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文化展示会の日

ついに、文化展示会の日がやってきた。


朝早くから、学校は生徒や先生、そして訪れた人たちで賑わっていた。


廊下には色とりどりの看板が飾られ、各教室も普段とはまったく違う姿に変わっている。


俺たちのクラスも、なんとか予定通りに展示を完成させることができた。


教室のかなりのスペースを使って作ったのは、小さな伝統的な街並み。


段ボールで作った建物。


小さな提灯。


そして、あの橋。


さらに、それぞれの場所に名前を書いた小さな看板まで取り付けてある。


「本当に、完成したんですね……」


舞夜が感慨深そうに呟いた。


「俺も、まだ少し信じられないよ」


教室を見回す。


何日もかけて、舞夜と一緒に作業してきた。


だからこそ、こうして完成したものを見ると、不思議な気持ちになる。


「すごく綺麗にできてるね」


麻美が展示を眺めながら言った。


「特に、この橋」


その後ろから結衣が顔を出す。


「当然でしょ」


「だって、大樹と舞夜が一番頑張ってたところだから」


舞夜の頬が少し赤くなる。


「みんなで協力して作ったものです」


「はいはい」


結衣が笑う。


「みんなで、ね」


そこへ先生が教室に入ってきた。


「素晴らしい出来だな」


先生は展示全体を見回す。


「これで、あとは来てくれた人たちを案内するだけだ」


そして、いよいよ文化展示会が始まった。


最初の数時間は、他のクラスの生徒たちが次々と俺たちの教室を訪れた。


「これ、どうやって作ったんですか?」


「この建物は誰が設計したんですか?」


「橋の作り方、すごいですね」


いろいろな質問が飛んでくる。


舞夜は一つ一つの質問に、丁寧に答えていた。


俺は橋や建物の細かな部分を説明する。


自然と役割が分かれていて、ほとんど言葉を交わさなくても次に何をすればいいのか分かる。


「二人って、何年も一緒にこういうことやってるみたいだね」


ある生徒が感心したように言った。


「でしょ?」


結衣が横から答える。


「二人とも、かなり息の合ったチームなんだよ」


舞夜が俺を見る。


そして、笑った。


「はい」


「私たちは、いいチームだと思います」


その言葉を聞いて、俺も自然と笑っていた。


午前中は、あっという間に過ぎていった。


ようやく少し休める時間ができたので、俺たちは校庭へ出た。


舞夜はベンチに腰を下ろし、疲れたように息を吐く。


「……疲れました」


「俺も」


「でも……」


舞夜は校舎のほうを振り返った。


「頑張った甲斐はありましたね」


「ああ」


俺たちは、行き交う生徒たちを眺めていた。


「大樹くん」


「ん?」


「この数日間……ありがとうございました」


「どうして?」


「いろいろ手伝ってくれたことです」


舞夜は少しだけ微笑む。


「それに、放課後もずっと残ってくれましたから」


「気にしなくていいよ」


俺は笑った。


「俺も楽しかったから」


「……知っています」


舞夜は嬉しそうに笑う。


「だから、ちゃんと伝えておきたかったんです」


小さな沈黙が流れた。


すると舞夜がスマートフォンを取り出す。


「見てください」


画面に表示されていたのは、あの窓辺で撮った写真だった。


「まだ持ってたのか」


「もちろんです」


「他の写真も全部保存しています」


「今、何枚くらいあるんだ?」


「……それは答えません」


「じゃあ、かなり多いんだな」


「ふふっ……たぶん」


舞夜は笑いながらスマートフォンをしまった。


「でも……写真を見ていて、好きだなと思ったことがあるんです」


「何が?」


「どの写真も、最初から撮るつもりだったわけじゃないことです」


舞夜は指を折りながら話す。


「京都で撮った写真」


「体育祭の写真」


「私たちのノーデートの日の写真」


「そして、今日の写真」


「どれも……自然に生まれた思い出なんです」


俺は舞夜を見る。


「そうだな」


少し考えてから、俺は言った。


「一番いい思い出って、そういうものなのかもしれないな」


舞夜は頷いた。


「はい」


そして、少しだけ遠くを見る。


「……これからも、もっとたくさん作りたいです」


「俺も」


俺たちの視線が重なる。


今度は、どちらも目を逸らさなかった。


「それなら……」


舞夜が静かに言う。


「続けましょう」


「何を?」


「思い出を作ることです」


俺は笑った。


「約束だ」


舞夜が手を差し出す。


俺はその手を取った。


指が自然に絡み合う。


周囲には誰もいない。


もう、隠す必要もなかった。


「大樹くん」


「ん?」


「こうすること……」


舞夜は繋いだ手を見る。


「前ほど恥ずかしくなくなりました」


「手を繋ぐこと?」


「はい」


「俺もだよ」


俺たちはそのまま、しばらく手を繋いでいた。


――その時。


「また!?」


背後から、聞き慣れた声が響いた。


二人同時に振り返る。


そこには、信じられないものを見たような顔をした結衣が立っていた。


「何回言えば分かるの!?」


「私に黙って、そんな恋愛イベントを発生させないでよ!」


舞夜は慌てて手を離した。


「ち、違います!」


「何もしてないから!」


俺も慌てて説明する。


すると結衣が俺たちの手を指差した。


「じゃあ、私が見たものは何!?」


「……」


「私の目がおかしくなったの!?」


そこへ麻美がやってくる。


「もう、二人のことは放っておきなよ」


「でも、これは重要なことだよ!」


その後ろから美子も顔を出す。


「結衣にとっては、何でも重要なんじゃない?」


「そんなことないよ!」


結衣は腕を組んだ。


「でも、いつか絶対に認めるからね」


「何を?」


俺が聞く。


結衣はニヤッと笑った。


「それは……まだ秘密」


そう言って、結衣は他の二人と一緒に歩いていった。


「……もう、無理ですね」


舞夜がため息をつく。


「何が?」


「結衣には、何も隠せません」


「そうだな」


舞夜は少し考える。


「……でも」


そして、小さく笑った。


「もう、そんなに嫌じゃないです」


「俺も」


俺たちは再び、教室の展示へと目を向けた。


始まりは、ただの学校の課題だった。


でも、気づけばそこには、何日も一緒に作業した時間が残っている。


一緒に笑ったこと。


手を重ねたこと。


写真に残したこと。


そして、これからも増えていくであろう思い出。


俺は舞夜と並んで教室へ戻りながら考えていた。


たぶん――。


俺が舞夜と一緒にいることを好きなのは、特別な出来事があるからじゃない。


大きな事件も、劇的な言葉も必要ない。


ただ、一緒に歩いていればいい。


そうしていれば――。


きっと、残りの思い出も自然と増えていくのだから。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


文化展示会を通して、また一つ大切な思い出を作った大樹と舞夜。


「ノーデート」から始まった二人の時間は、少しずつ日常へと変わり始めています。


これから二人にどんな思い出が待っているのでしょうか?


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


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