練習開始
放課後、俺たちのチームは学校の裏庭に集まった。
先生からは、この一週間を使って体育祭の各競技を練習するように言われている。
小林が競技の一覧表を持っていた。
「えっと……」
小林が紙を確認する。
「リレー、ボール投げ、障害物競走、それから宝探しか」
佐藤がため息をついた。
「宝探しは、まだルールがはっきりしてないんだよな」
「先生が当日に説明するって言ってたからな」
俺が答える。
「じゃあ、それ以外を練習しよう」
舞夜が頷いた。
「賛成です」
まずはリレーから始めることになった。
最初は小林。
次に佐藤。
その次が舞夜。
そして最後が俺だ。
「位置について!」
小林の掛け声とともに、俺たちは構えた。
「よーい!」
そして――。
練習が始まった。
小林はかなり速い。
佐藤もその勢いを落とさずにバトンを受け取る。
そして、舞夜の番が来た。
「頑張れ、舞夜!」
俺が声をかける。
舞夜はさらに速度を上げ、隣のコースで練習していたチームとの差を少しずつ縮めていった。
そして最後に――。
俺へバトンが渡される。
「大樹!」
「任せろ!」
俺はバトンを受け取り、そのまま走り出した。
ゴールを通過したところで、俺は大きく息を吐いた。
「悪くなかったな」
佐藤が言う。
「もっと練習すれば、まだ良くなる」
小林も頷いた。
舞夜が息を整えながら、俺のところへ近づいてくる。
「大丈夫ですか?」
「ああ。
ちょっと疲れただけだ」
「それなら、どうぞ」
舞夜が水の入ったボトルを差し出してくれた。
「ありがとう」
「いえ」
俺は少し水を飲んでから、ボトルを舞夜へ返した。
「なあ」
俺はみんなを見る。
「リレーは、もう少し練習したほうがいいと思う」
「どうして?」
小林が尋ねる。
「だって、大樹がこの調子で走るなら――」
佐藤が俺を見る。
「大樹の番になる前に、かなり差をつけておかないと勝てないだろ」
「おい!」
全員が笑い出した。
俺も思わず苦笑する。
そんなふうに休憩していると、メインのグラウンドから声が聞こえてきた。
「大樹!」
振り返る。
そこには、麻美と美子を連れた結衣がいた。
「もう練習してるの?」
「ああ」
俺が答える。
結衣は舞夜を見る。
それから俺を見る。
そして最後に――。
さっき舞夜が渡してくれた水のボトルを見た。
結衣の顔に、すぐに意味ありげな笑みが浮かんだ。
「へえー。
優しいね」
「その顔は何なんだよ?」
俺が尋ねる。
「別に」
結衣は笑う。
「ただ観察してるだけ」
「観察するなよ」
「無理。
面白すぎるから」
舞夜の顔が少し赤くなった。
「結衣、もう……」
「分かった、分かった」
結衣は両手を上げる。
そして、グラウンドのほうを指差した。
「私たちも練習なんだから。
まあ、麻美がちょっと本気になりすぎてる気がするけど」
「私が?」
麻美が首を傾げる。
「そうだよ!
さっきの競走、私をほとんど倒しかけたじゃん!」
「それは本気でやっただけ」
美子が小さくため息をついた。
「あなたたち二人には、誰かが付き添ったほうがいいと思います」
結衣たちは笑いながら、その場を離れていった。
しばらくして、松が何枚かのプリントを持ってやってきた。
「先生からだ。
各チームで宝探しの作戦を考えておけって」
「でも、まだ指令の内容が分からないだろ」
俺が言う。
「だからこそだよ」
松は真面目な顔で答えた。
「どんな内容でも対応できるように準備しておくんだ」
俺は舞夜を見る。
「舞夜は、どんな指令になると思う?」
舞夜は少し考えた。
「何か物を探すものかもしれません」
「なるほど」
「あるいは、質問に答えるとか」
「それもありそうだな」
舞夜はさらに考える。
「もしかしたら、人を探す必要があるかもしれません」
「それは難しそうだな」
「どうしてですか?」
舞夜が少し首を傾げる。
俺は黙った。
なぜか、先生が言っていた言葉を思い出した。
『各チームには、特別な指令が書かれたカードを一枚渡す』
どうしてだろう。
俺は何となく――。
この宝探しは、思っている以上に面倒なものになる気がしていた。
「大樹」
舞夜の声で、俺は我に返った。
「ん?」
「何か考え込んでいましたよ」
「ああ。
大したことじゃない」
俺は笑った。
「どんな指令が来るのか、想像してただけだ」
舞夜も微笑む。
「それなら、一緒に解決しましょう」
俺は頷いた。
「ああ」
――一緒に。
そのまま俺たちは練習を続けた。
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
まさか、この宝探しで――。
たった一枚の紙に書かれた、ほんの一言が。
体育祭でもっとも恥ずかしい瞬間の一つを、俺たちにもたらすことになるなんて。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
体育祭に向けた練習が、いよいよ始まりました。
そして、大樹たちのチームを待っている「特別な指令」とは――?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも応援よろしくお願いします!




