京都の朝、新しい一日
部屋の静寂を、一台の目覚まし時計の音が破った。
ゆっくりと目を開ける。
そして、自分がどこにいるのか思い出すまでに数秒かかった。
見慣れない天井。
朝の光にほんのり照らされたカーテン。
そして、周囲に並んでいる四つのベッド。
そこで、ようやく思い出した。
俺たちはまだ――
京都にいる。
俺は窓のほうへ顔を向けた。
太陽がちょうど昇り始めたところで、空がオレンジ色に染まっている。
しばらくベッドに横になったまま、その景色を眺めていた。
不思議な感覚だった。
家を出てから、まだ一日しか経っていない。
それなのに、もっと長い間ここにいるような気がする。
「あと五分……」
隣のベッドから悠斗の声が聞こえた。
悠斗は布団を頭までかぶっている。
「それ、もう十分前から言ってるぞ」
すでに着替えを終え、バッグを整理していた松が答えた。
「大げさだって……」
「大げさじゃない」
部屋の反対側では、まだ半分眠っている蓮が手を上げた。
「……もう朝?」
「いや、まだ夢の中だ」
松が即答する。
「じゃあ、もう少し寝かせて」
俺は思わず笑ってしまった。
「朝食に遅れても、蓮のせいだからな」
その言葉に、蓮が片目を開ける。
「それは話が変わるな」
ゆっくりと身体を起こし、大きなあくびをした。
俺もベッドから起き上がり、カーテンを開ける。
昨日の午後に見た景色よりも、さらに綺麗だった。
京都の街が少しずつ目を覚ましている。
通りを歩く人々の姿が見え、朝の光が京都を囲む山々を照らしていた。
「早起きした甲斐があったな」
俺が呟く。
松も窓へ近づいてくる。
「ああ」
「こんな景色、毎日見られるものじゃないからな」
すると、まだベッドに横になっている悠斗が、わずかに頭を上げた。
「寝たあとで、どんな景色だったか教えてくれ……」
「お前、本当に駄目だな」
俺は呆れながら言った。
それから俺たちは着替えを済ませ、朝食を取るためにホテルの食堂へ向かった。
まだ早い時間だというのに、食堂にはすでにたくさんの生徒が集まっていた。
あちこちから会話が聞こえ、みんな空いている席を探している。
「こっちだ」
松が窓の近くにある空いたテーブルを指差した。
俺たちはそこに座り、朝食を取り始める。
ご飯に味噌汁、魚、卵、パン。
それ以外にも、俺には名前の分からない料理がいくつか並んでいた。
「今日を生き残るには、朝食三回分くらい必要だな」
悠斗が自分のトレーに料理をどんどん乗せながら言う。
「お前はどんな日でも朝食三回必要だろ」
蓮が突っ込む。
「何か問題ある?」
悠斗が真顔で返す。
俺たちはまた笑った。
俺はお茶を一口飲みながら、食堂を見渡した。
その時――
舞夜、結衣、麻美、美子の四人が入ってくるのが見えた。
結衣は、朝だというのに完全に目が覚めている。
正直、この時間からあれだけ元気なのは少し心配になる。
一方、舞夜はまだ少し眠そうだった。
俺に気づくと、舞夜が軽く手を上げる。
俺も手を上げて返した。
「おはようございます」
俺たちのテーブルへ近づきながら、舞夜が言う。
「おはよう」
俺たちも、ほとんど同時に返した。
それを見た結衣が、にやりと笑う。
「朝からずいぶん礼儀正しいね」
「お前ほど元気じゃないんだよ」
俺が言う。
「これは生まれ持った才能だから!」
舞夜が小さく笑った。
「結衣のことは気にしないでください」
「実は、昨日より三十分も早く起こされたんです」
「二日目が楽しみすぎるって言って……」
「だって、眠れるわけないじゃん!」
結衣が目を輝かせる。
「今日はついに、昨日の特別活動の正体が分かるんだから!」
麻美が呆れたようにため息をついた。
「目を覚ました瞬間から、そればっかり言ってるよね」
「だって、一生に関わる重要な問題だよ!」
「いや、絶対そこまでじゃないから」
美子が冷静に突っ込む。
その言葉に、俺たちは一斉に笑った。
そんな仲間たちの楽しそうな会話を聞きながら、俺はふと窓の外へ目を向けた。
太陽はすでに京都の街全体を照らしている。
新しい一日が、始まったばかりだった。
そして、なぜか俺は思っていた。
今日という日は――
昨日よりも、さらに忘れられない一日になる。
そんな気がしてならなかった。
第180話を読んでいただき、ありがとうございます!
京都旅行二日目の朝が始まりました。
そして、ついに昨日から話題になっていた「特別な活動」の正体が明らかになります。
大樹たちを待っているものとは――?
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!
これからも応援よろしくお願いします!




