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洗礼の夜

刻限、夜七時。

風導の港に降り立った瞬間、肺に流れ込んできたのは、腐りかけた獣の皮を被せられたような、重く濁った熱気だった。

四方から突き刺さるのは、獲物を品定めする猛禽の視線。

「護衛はどうだ!」

「安宿があるぞ、マイフレンド!」

怒号に近い勧誘が鼓膜を殴りつける。聖域の静寂で磨かれた私の矜持は、この喧騒の前に、あまりにも脆く、音を立ててひび割れていった。

くたくたの体で辿り着いた魔法学校でも、この地の洗礼は続く。

「……嘘でしょう」

魔導洗浄機から漏れ出たのは、癒やしのシャワーなどではなく、目詰まりした管から垂れる二筋の、頼りない水流だけだった。

鉄錆の匂いが混じる冷ややかな糸の下で、私は惨めに身を縮める。頭を濡らすのが精一杯で、体を洗うには、あまりに冷たく、あまりに細い。聖域で浴びたあの潤沢な黄金の湯は、今や遠い前世の神話だった。

湿った寝台に横たわると、染みだらけの天井が、今にも落ちてきそうな圧迫感で迫る。

耳の奥では、まだあの広場の怒号が拍動のように波打っている。

(帰りたい……かも)

二週間前、あんなに熱く胸に刻んだ決意が、今はひどく滑稽で、泥に汚れた石ころのように見えた。

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