模擬対戦
もうすぐ授業時間。
ウォリアス魔導学園の演習場で待っていると、何人かの生徒が近くに寄ってきた。
「先生、お疲れ様です」
今日最初に僕に話しかけたのは、初回授業で僕に突っかかってきた例の生徒だった。
「うん、おはよう」
「本日の訓練はどのようなものなのでしょうか」
おお、えらく積極的だな。
「今日は、実力ごとにペアを組んで、模擬戦をしてもらうよ」
「なるほど、それで僕たちの戦闘能力を測ると」
勘がいいな。
「では、僕の相手はリヒルにして頂けないでしょうか」
「なんでかな」
「前の授業で、僕がリヒルに遅れをとっていることはわかりました」
「なので、なるべく早く追いつきたいのです」
ふむ、仲がいいのかな?
まあ、リヒルに見合う相手はなかなかいないし、この子もそれなりには戦えるようだから、いいか。
「分かったよ、君の名前は...」
僕は生徒名簿をめくった。
「僕はユスレイ・アビリティスです!」
「了解、ユスレイ君」
「よろしくお願いします!」
「はーい」
丁寧にお辞儀をすると、ユスレイは友達と共に立ち去った。
時計を見ると、授業の開始時刻が迫っていた。
ゴーンゴーン
「さあ、授業を始めよう」
「まあ授業と言っても、今日もまだ実力評価だけどね」
「今日は、みんなの戦闘能力を測らさせてもらうよ」
みんなが顔を見合わせる。
緊張しているのかな?
「今から、前回の魔法能力テストの結果からペアを作って、一組ずつ僕の前で戦闘を行ってもらう」
ーえ、戦闘なんてしたことないー
ー怪我とかしないかなー
みんながざわつき出した。
「安心して、僕が特別なフィールドを用意する」
「そこでは、痛みもないし、死なない」
「怪我による能力低下などは現実と同じだけど、そのフィールドを出た瞬間怪我は完治するよ」
「言ってみれば、分身を戦わせる、みたいな感じかな」
みんな、目を丸くしている。
あまりよく分からないのかな...
「ま、まあ、とりあえず」
「ペアを言っていくから、ペアで固まってね」
僕は実力と魔法スタイルごとにペアを作った。
「じゃあ一組目から順番にテストするよ〜」
「一組目はフィールドに入って〜」
それから順番に、八組のペアが戦闘を終えた。
結果はまあ、予想通りという感じかな。
「じゃあ次はリヒルとユスレイ」
「はい!」
二人がフィールドに入る。
「じゃあー始め!」
僕の掛け声と共に、リヒルが詠唱を始めた。
少し遅れてユスレイも詠唱を始める。
ーインフェルノー
ーブリザードー
ほう、ユスレイはこの期間中に新しい魔法を習得したのか。
リヒルたちに影響されたのかな。
そんなことを考えている間に、決着はついていた。
同等級の魔法を習得してきたようだが、練度が違いすぎた。
ユスレイは新しい魔法を習得するよりも使い慣れた魔法で立ち回る方が勝率が上がったかもしれない。
まあそれにしても、相手が悪い。
リヒルは僕の特訓を受けている。
その差はここまで大きく出るのか。
「はい、そこまで」
僕はフィールドを消した。
火傷をしていたユスレイの体は、一瞬のうちに元に戻った。
「よし、じゃあこれでテストは終わりだ」
ーあ、あれ?俺は?ー
集団の中から、戸惑いを隠せない様子の声がした。
アランだ。
ーわ、私も...ー
アスタもそっと手を挙げた。
「二人の戦闘能力は生徒同士では測れないからね」
「アスタは治癒魔法使いだし、アランは魔法を使わないから」
「そっか...」
アランが少し寂しそうな顔をした。
「アランが弱いからじゃない」
「むしろその逆だ」
「みんなはまだ時間のかかる詠唱が必要だからね」
「アランにはまず勝てない」
「だから、アランは後で僕と戦おう」
「もちろん体術のみで」
「お、おお!!やったぜ!」
前のみんななら特別待遇されるアランを良くは思わなかっただろう。
だが、今のみんなは違うようだ。
アランが友達と楽しそうに話すところはよく見るようになった。
初回授業の効果があったようだ。
「じゃあ、今の対戦を通して反省点や改善点を探して、自分なりに練習してみてください」
ーはーいー
そうして授業はあっという間に終わり、僕は自由な時間を得た。
わけではなかった。
生徒たちの状況報告書、授業の進行、内容の報告書、その他、丁寧にすればするほど時間がかかる...
常勤の先生たちはどうやってやってるんだー?これ...
机にへばり付いて作業をしていると、いつの間にか時間が経ち、職員室のドアが叩かれた。
「ヘルン先生!特訓お願いします!」
リヒルが僕を呼びに来た。
外を見ると、日が暮れだしそうな様子で、自分は長時間ぶっ通しで作業をしていたことに気付かされた。
「すぐ行くよ」
そう言い、机を片付け、報告書を提出した。
全員分、びっしり感想を書いてやった。
いつもの特訓は、学園の演習場を借りるようになっていた。
元から、生徒には開放されていたのだ。
「魔力量を上げる訓練は順調かい?」
「はい!徐々にですけど、火を保てる時間が伸びてきた気がします」
「それは良かった」
「二人はどう?」
「俺はカルディアさんに修行つけてもらって、実感はあんまりないけど、カルディアさんには動きが良くなってきたって言われたぜ!」
「うんうん」
「私は、街の診療所のお手伝いをさせてもらってて、治癒にかかる時間がだんだん短くなってきました」
「お〜」
フィオナが僕に許可を取ってきた件だね。
フィオナが自ら提案をする事はなかなか珍しいし、自分より下の子が出来て張り切ってるのかな。
お兄ちゃんフィオナの成長が見れて嬉しいよぉ...
「三人とも、いい感じみたいだね」
「ただ、このままで良いのでしょうか」
「ん?」
リヒルが深刻そうな顔で聞いてきた。
「今の訓練は、確かに今まで我流でやってたものとは比べ物にならないくらい力がついている気がしますが」
「今のままじゃ、先生に追いつける未来が想像出来ないんです」
ん〜、まあ僕死神だしなあ...
そりゃそれが当然なんだけど...
まあでもちょうどいいか。
そろそろ次のステージに上げようと思ってたところだ。
「よし分かった、じゃあ、ダンジョンに潜ろう」
ー・・・え?ー
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
またまたダンジョン!ヘルンはダンジョン好きですね。
ザ特訓!みたいなの大好きですからね。
次の話もお楽しみに!
次話は、6月28日を予定しております!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




