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奇妙な感覚

午前中の残りの授業も、俺は集中しようと努めていた。


けれど――。


何かが変わっていた。


莉奈が大樹と話すたびに、舞夜は無意識に二人へ視線を向けてしまう。


別に心配しているわけではない。


腹を立てているわけでもない。


ただ……。


なぜか気になってしまう。


「舞夜」


結衣の声で、舞夜は我に返った。


「はい?」


「この五分で、もう三回もあっちを見てるよ」


「……どこを?」


結衣がさりげなく大樹のほうを指差す。


大樹は莉奈と学校の書類について話していた。


舞夜はすぐに視線を逸らした。


「……ただ見ていただけです」


「はいはい」


「本当にそうです」


「私は何も言ってないよ」


結衣は笑った。


「でも、せっかくだから聞いてみようかな」


舞夜は少し警戒する。


「何ですか?」


「新しい子、可愛いと思わない?」


「……はい」


「優しそうだよね?」


「そうですね」


「大樹とも仲良さそうじゃない?」


舞夜は黙り込んだ。


「……はい」


結衣の笑顔がさらに大きくなる。


「じゃあ――」


「それだけです」


舞夜が遮った。


「何もありませんから」


「分かった、分かった」


結衣は両手を上げる。


「何も言わないよ」


「ありがとうございます」


二人の間に、しばらく沈黙が流れた。


その時――。


莉奈が俺たちのところへやってきた。


「すみません」


彼女は少し遠慮がちに尋ねる。


「お昼、一緒に座ってもいいですか?」


「もちろん」


麻美が答えた。


「全然いいよ」


莉奈は嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます」


昼休み。


俺たちは一緒に昼食を食べながら、穏やかに話をしていた。


莉奈は以前通っていた学校のことを話し、俺たちは学校の部活動について教えてあげた。


そんな中――。


結衣が突然、質問をした。


「ねえ、莉奈」


「はい?」


「彼氏っているの?」


舞夜の箸が、危うく手から落ちそうになった。


「結衣!」


「え? ただ聞いただけじゃん」


莉奈は驚いたように瞬きをした。


そして、小さく笑った。


「はい。いますよ」


その場に、一瞬だけ沈黙が落ちた。


「本当に?」


麻美が尋ねる。


「はい」


莉奈は頷いた。


「別の学校ですけど、かなり前から付き合っています」


舞夜は完全に動きを止めていた。


「……そうなんですか」


「どうしました?」


莉奈が不思議そうに尋ねる。


「いえ」


舞夜はすぐに笑顔を作った。


「おめでとうございます」


「ありがとうございます」


莉奈はスマートフォンを取り出し、小さな写真を見せてくれた。


「実は今週末、彼にプレゼントを買おうと思っているんです」


「素敵ですね」


美子が微笑む。


その横で、結衣はちらりと舞夜を見る。


舞夜はその写真を見つめていた。


どこか複雑そうな表情だった。


数秒後、結衣が舞夜へ身を寄せる。


「大丈夫?」


「はい。大丈夫です」


「なんだか驚いてるみたいだけど」


「ただ……」


舞夜は少し間を置いた。


「彼氏がいるとは知りませんでした」


「今は分かったでしょ?」


「はい」


舞夜はもう一度箸を持つ。


「それなら、何も問題ありません」


結衣が笑う。


「……何の問題?」


「何もありません」


「私も、問題があるなんて言ってないけど?」


舞夜は黙り込んだ。


自分でも、よく分からなかった。


莉奈に彼氏がいると知る前は――。


彼女が大樹と話しているのを見るたびに、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。


けれど、彼女に恋人がいると分かった今なら、その感覚は消えるはずだった。


なのに――。


消えなかった。


「……変ですね」


舞夜が小さく呟く。


「何が?」


結衣が聞き返す。


「いえ……何でもありません」


舞夜は再び大樹のほうを見る。


大樹は、莉奈と普通に話している。


会話に恋愛的な雰囲気なんてない。


特別なこともない。


それなのに――。


舞夜の胸には、また小さなざわめきが生まれた。


「……どうして?」


舞夜は心の中で呟いた。


こんなのおかしい。


私は、嫉妬なんてしているはずがない。


だって――。


莉奈には、もう恋人がいる。


それなのに、どうして私は――。


こんな気持ちになってしまうのだろう。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


新しいクラスメイト・莉奈の登場で、舞夜の中に生まれた不思議な感情。


「嫉妬じゃない」と思いながらも、なぜか気になってしまう舞夜。


果たして、この気持ちの正体とは――?


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。

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