↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/319

女の子同士の会話

大樹が別の部屋で穣明を手伝っている間、舞夜は霞と妙子と一緒にリビングに残っていた。


数秒間、誰も何も話さなかった。


舞夜は両手でカップを包んでいる。


「大丈夫?」


霞が尋ねた。


「はい」


「少し緊張してるみたいね」


舞夜は恥ずかしそうに笑った。


「……少しだけ」


「そんなに緊張しなくていいのよ」


「分かっています」


舞夜は小さく息を吐く。


「でも、大樹くんの家族に会うのは初めてなので……」


「ちゃんと良い印象を持ってもらいたくて」


妙子が笑った。


「もう十分だよ」


「本当ですか?」


「うん」


「母さんが、初対面の人をキッチンまで連れていって一緒にお茶を作るなんて珍しいから」


霞が小さく笑った。


「それは確かにそうね」


舞夜も笑った。


すると、妙子がテーブルに両腕を置く。


「でも、一つ聞きたいことがあるんだけど」


「何でしょう?」


「大樹のことを好きだって、いつ気づいたの?」


舞夜の動きが止まった。


「……いつ?」


「うん」


「急にそうなった感じじゃないよね?」


舞夜は視線を落とした。


「……そうですね」


少し考えてから、ゆっくりと話し始める。


「最初は、自分がどう思っているのか分かりませんでした」


「ただ、大樹くんと話すのが楽しくて」


「それから、学校で大樹くんに会うのが楽しみになって……」


舞夜はカップを見つめる。


「近くにいないと……少し寂しいと思うようになりました」


霞が優しく笑った。


「それは、かなり分かりやすいサインね」


舞夜は小さくうなずく。


「……私も、そう思います」


少しの沈黙。


そして舞夜が続けた。


「でも、本当に自分の気持ちに気づいたきっかけは……別にありました」


「何?」


妙子が尋ねる。


「嫉妬です」


妙子が目を見開く。


「嫉妬?」


舞夜は頬に手を当てた。


「はい」


「同じクラスの女の子が、大樹くんと話していたんです」


「それを見て……」


舞夜は少し困ったように笑う。


「なんだか、嫌な気持ちになってしまって」


「その子が何か特別だったの?」


「それが……」


舞夜は小さく眉を下げた。


「その子には、もう彼氏がいたんです」


一瞬、妙子が黙る。


そして――。


「ふふっ」


笑い始めた。


「彼氏がいる女の子に嫉妬したの?」


「……はい!」


舞夜は恥ずかしそうに顔を赤くする。


「自分でも分かっています。すごく変だったって」


霞も小さく笑った。


「でも、きっとその子自身に嫉妬したわけじゃないのよ」


舞夜が顔を上げる。


「……どういうことですか?」


「大樹から自分への関心を、誰かに取られてしまうんじゃないかって思ったんじゃない?」


舞夜は黙って考えた。


「……はい」


やがて、小さくうなずく。


「たぶん、そうだったんだと思います」


舞夜は自分の手元を見る。


「大樹くんが、私の人生の中で少しずつ大きな存在になっていて……」


「その場所を、他の誰かに取られたくないと思ったんです」


妙子は、もうからかうような表情をしていなかった。


「それは、かなり大きな気持ちだね」


「はい」


舞夜はゆっくりと息を吐く。


「それから、自分の気持ちが少しずつ分かるようになりました」


「大樹くんの近くにいたいだけじゃないんです」


「これからも、一緒に思い出を作っていきたい」


「もっと写真を撮って」


「もっと一緒に出かけて」


「クリスマスの日みたいな時間を、もっと増やしたいです」


舞夜は少しだけ笑った。


「来年も、その先も……大樹くんには私の隣にいてほしい」


霞は舞夜をしばらく見つめた。


そして、優しく尋ねる。


「舞夜ちゃん」


「はい?」


「……大樹のことが好き?」


舞夜の顔が、一瞬で真っ赤になった。


すぐには答えられない。


そして、手首のブレスレットをそっと握る。


「……はい」


小さな声だった。


「まだ、いつちゃんと伝えられるのか分かりません」


「私たちの関係が、いつ変わるのかも……」


舞夜は顔を上げた。


「でも……」


もう一度、はっきりと言う。


「はい」


「私は、大樹くんのことが大好きです」


霞は微笑んだ。


驚いている様子はなかった。


「それなら、何も心配することはないわ」


舞夜が瞬きをする。


「……え?」


「大樹があなたと一緒にいる時、あんなふうに笑っているんだもの」


霞は優しく笑う。


「私にとっては、それだけで十分」


「舞夜ちゃんは、もうこの家に来ていい子よ」


舞夜の目が少しだけ大きくなる。


「……ありがとうございます」


妙子も笑った。


「いつでも遊びに来ていいからね」


「本当ですか?」


「もちろん」


そして、少し考えてから続ける。


「それに……」


「はい?」


「次は、一緒に何か作ろうよ」


舞夜の表情が明るくなる。


「……ぜひ、お願いします」


その時。


廊下から足音が聞こえてきた。


大樹がリビングへ戻ってくる。


「終わったよ」


俺はそこで足を止めた。


二人の様子を見る。


「……何の話をしてたんだ?」


霞と妙子が顔を見合わせる。


「何でもないわ」


霞が答えた。


「何でもない?」


「女の子同士の話だよ」


妙子が付け加える。


「……それ、すごく怪しいんだけど」


俺が眉をひそめると、舞夜が笑った。


「大丈夫ですよ」


「本当に?」


「はい」


舞夜は穏やかな笑顔で俺を見る。


その表情は、さっきまでとは少し違っていた。


もう、ただ大樹の家を訪ねているだけではない。


初めて来たこの家に――。


自分の居場所が、小さく一つできたような気がしていた。


そして、それは舞夜が思っていた以上に、大切なことだった。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


舞夜は、ついに自分の気持ちを霞に伝えました。


そして、南家にも少しずつ居場所ができていきます。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。