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まだ空っぽのアルバム

夜の帳が、街を包んでいた。


家に帰った俺は、机の横にバッグを置き、そのままベッドに腰を下ろした。


長い一日だった。


でも、眠る前にふと思い出したことがあった。


俺はスマートフォンを取り出す。


そして、机の引き出しを開けた。


そこには、俺にとって大切なものがいくつか入っている。


その中に――。


写真があった。


俺は一枚ずつ、机の上に並べていく。


最初の一枚は、京都。


修学旅行で撮った写真だ。


二枚目は、体育祭。


みんなで変な顔をして写っている。


そして、その次にあったのは――。


俺たちのノーデートの日に撮った写真。


カメラに向かって笑っている、俺と舞夜。


最後の一枚は――。


文化展示会の準備中に撮った写真だった。


学校の窓辺に並んで立っている俺たち。


俺は、その写真をしばらく眺めた。


他の誰かにとっては、特別な写真じゃないのかもしれない。


でも、俺にとっては違う。


一枚一枚が、それぞれ違う時間を表している。


京都は、始まりだった。


体育祭では、俺たちの距離が少し近づいた。


ノーデートでは、特別な理由がなくても一緒に午後を過ごせることを知った。


そして、舞夜が感じた嫉妬によって――。


俺は、それまで認めようとしていなかった気持ちに気づかされた。


文化展示会は、さらに違っていた。


もう、俺たちは一緒にいるための理由を必要としなくなっていた。


ただ、一緒にいたい。


それだけだった。


俺はノーデートの日の写真を手に取る。


そして、少し笑った。


「……ずいぶん、思い出が増えたな」


その時、スマートフォンが振動した。


メッセージが届いている。


舞夜からだった。


『もう家に着きましたか?』


俺はすぐに返信する。


『うん。舞夜は?』


数秒後。


返事が届いた。


『私も、今帰ったところです』


少しの間、画面を見つめていると――。


もう一通、メッセージが届いた。


『今日の写真を見ていました』


俺は思わず笑う。


『俺も見てた』


『私たち、写真がたくさんありますね』


『これから、もっと増えるだろ』


数秒が過ぎる。


そして、舞夜から返事が来た。


『……そうだと嬉しいです』


俺は、その言葉をしばらく見つめていた。


どうして、こんなに簡単な一言だけで嬉しくなるのか。


自分でもよく分からなかった。


俺は少し考えてから、メッセージを送る。


『舞夜は、この巻で一番好きな思い出ってある?』


返事が来るまで、少し時間がかかった。


やがて――。


『一つには選べません』


『どうして?』


『全部に、それぞれ大切なものがあるからです』


そして、少し間を置いてから、もう一通。


『でも……ただ一緒にいる時間が、一番好きかもしれません』


俺は、そのメッセージを何度も読み返した。


心臓が、少しだけ速くなる。


『俺もだよ』


そう返信する。


画面が静かになった。


数秒後。


最後のメッセージが届く。


『おやすみなさい、大樹くん』


『おやすみ、舞夜』


俺はスマートフォンを机の上に置いた。


そして、もう一度写真を見る。


俺が少しずつ集めているアルバムには、まだたくさんの空白が残っている。


でも――。


今は、それが不思議だとは思わなかった。


むしろ、楽しみだった。


だって、それは――。


これから作る思い出が、まだたくさん残っているということだから。


きっと別の場所で、舞夜も同じように写真を眺めているのだろう。


俺たちの写真を見ながら、笑って。


そして、次に一緒に過ごす日を考えている。


俺たちは、まだ自分たちがどういう関係なのか、はっきりと言葉にできていない。


もしかしたら、最後の一歩もまだ踏み出していないのかもしれない。


それでも――。


もう、そのことを怖いとは思わなかった。


今なら分かる。


俺は、俺たちの物語を急ぎたくない。


一日ずつ。


一枚の写真ずつ。


一つの思い出ずつ。


その時間を、ちゃんと生きていきたい。


そう思いながら、俺は最後にもう一度写真を眺めた。


そして、引き出しをゆっくり閉じる。


ふと思った。


もしかしたら――。


俺たちの本当の物語が始まったのは、京都じゃなかったのかもしれない。


体育祭でもない。


最初のノーデートでもない。


もっと前から始まっていた。


何気ない会話。


ふとした笑顔。


そして、もう少しだけ一緒にいたいと、お互いが何度も思った瞬間。


そんな小さな出来事の一つ一つが、今へと繋がっていた。


もし、このアルバムにまだたくさんの空白があるのなら――。


それはきっと、一つのことを意味している。


俺たちの物語は、まだまだ終わらない。


これから先も――。


新しいページを、二人で増やしていけるのだから。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


これまでの思い出を振り返りながら、これからの未来を楽しみにする大樹。


まだ空っぽのページがたくさん残っているアルバムには、これからどんな思い出が刻まれていくのでしょうか。


二人の物語は、まだ続いていきます。


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


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