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古き三色の静寂と、過彩の奔流  作者: 海内裏
第三話:【全色(ぜんしき)の幾何学、残光の綛(かせ)】

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三、 永久駆動の街

それから数年を経て、二十五歳になった彼は、大学院の博士課程で「量子光学」と「極限断熱工学」の研究に没頭していた。彼がナノチップの中でリークする微細な電力を目視で突き止め、光子の干渉パターンを肉眼で確認しながら量産し続けた論文は、単なる理論に留まりきらず、社会の土台を根底から引っ返す巨大な恩恵を人類にもたらしていた。その最たる結晶が、彼が開発した『永久駆動ナノ発電シート』である。当時の新人類の社会は、無数の都市インフラや工場、あらゆる電子機器が絶え間なく放出する莫大な廃熱(IR公害)に頭を悩ませていた。しかし彼は、環境中に溢れる排熱(赤外線)と、室内の『超純色クリーンLED』が放つわずかな光(RGB)の波長を捉え、その損失エネルギーを百パーセント無駄なく電力へと再変換するナノシートの回路構造を、自らの超解像度な目で直接「視認」しながら完成させた。環境熱(マクスウェルの悪魔のパラドックス)を極限のスケールで回生し、熱力学的なロスを完全にゼロにする、新世界のエネルギーシステムだ。「充電」という概念は、この世界から完全に消滅した。

人々が手にするスマートフォンや端末は、バッテリーの残量を気にする必要のない永久駆動ガジェットへと変わり、街を走る無数の自動運転車は、自らが発する熱をそのままエネルギーへと再変換して走り続けるようになった。熱のロスを百パーセントカットする断熱技術は、太陽光ノイズの強烈な熱帯から人類が撤退した後の、過酷な寒冷地の超過密サイバー都市を支える生命線となり、人類はエネルギーの枯渇という恐怖から永遠に解放されたのだ。

世界中のメディアは、彼を「クリーンエネルギーの神」「新時代の救世主」と書き立て、彼がもたらした富と恩恵は、巡り巡って新人類のインフラをさらに豊かに最適化していった。

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