俺は彼女からたくさんのものをもらっていた。


笑顔。


会話。


写真。


思い出。


そして今は――。


俺のために作ってくれたチョコレート。


でも、俺は今まで考えたことがなかった。


自分は舞夜に、何を返せるんだろう。


ただ適当に何かを買って渡すだけでは嫌だった。


二人にとって、意味のあるものがいい。


そんなことを考えながら家に着く。


俺はバッグを置き、机の前に座った。


そして、舞夜からもらった小さな箱を取り出す。


蓋を開ける。


中には、まだいくつかチョコレートが残っている。


その一つを手に取って、俺は笑った。


「……何か考えないとな」


スマートフォンを開く。


プレゼントの候補を調べ始めた。


花。


お菓子。


ぬいぐるみ。


アクセサリー。


けれど――。


どれも候補から外していった。


悪いプレゼントというわけじゃない。


ただ、どれもしっくりこなかった。


そんなとき、ふとお正月のことを思い出した。


神社。


写真。


そして、あのとき交わした約束。


――これからも、たくさんの思い出を作る。


「……残しておけるもの」


俺は小さく呟いた。


そこで、一つの考えが浮かんだ。


アクセサリー。


例えば、ペンダント。


舞夜がいつでも身につけられるような、小さなもの。


でも――。


ただのアクセサリーではなく、何か意味のあるものがいい。


俺はショップのページを開き、いくつかのデザインを見ていく。


星。


花。


月。


ハート。


どれも悪くない。


でも、なかなか決められない。


そのとき――。


一つの小さなペンダントが目に入った。


星と花を組み合わせたデザインだった。


俺は画面を見つめる。


星を見ていると、今まで舞夜と話した夜のことを思い出した。


そして、花を見た瞬間――。


自然と舞夜の顔が浮かんだ。


「……これみたいなのがいいかもしれない」


まだ、それが本当に正解なのかは分からない。


でも、初めて――。


少しだけ答えに近づいた気がした。


「舞夜に、こういうのを贈りたい」


俺は値段を見る。


そして――。


表情が固まった。


「……あ」


思っていたより高かった。


買えないほどではない。


けれど、今の貯金では到底足りない。


財布を見る。


もう一度、画面に表示された金額を見る。


「……貯めないとな」


俺はページを閉じた。


それでも、そのアイデアは頭から消えなかった。


むしろ――。


考えれば考えるほど、気に入っていく。


舞夜には、長く残しておけるものを持っていてほしい。


それを見たときに、今この瞬間のことを思い出せるようなものを。


でも、それを手に入れるには――。


自分も努力しなければならない。


俺はしばらく黙って机の前に座っていた。


そして、ふと思い出した。


以前、クラスメイトが話していたこと。


学校が終わったあと、学生でも働けるカフェがあるらしい。


「……アルバイトか」


その考えが、自然と頭に浮かんだ。


数時間だけ働く。


お金を貯める。


そして、そのプレゼントを買う。


舞夜に話す必要はない。


そのほうが、きっと驚いてくれる。


俺は再びスマートフォンを手に取った。


近くにある店を探してみる。


カフェ。


ショップ。


小さなレストラン。


いくつか候補が見つかった。


その中に――。


放課後の学生アルバイトを募集しているカフェがあった。


俺は住所をメモする。


「……明日、聞いてみよう」


スマートフォンを置く。


そして、もう一度、舞夜からもらった小さな箱を見る。


俺は微笑んだ。


「舞夜は、俺のために頑張ってくれた」


箱に残っている紫色のリボンを、そっと指でなぞる。


「だったら、俺も舞夜のために頑張りたい」


箱の蓋を、ゆっくり閉じる。


ホワイトデーまでは、まだ何週間もある。


でも――。


俺の決意は、もう決まっていた。


アルバイトを探す。


必要なお金を少しずつ貯める。


そして、その日が来たら――。


舞夜に、ただのプレゼントではないものを渡す。


ずっと残しておける思い出を。


言葉にしなくても伝わるようなものを。


――俺も、これから舞夜と一緒に、もっとたくさんの思い出を作っていきたい。


そんな気持ちを込めて。

読んでいただき、ありがとうございます!

次の話でまたお会いしましょう!

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