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最後の夜のサプライズ

部屋に荷物を置いた後、俺たちは食堂へ降りるまでの数分間、少し休むことにした。


小林が真っ先にベッドへ倒れ込む。


「もう二度と動きたくない……」


「三十分前まで、公園中を走り回ってただろ」


佐藤が呆れたように言う。


「俺の体力は、座った瞬間にゼロになるんだよ」


松が小さく笑いながら、買ったお土産をテーブルの上に並べていく。


「明日の朝、早く起きなきゃいけないんだから、もっと文句を言うことになるぞ」


「それを今、思い出させないでくれ……」


俺は窓際に座り、街の明かりを眺めていた。


すっかり夜になった京都の街。


なぜだろう。


今夜のホテルは、いつもと少し違って見えた。


きっと、ここで過ごす最後の夜だと、みんなが分かっているからだ。


「何考えてるんだ?」


松が尋ねてくる。


「旅行が、あっという間に終わったなって」


松もゆっくり頷いた。


「そうだな。始まる前は、長い旅行になりそうだと思ってたのに」


俺たちは数秒間、黙っていた。


すると突然、小林が勢いよく起き上がった。


「……もういい! 感傷に浸るのはやめよう。腹減った!」


「そこだけは、いつも変わらないな」


佐藤が笑う。


それから少しして、俺たちは四人で食堂へ向かった。


食堂は、今日一日の出来事を楽しそうに話す生徒たちでいっぱいだった。


奥のテーブルでは、舞夜、結衣、麻美、美子の四人がすでに座っている。


結衣が反対側から大げさに手を振った。


「こっちこっち!」


「……どうして、まだあんなに元気なんだ」


俺が呟く。


「科学者でも説明できないだろうな」


松が答えた。


俺たちはテーブルへ近づき、それぞれ席に着いた。


「遅いよ」


結衣が言う。


「決められた時間ぴったりだろ」


俺が返す。


「細かいことは気にしない!」


舞夜が小さく笑った。


「少し休めましたか?」


「小林なんて、寝落ちする寸前だったよ」


佐藤が答える。


「それは濡れ衣だ!」


「俺たち、寝言まで聞いてたぞ」


「それはもっと恥ずかしいだろ!」


またテーブルに笑い声が広がった。


夕食を食べながら、話題は次々と変わっていった。


買ったお土産の話。


撮った写真の話。


そして、今回の旅行で一番気に入った場所の話。


「私は、やっぱり展望台が一番好きでした」


舞夜がお茶を飲みながら言う。


「景色が本当に綺麗でしたから」


「俺は宝探しかな」


鈴木が言った。


「まあ、見事に負けたけど」


「それはあなたたちの話でしょ」


結衣が反論する。


「私の心の中では、私が優勝だから!」


「はいはい」


美子が諦めたように返した。


すると、麻美がテーブルに肘をつく。


「じゃあ、大樹は?」


「一番好きだった時間は何?」


突然の質問に、俺は少し驚いた。


テーブルの周りを見る。


みんなが俺の答えを待っている。


俺は数秒考えた。


「そうだな……」


「たぶん、何気ない時間かな」


「朝の食事とか、みんなで歩いた時間とか……それに、こうやって話してる時間」


舞夜が黙って俺を見つめる。


そして、ほんの少しだけ微笑んだ。


「南くんらしい答えですね」


「それって、どういう意味?」


「悪い意味じゃありません」


舞夜は微笑んだまま続ける。


「私は、いいことだと思います」


俺が返事をしようとした、その時だった。


結衣がテーブルを軽く叩いた。


「はいはい、みんな注目!」


「ついに、私のサプライズを発表する時間が来ました!」


一瞬、食卓が静まり返る。


「それ、絶対にいい知らせじゃないだろ……」


松が小声で呟いた。


結衣は誇らしげに笑う。


「一時間後、ホテルのロビーに集合!」


「京都最後の夜を締めくくる、とっておきのイベントを用意しました!」


「それって、何をするの?」


麻美が尋ねる。


「秘密!」


「なんで?」


「言ったらサプライズじゃなくなるでしょ?」


「聞かなきゃよかった……」


美子が呆れたように呟く。


結衣は椅子から立ち上がり、食堂の出口を指差した。


「一時間後ね!」


「遅刻しないでよ!」


そう言い残すと、結衣は怪しげな笑顔を浮かべながら食堂を出ていった。


俺たちは、その後ろ姿を見送る。


佐藤が小さくため息をついた。


「……怖いな」


「たぶん、みんな同じことを思ってる」


小林が答える。


舞夜が小さく笑い、俺を見る。


「何をするにしても……楽しめるといいですね」


俺は笑った。


「結衣のことだから、少なくとも退屈することはないだろうな」


舞夜も頷く。


「それだけは間違いありませんね」


何が待っているのか、まだ誰にも分からない。


それでも俺たちは、夕食を最後まで楽しんだ。


期待と不安。


その両方を膨らませながら。


何しろ――


結衣が「サプライズを用意した」と言った時は、何が起きてもいいように覚悟しておいたほうがいい。


俺は、そう学んでいた。

第187話を読んでいただき、ありがとうございます!


京都最後の夜に、結衣が用意した特別なサプライズ。


一時間後、ロビーに集まる大樹たちを待っているものとは――?


最後の夜は、まだ始まったばかりです。


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!

これからも応援よろしくお願いします!

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