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実践訓練

「ダンジョンですか?」

リヒルが不思議そうに聞いた。

「うん、何か問題でも?」

「僕らにはまだ早いのでは」

「そうでもないよ、三階層くらいまでならほとんどのダンジョンで安全に攻略出来るんじゃないかな」

「で、でも、以前三人で潜った時は一階層の魔物でさえ精一杯でしたよ!」

リヒルはなにやら必死そうだ。

「そうだよ、まだ無理だよ」

二人も乗り気ではないようだ。

まだ自信がついていないのか。

「それじゃあ、試練を与えよう」

「僕が今から出す人形を倒してもらう」

「もちろん評価に入るからしっかりやるように」

そう言うと、僕は生徒たちが居る所にバトルフィールドを創り、そこに魔力で作った魔物を配置した。

「え、どういうこと!?」

「デカすぎだろ」

「こんなの倒せるわけない!」

みんな落ち着きをなくして騒いでいたが、リヒルがその場を収めた。

「二人とも、ここは先生の作ったフィールドの中だ、死ぬことは無いから安心して!」

「見たところ、ゴブリンキングのようだ!」

「物理攻撃しかしてこないはずだから、アラン以外は近づいちゃだめだ!」

流石王子、緊急事態でも速やかに集団をまとめようとしている。

ゴブリンキングは強力な肉体を持つ代わりに魔力を持たない。

彼の指示は非常に的確だった。

リヒルは次々と指示を出していった。

攻撃、補助、近接のアランと役割を振って、瞬時に軍団を作り上げて見せた。

アスタによる魔力補助と火力補助、リヒルによる魔法攻撃、アランの剣攻撃により、ゴブリンキングは間もなく消えた。

フィールドが解除されると、みんな気が抜けたようにその場に腰を下ろした。

「どう?自信はついたかな?」

「先生、急すぎますよ...」

リヒルが息を荒らげながら言った。

「でも、確かに、少し自信は持てた気がします」

「確かに、今の感じならダンジョン潜れそうかもって思った」

「それは良かった」

「ちなみに、今のゴブリンキングは、この前消滅した中央区ダンジョンの五階層のボスを模したものだよ」

ハネストから、ボスの情報を聞いていたのだ。

「え!?」

「つまり、今俺たちは五階層のボスを自分たちだけで倒したのか!?」

「え、本当にダンジョン攻略出来るんじゃない!」

先程まで不安で満ちていた三人の顔が、みるみる明るくなり、自信が瞳に現れだした。

よし、これでやっとダンジョンで訓練が出来るな。

「うんうん、でも、やはりダンジョンでは気を抜かない」

「ダンジョンでは、いつ異常事態が発生してもおかしくない」

「その時、僕は全力で君たちを守るけど、僕ができることにも限界があるから」

「分かりました!気を抜かず、慎重に行きます!」

「うん、じゃあ明日、ちょうど学園は休みだし、早速ダンジョンに潜ってみようか」

ーおー!ー


「おはよう、三人とも揃ってるね」

僕らは朝から北区のダンジョンの入口あたりに集まっていた。

北区ダンジョンは、比較的攻略しやすく、冒険者協会でも、初心者はまずここを案内される。

「うす!やる気満々だぜ!」

「久しぶりのダンジョン、緊張しますが、楽しみです!」

「魔物は怖いけど、先生が居れば平気かな...!」

「うんうん、何かあれば僕が何とかするから安心したまえ!」

「じゃあ早速、潜っていこうか!」

「今回は僕が居るからいいけど、自分たちで潜るようになったら、必ずポーションや食料、寝具を持ち込むことだよ!」

「アスタが居るからポーションは要らないと思うかもしれないけど、もしアスタが負傷したら、君たちの命が危うくなってしまうからね」

少し授業したところで、ダンジョンに入ろうと思った時、リヒルが少し低い声で言った。

「先生は、いつかどこかへ行ってしまうんですか」

ニコニコでダンジョンに向かって歩こうとしていた僕は、少し真面目な顔になり、三人を振り返った。

何か三人で話したのか、みんな同じような、寂しい顔をしている。

「僕の目標はね」

「この世界、いや、この人生を、大切な仲間と共にとことん楽しめる、そんな旅をすることなんだ」

「今はこの国に留まって、A級パーティだなんだってもてはやされているけれど、ずっとここにいる訳にもいかない」

もう一度顔を見ると、三人は明らかにしょんぼりしていた。

「そんな顔しなくていいんだよ」

「君たちが一人前だと認められるまでは、僕は離れないから」

「本当ですか?」

「うん、僕の弟子が不甲斐ないようじゃ僕の名が廃れてしまうからねぇ」

「頑張ってくれよ〜」

ーはい!ー

「うん、じゃあ行こう」

「ダンジョンが僕らを待ってる」

実は、そろそろダンジョンに入りたくてたまらなかった。

「頑張ろーぜ!」

「うん!頑張ろう!」


「なんか、寒いね」

アスタ体を手で擦りながら言った。

ダンジョン内は明かりはあるものの、暖房器具のようなものはもちろんない。

温めて上げてもいいけど、体調に影響を及ぼす程でもないし、教育としてそのままにしておこう。

「最初に来た時にも思ったけど、意外と魔物少ねーよな」

「まあ、ダンジョンは広いからね〜」

その時、前方の方から魔物の気配を感じた。

まだ一階層だし、魔力量からして大した相手ではない。

言わない方がいいかな。

すると、間もなくその気配の主が目の前に現れた。

ただのゴブリンだ。

数秒もかからないかな。

だが、一向に攻撃しない。

リヒルたちの方を見ると、何やら戸惑っているようだ。

「どうしたの?」

「昔来た時、ゴブリンにボコボコにされて...」

なんだ、そんなことか。

「ほら、ファイアアローを撃ってみて」

「は、はい!ファイアアロー!」

炎の矢がゴブリンに突き刺さった。

ゴブリンは一瞬にして灰となり、その場には魔石だけが残った。

「ほら、怖くないでしょ?」

「君たちはもうその頃の君たちじゃないんだ」

「自信を持つことも、戦いではとても大切な事だよ」

「なんだか今、生まれ変わった気がしました!」

「な!前の俺たちじゃなくなったんだなって改めて思ったぜ!」

「なら良かった」

「先はまだ長いから、進もうか」

「はい!」


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!

ヘルンはダンジョン好きですからね!実はリヒルたちより楽しんでいるようです!

次の話もお楽しみに!


次話は、作者の都合により少し空きまして、7月12日辺りに投稿します!

ご意見、ご感想、お待ちしております!

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