教師
ウォリアス魔導学園の教師一日目、それに最初の授業で、僕は早速問題児に絡まれていた。
「ずっと偉そうなこと言ってるけどよ、A級パーティのリーダーだからってお前が強いとは限らないだろ」
「僕たちに指図したいなら僕らより優れてるって証明してみろよ!」
「ふむ、一理ある」
「ならよく見ておくといい、これが君たちの先生となる人の実力だ」
もちろん手加減はする、でないといくら演習場に障壁が張られているとはいえ、学園ごと吹き飛んでしまう。
まあヘルフレイムとかでいいかな。
そう思った瞬間、大きな魔力がこちらに近づいてくるのを感じ取った。
しかし、周りを見渡しても何も見えない。
もしや!
考える間もなく地面が揺れ始め、ひびが入った。
「みんな、僕の後ろに!」
みんなが僕の後ろに駆け寄った。
腰が抜けてしまった生徒は、リヒルがこちらまで引っ張ってきてくれていた。
全員が後ろに来たことを確認し、魔法障壁を張ると、地面から異常の原因が姿を表した。
それは、かつてイレーネを襲った巨大な魔物だった。
“ミ、ミスリルゴーレムだ....”
“こんなの、一人で倒せるわけがない!”
“みんな死んじゃうのかな....”
ミスリルゴーレム、見るのはイレーネで倒した時以来だ。
目撃情報も聞いたことがない。
この子たちは初めて見たのだろう。
ただ、非常に都合がいい。
僕の目の前に出てきてくれたことも、僕が実力試しをしようとしていた時に出てきてくれたことも。
「ちょうどいい、僕はこれを、みんなにも出来る動き方で倒す」
「よく見て勉強しなさい」
僕がそう言うと、予想通り例の生徒が楯突いた。
「お前一人で倒せるわけないだろ!教師なら早く助けを呼びに行けよ!」
「いいから見ておけ」
僕はそう言い、ミスリルゴーレムの方へ歩き出した。
後ろからリヒルたちが応援する声が聞こえた。
弟子のためにも、これから弟子になる子たちのためにも、僕は最強でなければならない。
魔力を解放すると、風が魔力に反応し、強風が吹いた。
ローブがバタバタと靡く。
ミスリルゴーレムは一撃で倒すことが出来る。
だが、それをしても子供たちの教育にはならない。
戦略、動き方、駆け引き、それら全てを駆使し、生徒たちが真似出来るような戦闘をする必要がある。
魔力を解放したことにより、ミスリルゴーレムがこちらに気づいた。
空を覆うような巨体から、大きな腕が振り下ろされる。
僕は、ギリギリまで避けず、当たる直前で飛び上がることで、ミスリルゴーレムの腕に乗った。
そのまま腕の上を駆けると、ミスリルゴーレムは腕を振り回した。
その遠心力に身を任せ、右腕と左腕を交互に飛び移り、すぐに僕はミスリルゴーレムの頭上についた。
ミスリルゴーレムは慌てて頭に向かって腕を振る。
再び飛び上がると、ミスリルゴーレムは自分で自分の頭を殴り、体勢を崩した。
ミスリルゴーレムの核は胴体部分の中心にある。
地面に横たわるゴーレムの上に立つと、僕は魔力の流れから核の場所を見極めた。
一箇所だけ、体全体から魔力が流れている。
「ここか」
僕はそこに向けて指を立てた。
「シャドーブレイク」
高火力の代わりに、展開に時間がかかる魔法。
かつて魔王が僕に向けて放とうとした。
でも僕は、展開作業を同時に何個も並列して行うことで、その展開時間を大幅に削ることが出来る。
指先に暗い魔力が集まり、細い光となってミスリルゴーレムに伸びた。
それがミスリルゴーレムの体に触れた瞬間、物凄い轟音と共に、ミスリルゴーレムが爆発した。
とてつもなく硬い体も、シャドーブレイクによってバラバラになり、核も粉々に砕け散った。
放出していた魔力を再び制限すると、強風と共に土埃はやみ、演習場に平穏が戻ってきた。
魔法障壁を解除すると、子供たちが僕に駆け寄った。
“先生凄すぎる!”
“助けてくれてありがとうございます!”
「ほら、やっぱり先生は凄いんだ」
何故かリヒルが自慢げに言った。
愛想笑いしていると、ずっと楯突いてきていた生徒が少し下を向きながら寄ってきた。
「あ、あの、さっきはすみませんでした」
「僕も、先生に魔法を教わりたいです」
謝れるのは、偉いことだよね!
「いいんだよ、子供は間違えるものさ」
「僕についてくるなら、僕はみんなの夢を全力でサポートするよ」
最初の授業は、結構いい感じかな!
「じゃあ僕は色々報告しに行かなきゃ行けないから、授業は終わりだ」
「何が起きるか分からないから、速やかに学園内に戻るように」
“はい!”
学園には昨日既に半日近くをかけて超絶強力な魔法障壁を張っておいた。
例え悪魔王が強力な一撃を打ち込んでも、数発程度ならビクともしないだろう。
自分も学園に戻ろうとすると、僕のセリアさんが飛び出してきて、僕に状況を聞いた。
何が起きたか説明すると、先生は目を丸めて呆然としていた。
「ま、まあ、とりあえず生徒が無事なら良かったです」
「演習場の損傷は僕が直しておくので、ご心配なく」
「助かります、では、私は次の授業に行きますね」
「ヘルンさんはもう一クラス授業があるはずですので、よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
その後の授業は初回よりも円滑に進み、僕の教師生活初日は、色々あったが成功に終わった。
宿に帰り、机に顔をつけた。
疲れた〜。
それにしても、ミスリルゴーレムが地中を通って僕のところに出てきたのは偶然とは考えにくい。
でも、魔神はまだ生まれていないから、死神に敵対する種族は今のところ居ないはずなんだけどな...
ん〜。
とりあえず、気をつけるに超したことはないな。
僕には、大切な人が沢山いるから。
“ヘルンー、起きてー、ヘルンー”
「んん〜」
誰のものか分からない声が僕を呼んでいる。
目を擦りながら開くと、僕は机に座っていた。
あのまま寝ちゃったのか。
まあ今日は授業無いし、午後にリヒルたちの特訓に付き合ってあげればいいか。
「ヘルン」
声の方見ると、ハネストが居た。
「どうしたの?」
「あのさ、疲れてると思うんだけど、ちょっとお願いしたいことがあって」
「大丈夫だよ、僕は死神だからね」
「それで、お願いって?」
「ちょっと、二人で出かけたいなって」
「ああ、いいよ」
「え、いいの!」
「うん、今日は授業がないからね」
「それに、最近みんなとの時間が作れてなかったから」
「やったー!」
「じゃあ行こ!」
ハネストは僕の腕に腕を引っ掛け、引っ張った。
「そんなに急がなくても」
「だめ!早く行こう!!」
「は、はい」
今日は寝ようと思ってたけど、せっかくだし楽しもうか!
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
ヘルンの教師としての生活がスタート!
ヘルン先生、優しそうでいいですね!
次の話もお楽しみに!
次話は、6月22日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




