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隠された内部報告書

数分間――。


誰も口を開かなかった。


歴史資料保管庫の中は、あまりにも静かだった。


ページをめくる音だけでさえ、無数の本棚の間に大きく響いているように感じられる。


校長先生は、もう一度蓮の記録を確認していた。


見れば見るほど――。


そのファイルの中に、元々存在しなかったページが何枚も混ざっていることが明らかになっていく。


「これは……正式に調査しなければならない」


校長先生が重い声で言った。


坂本先生もうなずく。


「その前に、誰がこの記録へアクセスできたのかを調べる必要があります」


二人がファイルを確認している間、俺は保管庫の中を歩き始めた。


どうしても、何かが引っかかっていた。


もし誰かが記録を書き換えたのなら――。


何らかの痕跡を残している可能性がある。


棚は、年代、分類、記録番号ごとに整理されている。


どこを見ても、徹底的に整頓されていた。


……整いすぎている。


俺は、17番と書かれた棚の前で足を止めた。


二つの箱の間に、小さな隙間がある。


それほど大きくない。


しかし――。


なぜか目についた。


俺は棚の奥へ手を伸ばした。


木の表面に触れる。


すると――。


わずかに違う感触があった。


「何してるの、大樹?」


近づいてきた結衣が尋ねる。


俺は棚の奥を軽く叩いた。


コン、コン。


「……ここ」


「中が空洞になってる」


舞夜と坂本先生も、すぐにこちらへ近づいてきた。


俺たちは四人で慎重に木製のパネルを押した。


最初は、何も起こらなかった。


しかし――。


カチッ。


小さな音がした。


次の瞬間。


棚の奥が、ゆっくりと数センチ横へ動いた。


その後ろには――。


隠しスペースがあった。


「……隠し場所?」


結衣が小さく呟く。


その中にあったのは、一冊のファイルだけだった。


灰色の布で包まれている。


俺は慎重に取り出した。


そして、机の上へ置く。


ファイルには――。


ほとんど埃が付いていなかった。


それはつまり。


誰かが最近、この場所を開けたということだ。


表紙には名前がない。


ただ、一つの言葉だけが手書きされていた。


『記録禁止』


校長先生が目を見開く。


「……私は、このファイルを見たことがない」


俺たちは、ゆっくりと表紙を開いた。


中には、何枚ものタイプされた資料。


そして、手書きのメモが入っていた。


最初のページを見た瞬間――。


俺たちは全員、息を止めた。


そこには、一つのタイトルが記されていた。


『機密・内部報告書』


その下には、日付が書かれている。


それは――。


原稿が盗まれた直後の週だった。


俺たちはページを読み進める。


そして、すぐに――。


赤いインクで線が引かれた一文を見つけた。


『黒沢蓮を犯人と断定できる決定的な証拠は存在しない。』


舞夜が、すぐに顔を上げた。


「……じゃあ」


「学園側は、蓮が無実だと分かっていたの?」


坂本先生は、急いで続きを読み始めた。


しかし――。


その表情が、安堵から困惑へ変わっていく。


「待って……」


先生は、その下の文章を指差した。


そこには、こう書かれていた。


『しかし、青龍学園の名誉を守るため、さらなる証拠が集まるまで、事件を終結させることが望ましいと理事会は判断する。』


校長先生が、一歩後ろへ下がった。


その顔には――。


信じられないという感情と、恥じるような表情が浮かんでいた。


「私は……」


「この報告書を読んだことがない」


「本来なら、正式な記録として保管されているはずだ」


校長先生は、言葉を失う。


そして、しばらくしてから小さく呟いた。


「……誰かが、これを隠したんだ」


俺の背筋に、冷たいものが走った。


もう、単なる誤認ではなかった。


一人の生徒が、無実の罪を着せられた。


それだけではない。


学園側には、その事実を知る人間がいた。


それでも――。


学園の評判を守るために、真実を隠すという判断が下された。


その結果。


嘘は――。


三年間も生き残った。


しかし。


俺たちがさらに読み進めようとした、その時だった。


ファイルの中から――。


小さな白い封筒が一枚、床へ落ちた。


誰から送られたものなのかは分からない。


差出人の名前もない。


ただ、そこには――。


これまでに何度も見た、あの文字が書かれていた。


『もし、この報告書を見つけたのなら――』


『あなたたちは、まだ来るのが早すぎる。』


その下に、もう一行。


『最も重要な証拠は、誰も見ようとしない場所に残されている。』


歴史資料保管庫に、再び沈黙が訪れた。


俺たちは、誰も言葉を発することができなかった。


この人物は――。


三年前の事件を知っているだけではない。


俺たちが何を見つけるのか。


どこへ向かうのか。


そして、どこまで真実へ近づくのか。


まるで――。


すべてを最初から知っているかのようだった。

第百四十二話を読んでくださって、ありがとうございました。


三年前の事件に隠されていた、もう一つの記録。


そこに残されていたのは、蓮の無実を示す証拠でした。


そして――。

まだ誰にも見つけられていない、最後の手がかり。


真実は、もうすぐその姿を見せようとしています。


次回もぜひお楽しみください。

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