三人揃えば天下無双
「右ゴブリン二体、左一体!」
「アランは左の一体を!アスタは僕に補助魔法!」
「了解」
アスタがリヒルに魔力上昇の補助魔法をかける。
その速さは、出会った時とは比べ物にならない。
「インフェルノ!」
中級魔法だが、もう一般人の上級レベルの火力が出ている。
リヒルももう、魔法で世界に名を広めることが出来るほどの実力と言えるだろう。
課題だった魔力蓄積上限も、日に日に増えていっている。
教え始めて早数ヶ月。
もう教えてることは、ないのかもしれない。
アランも圧倒的な素早さと一撃一撃の重みを上げたことで、ゴブリンでは全く相手になっていない。
カルディアさんの実践主義は功を奏したようだ。
そうこう考えている間に、ゴブリンはただの魔石と化し、一行は再び前進した。
アスタとリヒルがちゃんと交代で魔力探知をしている。
大抵の魔物はそれで感知できる。
一応僕も広範囲の魔力探知をしているが、二人のものでも十分に安全を確保出来るだろう。
三人はもう、自分たちだけで探索出来るレベルに成長していた。
しばらく歩くと、フロアボスの部屋に着いた。
第一層とはいえ、重厚感のある、身長の数倍程度の大きな扉だ。
扉の表面には、「1」という数字が掘られている。
普通、ダンジョンの内部は全て、どれだけ破壊しようと元の状態に回復する。
だが、この傷はこのダンジョンの魔力を利用して掘ることで、それを元の状態だと無理やり設定をねじ曲げたものだ。
過去最高到達を記録したパーティ、つまり師匠たちが施したものだ。
「ここですか」
「うん、そこを開けばフロアボスがいるよ」
「緊張、するな...」
「大丈夫だ、ヘルン先生が練習させてくれたゴブリンキングよりは確実に弱いはずだから」
「気を抜かずに慎重にやれば絶対にいけるはずだ」
「リヒルの言う通りだよ」
「緊張しすぎる必要はない」
「それに今回は、僕も居るしね」
「僕がいる限り三人は死なないし、僕が育てたみんななら負けるはずがない」
「弟子たちよ、フロアボスを屠ってこい」
“はい!”
リヒルとアランが扉を左右に開き、中に入った。
中は真っ暗で、何も見えない。
リヒルが唾を飲む音すら聞こえるほど、静寂に包まれていた。
リヒルが足を踏み入れると、入口の方から順番に、壁についていた魔鉱石が部屋を覆うように光だした。
それと同時に一匹の魔物の唸り声が聞こえた。
片手には刃のかけた剣、もう片方には頑丈そうな木の盾を持っている。
「ゴブリンナイトだ!」
「ゴブリンキングの時のように、アランは近接で牽制!」
「アスタは二人に補助魔法を!」
「僕があの盾を燃やすから、盾を手放したら剣で倒して!」
「了解!」
「天よ、この者達を守りたまえ」
補助魔法は決まった区分も特になく、使用者の魔力量や神聖度で補助力が変わる。
天に祈ると、天使族が魔法を与える、といった具合だ。
でも、魔力の流し方や感覚は、水魔法と酷似しているらしい。
ちなみに、治癒魔法は水魔法に区分される。
「二人とも、かけ終わったよ!」
「了解、じゃ行くよ!」
「ファイアアロー!」
最近多用していたインフェルノではなく、初級魔法のファイアアロー。
盾燃やすだけだから、火力よりも命中率にかけたのだろう。
いい判断だ。
火矢は盾に命中し、ゴブリンナイトは燃えた盾を慌てた様子で振り回した。
火を消そうもがいているが、それによって逆に火力がどんどん強くなっている。
間もなく、ゴブリンナイトは盾を手放さざるを得なくなった。
「今だ!」
「任せろ!」
アランがゴブリンナイトの体を一刀両断し、この戦いは終結を迎えた。
「よっしゃー!!!」
アランがガッツポーズをして叫んだ。
他の二人も互いに手を合わせて喜んでいる。
みんな、各々の特性を活かしてどんどん成長してる。
この勝利は、それの証明に過ぎないのだろう。
「ここを降りればいいんですよね?」
「うん、そこを降りたら二階層に入れるよ」
三人が足を止めるかと思った。
ゴブリンの時のように。
しかし、みんなはまるで何度も来たことあるかのように階段を降りていった。
「三人とも、二階層に降りるの初めてだよね?」
「そうですね」
「まあでも行けんだろ〜今の俺たちなら」
「もー!気を抜いたら怪我するよ!」
「そうだよ、僕たちはまだまだ弱いんだから」
ほう、フロアボスを倒してちょっと自信がついてきたみたいだ。
「そうか、じゃあ行こう」
「はい!」
階段を降りていくと、下の層が見えてきた。
下の層に足を踏み入れたその瞬間、素早い風がビューッと吹き抜けた。
ダンジョンで風?風魔法使いでも先に入ってたのかな。
まあ深く考えても仕方ないか。
二階層の主な魔物はゴブリン。
一階層のゴブリンよりは少し強いけれど、みんななら大丈夫だろう。
問題は報告書に載っていた、たまに出現するシルバーウルフ。
シルバーウルフを倒すのはクロの顔が浮かんで少しやりにくいけど。
まあ、ダンジョンの魔物は魔力で出来てるから生きてないし。
許してねー。
ああそう、シルバーウルフは一匹でゴブリン数匹分の力を持っている。
問題ないと信じたいが、まあ頑張ってほしいな。
二階層の探索は、僕の想像以上にスムーズに進んだ。
二階層探索中に出会ったゴブリンの中には棍棒の他に弓を持ったりしているものもいたが、それでもリヒルたちの連携を崩すことは出来なかった。
上出来上出来〜!
「もうダンジョンに入って結構経ったね」
「そうですね、敵が弱いとはいえ慎重に動いてるので」
「うんうん、でもダンジョンでは疲れは命取りになっちゃう」
「そろそろこの辺で休もう」
僕らは岩の地面の上に布を敷き、ゆっくりと座った。
「ふ〜疲れましたね」
「さっきまではまだいける気がしてましたけど、こんなに疲れてたなんて」
「無意識に緊張していたんだろうね、ゆっくり休みんだよ」
「にしても三人でゴブリンにすら勝てなかった俺たちが、二階層でも余裕で探索できるようになるなんてな」
「もー、アランはすぐ調子乗るんだから」
「はは、まあでも、たしかにね」
「これも、ヘルン先生のおかげだよ」
うぅ、この子たち、可愛い!
お兄さん涙が止まらないよお。
しばらく話をしていると、みんな回復してきたようだった。
「そろそろ行こうか」
「はい!」
僕らは再び歩き出し、すぐに魔物と遭遇した。
シルバーウルフが三匹。
シルバーウルフが群れるのは、二階層にしては珍しい。
まあ、魔物たちも完全にプログラミングされてる訳では無いから、たまたま出会って群れているのだろう。
しかし、シルバーウルフの群れは一匹の時とはレベルが違う。
シルバーウルフは頭が良く、連携攻撃などを使いこなして来る。
上級冒険者でもあまり出会いたくない相手だ。
「アラン、今回はあまり近づき過ぎず、僕らの少し前くらいに居てくれ!」
「シルバーウルフは速いから、近接のアランが近くにいてくれた方が安全だ!」
「わかった!」
「アスタは僕に魔力増加の補助魔法をお願い!」
「わかったわ」
魔力増加、アランの防御配置、自分の魔法でシルバーウルフと消耗戦をするつもりか。
僕ならアランに一旦3匹とも任せてその間に上級魔法の詠唱をするけど、とりあえず見てみるか。
だが、リヒルの作戦は思った以上に上手くいった。
近寄ってくるシルバーウルフをアランが牽制し、リヒルが攻撃魔法を連射。
アスタは魔力消耗が激しいリヒルの魔力補助。
シルバーウルフの体力はどんどん削られ、近くに突っ込んで来ようともしなくなってきた。
「今だアラン!」
「おし!やってやるぜ」
そう言うと、アランは体勢を一気に変え、シルバーウルフの群れに突っ込んだ。
シルバーウルフも反応はしたが、アランの剣撃を避ける体力も、反撃する余裕もなく、三匹とも魔石となった。
リヒルの采配能力は、僕と匹敵、いや、僕を超えるかもしれない。
少なくともリヒルが大人になれば、今の僕じゃ敵わないだろう。
王の息子。
その血は争えないようだ。
そうして二階層も時々立ち止まりながらも順調に攻略していき、いつの間にかボス部屋の扉の前まで来ていた。
にしても、みんなが強いからあれだけど、二階層にしては魔物が強く感じる。
群れている魔物も妙に多い...
気のせいだろうか。
「じゃあ頑張ろうか」
「一階層と同じ感じだろ?いけるって!」
「もう〜アランったら〜」
「頑張ろう」
「うんうん、みんなならきっと行けるよ!」
そうみんなを励まし扉を見た瞬間、僕は目を見開いた。
扉には、「10」の数字が掘られていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
ヘルンの弟子たちの成長の見せ場!でも何やら異常発生!ヘルンはどうするのか。
次の話もお楽しみに!
作者の学生上の都合、及びそれによって出来たブランクによって上手く書けず、時間がかかってしまいました。
今後も時間がかかる事はあるかもしれませんが、この作品を投げ出したりは絶対にしませんので、この子達が僕の手元を離れるまで、一緒に見ていただければ嬉しいです!
次話は、7月20日頃に投稿出来ればと思います!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




