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(番外)氷の中は暖かい

私はアイシー。

元悪魔軍所属、氷の悪魔王として魔神様に仕えていた。

だけど今は、ヘルンの元で気ままに暮らしてる。


私は、と言うより悪魔のほとんどが、魔神様を愛していた。

尊大で、慈愛溢れるあの方を、私は今でも慕っている。

ただ、あの方の運命、魔神としての生涯は、あの方の性格とはまるで違って、私は悪魔として生きることに辟易としていた。

そんな時、悪魔王会議である名前が上がった。

ーヘルフェン・カリタスー

当時最強の死神の家名を冠した死神。

私たちは話を聞かずともことを察した。

彼の活躍は凄まじくて、悪魔軍は次々と崩壊した。

私はそれに、不謹慎ながらも期待をしていた。

百万年の地獄が、ようやく終わる気がして。


それでも、私は悪魔王。

悪魔として生を受けて、今まで魔神様に尽くしてきた。

今更、裏切る訳にもいかない、そう思った。

悪魔軍の大規模攻撃が始まった時、魔神様から悪魔王に命令が下った。

ヘルフェン・カリタス、及びその仲間の抹殺。

私たちは何の躊躇もなく、神の世界を襲撃した。

当時最強だと言われていたシュッツ・カリタスを、私は知っていた。

大昔に私がまだ若かった頃、一人の若い死神と出会った。

魔力差は圧倒的で、負けるはずがなかった。

でも、何故か、殺せなかった。

まだ殺戮に慣れていなかったのもそうだけど、彼女からなにか不思議なものを感じた。

だからこそ、あの時に芽を摘んでおくべきだったのかもしれないけれど。


それでも、悪魔王を信じていた。

私一人で勝つ自信があったわけではないけど、五人も居れば、まず負けないだろうと。

闇柱が寝返っていたとしても。

彼が神王化していたとしても。

負けはしないだろうと。


結果は言うまでもない。

四人が死に、一人が傘下に下った。

信じられなかった。

戦う時に確認したら、本当にあの少女の弟子らしい。

私は、自分が見逃した死神の弟子に敗北した。

でもそれでいいと思った。

別に生きていても楽しくもなかったし、いいことなんてなかったから。

胸に指した氷は、私の人生をゆっくりと終わらせた。


意識が戻ると、少し明るかった。

心地よい暖かさで、優しい風が頬を撫でた。

最初、天国に来たのかと思った。

悪魔である私がそんな所に行けるのかと感心していた。

でもそこは、私が最後に襲撃した世界だった。

目の前に居たのは、私が屈した相手。

でも、負の感情なんてものは一切出てこなかった。

唯一あったとすれば、こんな素晴らしい世界を壊そうとした、過去の自分への自責。

こんなに優しい人を殺そうとした、過去の自分への。

そこからは早かった。

私はいつの間にかヘルンの仲間として、国の重臣にまでなっていた。

そして今は、ヘルンに連れられて冒険者として楽しい日々を送ってる。

いつも思う、私はこんなに幸せで良いのかと。

戦争で何かを失ったわけでも、何かを代償にしたわけでもないのに、私は本当に天国に来たかのように幸せだ。

毎日楽しくて、それを共有する仲間が居て、すぐそばに大切な人がいる。

私はこれ以上、何も望まない。

これ以上、何もいらない。


「あー、ヘルンと遊びたーい!」

最近妙に忙しそうにしてるのよねー。

ダンジョンが崩壊して、A級パーティにもなって、少しは落ち着きそうなものなのに。

ウォリアス王の息子に稽古をつけてるとか言ってたけど。

そんなの断っちゃえばいいのに。

ほんとにお人好しなんだから。

そんな暇があるならもっと構ってくれたらいいのに。

それに、フィオナとハネストもついていってた!

私も行きたかったけど、ヘルンが二人が最適だって言うから。

迷惑かけてもダメだし。

でも寂しい。

どうしようかしら。

ハネストが羨ましい。

あんなに素直に気持ちを伝えられて。

なんで私こんな不便な性格にしたんだろ。

はあ。

拭えないモヤモヤを抱えたまま、私は修行しに森に向かった。

頑張れば、ヘルンが褒めてくれるかもしれないなんて、淡い期待を持って。


もう結構経ったかしら。

昼前くらいに森に入って、今、日がこれから沈んでいこうとしている。

ー修行かな?精が出るねー

聞き慣れた声がした。

「久しぶりに、二人で手合わせでもするかい?」

「ふふ、私が勝てるわけないでしょ」

ヘルンだ!ヘルンだ!やったー!

「え〜ちょっとの間見てたけど、結構いい勝負になると思うんだけどな〜」

「勘弁してちょうだい」

「もう終わるの?」

「ええ、そろそろ終わろうと思ってたわ」

「おお、ならちょっと付き合ってくれない?」

え!ヘルンから誘われた!ラッキー!!

「ええ、もちろんいいわよ」

「お、じゃあ行こうか」

「ええ」

私たちは歩き出した。

私は、ヘルンの背中を見ながら歩くのが大好き。


ヘルンの用事は、ごく普通の買い出しだった。

でも、二人でする買い出しは、最高に楽しかった。

なんだか、夫婦みたいで...へへ。

「これくらいかな」

「そうね、帰りましょうか」

「その前に、もう一つ行きたい場所があるんだ」

どこだろう。

ヘルンは私についてくるように言って、再び歩き出した。

ついて行くと、宝石屋さんの前で、ヘルンは立ち止まった。

「これください」

ーお、お客さんいい目してるね!ー

ーそちらの女性に?ー

「ええ、まあ、はは」

そうして買い物を済ませると、ヘルンはこちらを振り向いた。

「はい、これ」

ヘルンが差し出した手には、氷の結晶の形をしたイヤリングが乗っていた。

細かく宝石が散りばめられていて、キラキラと輝いている。

「なんで、私に?」

「この前ブラブラ街を歩いていたらこれを見つけて、アイシーにに合いそうだなって思ってたんだ」

嬉しかった。

私のことを、私が居ない時にも考えてくれたことが。

これは勝手な解釈かもしれないけれど、ヘルンに愛されてる気がして。

「ありがとう、大切にするわ」

「うん!じゃあ帰ろう!みんなが待ってる」

「ええ、帰りましょう」

その日、私はみんなにバレないように、イヤリングをそっと耳につけてみたのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

アイシー視点の特別話!

意外な内面が明らかに?

次の話もお楽しみに!


次話は、6月26日に投稿します!(変更の可能性あり)

ご意見、ご感想、お待ちしております!

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