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金色の記憶

朝食を終えると、俺たちは再びホテルのロビーに集まった。


まだ眠そうにあくびをしている生徒もいれば、何時間も前から起きていたかのように元気な生徒もいる。


もちろん、結衣は後者だった。


「おはよう、京都ー!」


両手を高く上げながら、結衣が叫ぶ。


「朝の八時だよ。もう少し声を抑えて」


麻美が呆れたように言った。


「なんで朝からそんなに元気なんだ?」


松も不思議そうに尋ねる。


「私にも分からない!」


結衣は、なぜか堂々と答えた。


先生たちは出席を確認しながら、生徒たちを班ごとに並ばせていく。


「よし、みんな。今日最初に向かうのは、京都を代表する名所の一つです」


その言葉に、ロビーから期待に満ちたざわめきが起こった。


「金閣寺へ向かいます」


「別名、金色の楼閣――金閣としても知られています」


「金色のお寺!」


悠斗が声を上げた。


「ずっと一度見てみたかったんだ!」


舞夜も笑顔になる。


「私もです」


「写真では何度も見ましたけど、実際に見ると全然違うんでしょうね」


それから間もなく、俺たちは観光バスへ乗り込んだ。


車内は比較的静かだった。


京都の街はすでに完全に目を覚まし、通りには少しずつ人が増え始めている。


窓側の席に座った俺は、外の景色を眺めていた。


近代的な建物が並ぶ街並みは、少しずつ昔ながらの雰囲気を残す地域へと変わっていく。


俺の隣には舞夜が座っている。


「今日は、何を一番楽しみにしていますか?」


舞夜が尋ねた。


俺は数秒考える。


「そうだな……」


「京都の歴史を、もっと知りたいかな」


「舞夜は?」


舞夜は窓の外を眺めてから答えた。


「自分が、本当に特別な時間を過ごしているんだって感じられる場所を見つけたいです」


俺は微笑んだ。


「舞夜らしい答えだな」


舞夜が小さく笑う。


「それって、いい意味ですか?」


「うん」


「間違いなく、いい意味だよ」


数秒間、俺たちは何も話さなかった。


バスの走る音と、周囲の生徒たちの会話だけが聞こえてくる。


その時――


前の席から、結衣がひょこっと顔を出した。


「おはよう、ラブラブなお二人さん!」


「ラブラブじゃない」


「ラブラブじゃありません」


俺たちは、また同時に答えた。


結衣が目を大きく見開く。


「日に日に息が合ってきてるんだけど!」


「なんか、ちょっと怖くなってきた」


「朝から一番怖いのは、お前だけどな」


俺が言うと、結衣は頬を膨らませた。


「ひどい!」


そして、わざと悲しそうな顔をしながら前の席へ戻っていった。


数分後。


バスがゆっくりと停車する。


先生たちが立ち上がった。


「到着しました」


俺たちも次々とバスを降りる。


最初に目に入ったのは、寺院の入口と、その周囲を取り囲む大きな木々だった。


観光客も多く、あちこちから人の話し声が聞こえてくる。


涼しい風が吹き、鳥の声が訪れる人々の会話に混ざっていた。


俺たちはガイドさんについて、石畳の道を歩いていく。


そして――


それが見えた。


金閣が池のほとりに佇んでいる。


その姿は水面に美しく映り込み、まるで夢の中から現れた景色のようだった。


数秒間。


誰も何も言わなかった。


あの結衣でさえ、黙っている。


「……すごい」


舞夜が小さく呟いた。


朝の太陽が建物を照らし、黄金色の輝きが池の水面にまで広がっている。


想像していたよりも、ずっと美しかった。


「なるほど……」


松も景色を見つめる。


「これだけ有名なのも納得だな」


悠斗はすぐにスマートフォンを取り出した。


「これは写真を撮らないと!」


「たぶん、みんな同じこと考えてるよ」


俺もバッグからカメラを取り出す。


舞夜は、完全にその景色に心を奪われていた。


穏やかな風が彼女の髪を揺らしている。


その視線は、目の前の金閣から離れない。


「大樹くん」


すぐ隣から、舞夜の声が聞こえた。


「ん?」


舞夜は池のほうを指差しながら、微笑んだ。


「一つ、約束してくれませんか?」


「約束?」


「はい」


「家に帰ったあとも――」


「この旅行のことを忘れないって、約束してください」


俺は少し驚いて舞夜を見る。


そして、もう一度池の水面に映る金色の景色へ視線を戻した。


俺は笑った。


「忘れようと思っても、たぶん無理だよ」


舞夜が小さく笑う。


「私も、そう思います」


その時、先生が旗を掲げて俺たちを呼び集めた。


「よし、みんな!」


「次は寺院の庭園を見学します!」


生徒たちはゆっくりと歩き始めた。


俺もカメラをバッグへしまいながら、ふと思う。


舞夜の言う通りだった。


この旅行は、まだ二日目の途中。


まだ半分ほどしか終わっていない。


それなのに――


もうすでに、この旅は。


俺の人生の中でも、特別な思い出の一つになり始めていた。

第181話を読んでいただき、ありがとうございます!


二日目の最初の目的地、金閣寺。

そして舞夜が大樹に残した「忘れない」という約束。


京都旅行はまだ続きますが、この旅が二人にとって大切な思い出になっていく予感がします。


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!

これからも応援よろしくお願いします!

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