最高のプレゼント
プレゼントを交換したあとも、俺たちは小さな木のイルミネーションの下に座っていた。
どちらも、すぐに帰ろうとは思っていないようだった。
舞夜は、さっきもらったばかりのブレスレットを眺めている。
「……本当に気に入ってくれましたか?」
「うん。すごく」
「よかったです」
「俺も、舞夜のプレゼント気に入ってる」
舞夜が手首を持ち上げる。
小さな金属プレートが、白い光を受けて淡く輝いた。
「これで、一緒に身につけられますね」
「そうだな」
「これを見るたびに……」
「今年のクリスマスを思い出す」
舞夜が笑った。
「……そうです」
数秒間、俺たちは黙っていた。
再び風が吹き、乾いた葉が道の上を静かに横切っていく。
「大樹くん」
「ん?」
「一つ、お願いしてもいいですか?」
「もちろん」
舞夜は少し迷った。
それから、ゆっくりと手を差し出す。
「……もう少し、このまま歩きませんか?」
俺たちの手を見る。
「いいよ」
俺たちはベンチから立ち上がり、そのまま手を繋いで歩き始めた。
街は、さっきよりずっと静かになっていた。
イルミネーションはまだ通りを照らしている。
いくつかの店も、まだ営業していた。
「ねえ、大樹くん」
「ん?」
「私、大樹くんへのプレゼントを探していた時、何を考えていたと思いますか?」
「何だろう」
「ずっと大切にしてもらえるものを贈りたいって思ってました」
「ちゃんと叶ってるよ」
「本当ですか?」
「うん」
舞夜は嬉しそうに笑う。
「大樹くんは?」
「俺も、まったく同じことを考えてた」
「……じゃあ、私たちって、やっぱり似てるのかもしれませんね」
「最初から、そんなに違うとは思ってないけど」
俺たちはそのまま歩き続けた。
しばらくすると、イルミネーションで飾られた小さな通りに出た。
舞夜が足を止める。
「待ってください」
「どうした?」
「もう一枚、写真を撮りたいです」
「また?」
「はい」
「今日、何枚撮るつもりなんだ?」
「十分な枚数です」
「それ、枚数になってないだろ」
「だからいいんです」
舞夜がスマートフォンを取り出す。
今度は、特別な場所を探すこともしなかった。
ただ、二人でイルミネーションの下に立つ。
舞夜がスマートフォンを近づけた。
「笑ってください」
「もう笑ってる」
「もう少しです」
「どういう意味だよ」
「ちょっと真面目すぎます」
「これが俺の顔なんだけど」
「じゃあ、顔を変えてください」
「そんな簡単にできるか」
舞夜が笑い始める。
その瞬間。
カシャッ。
シャッター音が響いた。
「どうだった?」
俺が聞く。
舞夜は画面を確認した。
「……完璧です」
「本当に?」
「はい」
舞夜が写真を見せてくれる。
そこには、イルミネーションの下で笑っている俺たちが写っていた。
綺麗なポーズを決めているわけじゃない。
カメラをまっすぐ見ているわけでもない。
ただ、二人とも笑っている。
だからこそ、俺はその写真が気に入った。
「うん」
「気に入りました?」
「これ、いいな」
「保存しておきます」
「いつものことだな」
「はい」
俺たちは再び歩き始めた。
数分後。
気づけば、また駅へ戻ってきていた。
舞夜の電車が、もうすぐ到着する。
改札の前で、俺たちは立ち止まった。
「……夜って、あっという間ですね」
「そうだな」
「もう少し一緒にいたかったです」
「俺も」
舞夜は線路のほうを見つめる。
そして、もう一度俺を見る。
「でも、まだ冬休みは始まったばかりです」
「そうだな」
「だから……」
舞夜が少しだけ笑った。
「また、一緒に出かけられますよね?」
「いつでも」
舞夜の顔が明るくなる。
「じゃあ、今日が今年最後のクリスマスのお出かけにはなりませんね」
「もちろん」
その時、電車がホームへ入ってきた。
舞夜が乗り込む前に、俺の手をそっと握る。
「今日は、ありがとうございました」
「俺も、ありがとう」
「それから……プレゼントも」
「どういたしまして」
「大切にします」
「俺も」
舞夜は電車に乗り込んだ。
そして、ドアが閉まる直前。
手首を少し持ち上げる。
イルミネーションに照らされて、ブレスレットが輝いた。
俺も自分の手首を持ち上げる。
舞夜が笑った。
やがて、ドアが閉まる。
電車がゆっくりと動き始めた。
俺は、舞夜の姿が見えなくなるまで見送った。
そして、自分の手首へ視線を落とす。
小さな刻印は、まだそこにあった。
『また一緒に』
思わず笑みがこぼれる。
たぶん、これが俺たちのプレゼントに込めた本当の意味だった。
ただのアクセサリーじゃない。
これからも一緒に思い出を作っていくための――。
小さな約束。
家へ向かって歩きながら、俺は思った。
クリスマスは、まだ終わっていない。
それでも俺には、もう一つ。
絶対に忘れたくない思い出ができていた。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
二人のクリスマスは、忘れられない思い出になりました。
そして、二人の小さな約束も始まります。
次回もお楽しみに!




