↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/321

予想外の誘い

日々は、あっという間に過ぎていった。


街のあちこちには、クリスマスの飾りが少しずつ増えている。


学校も例外ではなかった。


校舎のロビーの窓には、小さな冬の飾りが並べられ、大きなクリスマスツリーは、多くの生徒たちが写真を撮るお気に入りの場所になっていた。


「どうしてみんな、あそこで写真を撮りたがるんだ?」


俺がそう言うと、舞夜が答えた。


「綺麗だからです」


「ただのツリーだろ」


「飾り付けされたツリーです」


「それでもツリーじゃないか」


舞夜は小さくため息をついた。


「大樹くんって、本当にそういうところありますよね」


「どういうところだよ」


「……説明するのが難しいところです」


「それ、褒めてないよな?」


舞夜は少しだけ笑った。


昼休み。


俺たちがいつものように昼食を食べていると、結衣が大きな笑顔で弁当箱を置いた。


「私、冬休みに何するか決めた!」


「何するの?」


麻美が尋ねる。


「出かける!」


「それだけじゃ何も分からないんだけど」


美子が呆れたように言った。


「クリスマスイルミネーションを見に行くの!」


「今年はかなり多いらしいね」


麻美が言う。


「でしょ? だからこそ行くの!」


結衣はそう言って、ゆっくりと俺たちのほうへ顔を向けた。


「それで、大樹と舞夜は?」


「俺たちはまだ決めてないけど」


俺が答えると、結衣は残念そうな顔をした。


「それは残念だなぁ」


「なんで?」


「だって、イルミネーションって特別な人と一緒に見ると、もっと綺麗に見えるらしいよ?」


舞夜の箸が、危うく落ちそうになった。


「結衣!」


「何?」


「誰もそんな情報、聞いてませんよ!」


「でも大事な情報じゃない?」


「全然大事じゃないです!」


「そうかな?」


「そうです!」


結衣は楽しそうに笑った。


やがて、俺たちの周りにも笑い声が広がっていった。


昼休みが終わり、教室へ戻る。


周りの生徒たちが話をしている中、舞夜は一人、窓の外を眺めていた。


何かを考えているようだった。


俺が声をかけようとしたところで、最後の授業が終わった。


帰りの支度をしていると、隣から声が聞こえた。


「大樹くん」


「ん?」


舞夜は両手で鞄の肩紐を握っていた。


「少し聞いてもいいですか?」


「もちろん」


舞夜は数秒間、視線を別の方向へ向けた。


そして、少しだけ迷ったように口を開く。


「……大樹くんは、クリスマスのイルミネーションって好きですか?」


「考えたことなかったな」


「それ、答えになってませんよ」


「じゃあ……たぶん好きだと思う」


舞夜はゆっくりとうなずいた。


「そうですか」


俺たちは並んで教室を出た。


「どうして聞いたんだ?」


「……なんとなくです」


「またその答えか」


「何か問題でもありますか?」


「最近、舞夜の『なんとなく』は危険な気がしてきた」


舞夜は小さく笑った。


「そうかもしれませんね」


校門を出る。


冷たい風が吹き、生徒たちはみんなポケットに手を入れて歩いていた。


街の店先では、少しずつイルミネーションが灯り始めている。


しばらくの間、俺たちは何も話さなかった。


そして、舞夜が突然足を止めた。


「大樹くん」


「どうした?」


舞夜は深く息を吸った。


「……一緒に、クリスマスのイルミネーションを見に行きませんか?」


一瞬、何を言われたのか分からなかった。


「イルミネーション?」


「はい」


「二人で?」


俺が聞くと、舞夜は大きく目を見開いた。


「そ、そういう言い方しなくてもいいじゃないですか!」


「いや、ただ確認しただけだろ」


「……その……」


舞夜は少しだけ視線を落とした。


「はい。二人で……です」


思わず笑みがこぼれた。


「行きたい」


「……本当ですか?」


「うん」


さっきまで緊張していた舞夜の表情が、一気に明るくなった。


「じゃあ……よかったです」


その笑顔を見ていると、俺まで嬉しくなってくる。


俺たちは再び歩き始めた。


けれど、さっきまでとは少しだけ空気が違っていた。


舞夜の笑顔が、どうしても隠しきれていなかったからだ。


駅に着くと、舞夜が俺のほうを振り返った。


「それじゃあ、今週末ですね」


「分かった」


「遅刻しないでくださいね」


「俺、遅刻したことないだろ」


「それは当日になってみないと分かりません」


「信用ないな……」


舞夜はくすっと笑いながら、ホームへ向かって歩いていく。


しかし、数歩進んだところで、また振り返った。


「大樹くん」


「ん?」


「……デートじゃないですからね」


「分かってる」


「本当にですよ?」


「分かってるって」


「じゃあ……笑うのやめてください」


「笑ってないけど」


「笑ってます」


舞夜はとうとう声を出して笑った。


「……また明日です」


「また明日」


舞夜は電車に乗り込み、人の中へ消えていった。


俺もそのまま家へ向かう。


けれど、歩きながら何度も思い出してしまった。


――デートじゃないですからね。


その言葉を聞いて、俺が最初に思い出したのは、やっぱりあの日だった。


俺たちの最初の「ノーデート」。


そして、これまでのことを考えると……。


今回も、きっと同じようなことになる気がする。


ただ、この時の俺はまだ知らなかった。


駅の反対側。


一本の柱の陰に隠れて、俺たちの会話を最初から最後まで見ていた人物がいたことを。


「……やっぱりね」


結衣だった。


結衣は満足そうに笑いながら、スマートフォンを取り出す。


そして、グループチャットへ一通のメッセージを送った。


『クリスマス作戦、開始!』


その笑顔を見た瞬間。


俺はまだ知らなかった。


この先、また面倒なことが始まるということを。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


ついに大樹と舞夜が、二人でクリスマスイルミネーションを見に行くことになりました。


もちろん、舞夜は「デートじゃない」と言っています。


ですが……これまでの二人を考えると、今回も普通の「ノーデート」では終わらなさそうですね。


そして、すべてを目撃していた結衣まで動き始めました。


果たして、クリスマスの夜に二人を待っているものとは?


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


評価、ブックマーク、感想なども大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。