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新しいクラスメイト

翌週の月曜日。


学校は、いつもの日常に戻っていた。


ただ、俺にとっては少しだけ違っていた。


ノートの中にしまってある、あのインスタント写真を見るたびに、土曜日のことを思い出してしまう。


俺たちの「ノーデート」。


思い出すだけで、今でも自然と笑みがこぼれた。


「何見てるんだ?」


松の声が聞こえ、俺は慌ててノートを閉じた。


「何でもない」


「ずいぶん大切そうだったけど?」


「ただの写真だよ」


「舞夜の?」


俺は黙り込んだ。


松がニヤリと笑う。


「なるほどな」


「何も分かってないだろ」


「はいはい」


俺が言い返すより先に、先生が教室へ入ってきた。


「おはよう。今日は新しいクラスメイトを紹介する」


教室中の会話が止まった。


そして、扉が開く。


一人の女子生徒が教室へ入ってきた。


明るい茶色の髪を半分ほどまとめていて、穏やかな表情をしている。


「おはようございます」


彼女は教室を見渡した。


「秋山莉奈です。これからよろしくお願いします」


「秋山さんは、あそこの席に座ってくれ」


先生が、俺の数列後ろにある空席を指差した。


「はい」


莉奈は自分の席まで歩いていき、荷物を置いた。


一時間目は、特に何も起こらなかった。


けれど――。


休み時間になると、莉奈が俺の机までやってきた。


「すみません」


顔を上げる。


「どうした?」


「少し、お願いしてもいいですか?」


「もちろん」


「まだ学校のことをよく知らなくて……」


莉奈は少し困ったように笑った。


「図書室がどこにあるか、教えてもらえませんか?」


「図書室?」


「はい」


「第二校舎の一番奥だよ」


「第二校舎?」


「うん。よかったら案内するけど」


「本当ですか? 助かります」


俺は立ち上がり、莉奈と一緒に教室を出た。


廊下を歩きながら、莉奈はいくつかの教室や部活動について質問してきた。


どれも普通の質問だった。


「ありがとうございます」


図書室に到着すると、莉奈が頭を下げた。


「助かりました」


「気にしなくていいよ」


「大樹くんって、優しいんですね」


「これくらい、別に大したことじゃないよ」


莉奈は微笑んだ。


「それでも、ありがとうございます」


俺はそのまま教室へ戻った。


――ただ。


俺は気づいていなかった。


自分の席から、舞夜がそのやり取りをずっと見ていたことに。


そして――。


結衣が、そんな舞夜の様子を見ていたことにも。


「ふーん……」


結衣が小さく呟く。


舞夜が顔を上げた。


「何ですか?」


「ううん、何でもない」


「また、その顔をしていますよ」


「どんな顔?」


「何かを考えすぎている時の顔です」


舞夜は、大樹がさっき出ていった教室の扉を見る。


「……何も考えていません」


「そう?」


結衣はニヤリと笑った。


「じゃあ、大樹が新しい子と一緒にいることも、気にならないんだ?」


舞夜の動きが、一瞬だけ止まった。


「……どうして私が気にするんですか?」


「さあ?」


結衣は肩をすくめる。


「ただ聞いただけ」


「それに、まだ転校してきたばかりですから」


舞夜はすぐに続けた。


「きっと学校のことを知らなくて困っているんでしょう」


「そうだね」


「だから、大樹くんが案内しただけです」


「うんうん」


結衣は笑った。


「その通りだね」


舞夜は目の前にある本へ視線を戻した。


読もうとする。


けれど――。


なぜか、視線が何度も教室の扉へ向かってしまう。


どうしてなのか、自分でも分からない。


別に、大したことではない。


大樹が新しいクラスメイトを助けただけ。


それだけのこと。


なのに――。


しばらくして大樹が教室へ戻ってきた。


そして、その数秒後。


莉奈も教室へ入ってくる。


その瞬間、舞夜の胸に小さな違和感が生まれた。


「……変ですね」


舞夜は小さく呟いた。


すぐ隣で結衣が聞き返す。


「何が?」


舞夜は慌てて首を横に振った。


「何でもありません」


きっと、何でもない。


大樹はただ、新しいクラスメイトを助けただけだ。


それだけなのだから。


――少なくとも、舞夜はそう思いたかった。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


新しいクラスメイト・秋山莉奈が登場しました。


そして、少しだけ気になり始めた舞夜の気持ち。

果たして、この小さな違和感は何を意味するのでしょうか?


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。

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