一週間の準備期間
体育祭の知らせによって、学校の雰囲気はすっかり変わっていた。
休み時間になると、生徒たちは競技について話している。
すでに練習を始めている者もいれば、絶対に出たくない競技について話し合っている者もいた。
そしてもちろん――。
こういう行事になると、必要以上に本気になる連中もいる。
「大樹!」
松の声に、俺は顔を上げた。
「どうした?」
「先生が競技を割り振ってるぞ」
前を見ると、先生が一枚のリストを手にしていた。
「知っていると思うが、体育祭は来週だ。
各クラスはいくつかの競技に参加することになる」
教室のあちこちから声が上がる。
「そして、今年は特別競技として、チーム対抗の宝探しも行う」
教室に期待するようなざわめきが広がった。
「チームはランダムに決める。
それから、一度決まったチームの変更は認めない」
「えっ、ランダム!?」
悠真が声を上げた。
「ってことは、走れない奴と組む可能性もあるってことか?」
「それって、お前が誰かに運んでもらうことになる可能性が高いってことだろ」
恒一が返した。
教室中に笑い声が広がった。
先生はそのまま用紙を配っていく。
「さらに、各チームには特別な指令が書かれたカードを一枚渡す。
集合地点へ戻る前に、その指令を達成してもらう」
「どんな指令ですか?」
麻美が尋ねた。
「それは体育祭当日までのお楽しみだ」
今度は結衣が手を挙げた。
「先生!」
「何だ?」
「私、大樹と同じチームになってもいいですか?」
教室が静まり返った。
先生が結衣を見る。
「だから、チームはランダムだと言っただろう」
「残念」
結衣は胸に手を当て、わざと悲しそうな顔をする。
「でも……」
ちらりと舞夜を見る。
「もしかしたら、運命が仕事をしてくれるかもしれないよ」
舞夜の顔が一瞬で赤くなった。
「結衣……」
「何?
ただ、そうなったら面白いなって言ってるだけ」
「もう……やめて」
俺は二人の会話を聞かないふりをしながら、先生の説明に集中しようとした。
そして――。
ついにチームの用紙が配られた。
その時、俺の名前が聞こえてきた。
「第三チーム」
先生が読み上げる。
「南大樹。
八神舞夜。
小林。
そして佐藤」
俺は顔を上げた。
舞夜も同時にこちらを見る。
目が合った。
「また一緒になりましたね」
彼女が小さく微笑む。
「ああ。
運が良かったな」
その瞬間、教室の反対側から結衣の声が響いた。
「また!?」
先生が驚いて振り返る。
「田中、声が大きいぞ」
「だって、もうこれは多すぎません!?」
教室中から笑い声が起こった。
舞夜は両手で顔を隠した。
「気にしないでください」
「そうしたいんだけどな」
俺も苦笑する。
休み時間になると、結衣が俺たちの席へやって来た。
「もう偶然では済まされないよ」
「いや、偶然だろ」
「違う。
絶対に違う」
そこへ松が後ろから現れた。
「結衣、もう二人を放っておけよ」
「ただ観察してるだけだよ」
「京都から帰ってきてからずっと観察してるじゃないか」
結衣は少し考え込む。
「……確かに」
そして、何かを納得したように頷いた。
「じゃあ、もっと観察しないとね」
「そういう意味じゃない」
松が呆れたように返した。
舞夜が小さく笑った。
俺もつられて笑ってしまう。
その後、先生は体育祭に向けた最初の準備について説明を始めた。
各チームは放課後に集まり、練習や作戦を考える必要があるらしい。
俺は目の前の用紙を見つめた。
体育祭まで、まだ一週間ある。
それなのに――。
なぜか、あの体育祭は思っていた以上に面倒なものになりそうな気がしていた。
特に、結衣が近くにいるならなおさらだ。
そして、クラスメイトと話している舞夜の笑顔を見ながら――。
もしかすると。
それも、そんなに悪いことではないのかもしれない。
俺はそう思った。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
体育祭のチームも決まり、いよいよ準備が始まります。
大樹と舞夜を待っている新しい思い出とは――?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも応援よろしくお願いします!




