ウォリアス魔導学園
「ヘルン先生、実は明後日からは朝から来れなくて」
「ん?何かあったの?」
「実は、学園の長期休暇が明日で終わりなんです」
・・・学、園?
「先生の稽古を受けたいのは山々なんですが、学園を休む訳にも...」
「うんうん、学校は行った方がいいよ」
「じゃあ僕との修行はこれで終わりかな」
「良い機会をくれてありがとう」
「いえ!それは大丈夫です!」
「父上に頼んで、ヘルン先生が学園で授業を出来るようにしました!」
リヒルがキラキラした目で言った。
え、何してるの...
「い、いや僕は、この国にずっといる訳にも行かないし、」
学校とか人間時代にも行ったことないのに、先生とか無理無理。
「いや〜ちょっと厳しいかな〜はは」
「え!だめですか...?」
うわ...目がうるうるしてる...どうしよう......
「ま、まあ、考えておくよ」
二日後。
「ヘルン先生!これからもよろしくお願いします!」
僕は、ウォリアス魔導学園の教師になっていた...
僕はなんでこうも推しに弱いのだろう...
「あ、うん、よろしく〜」
“あれ、ヘルンファミリーのリーダーじゃない!?”
“なんで学園にいるんだろー!”
“魔法教えて貰えるのかな!?”
いつの間にか辺りは僕の話で持ちきりとなった。
はあ〜帰りたい...
「ヘルン先生〜!」
生徒たちが各教場に向かい、やっと一人になれたかと思った時、書類を持った女性が僕に駆け寄った。
学園に慣れていない僕の案内役のようなものだ。
「セリアさん、おはようございます」
「おはようございます!昨日説明した通り、ヘルン先生には魔法実習の授業の担当をして頂きます!」
「今日は最初の挨拶と、お互いの実力確認といった感じで進めていただければと思います!」
「分かりました、頑張ります」
はあ、憂鬱だな...
僕はとぼとぼと学園の演習場へ向かった。
王立学園なだけあって、廊下もやけに広い。
学園に併設された演習場も、もちろんとてつもなく広く、地面には綺麗に青々とした芝が生えていた。
演習場に足を踏み入れると、生徒たちが一気に集まってきた。
なんだろう、今までたくさんの人に会ってきたのに、すごく緊張する。
これとは比べ物にならない状況を何個も体験してきたのに。
体験したことの無い学校という存在に、僕は興奮と緊張を抑えきれなかった。
「ヘルン先生!魔法実習の担当になられたんですね!お似合いです!」
少し見渡すと、リヒルが笑顔でこちらを見ていた。
アスタやアランも居る。
初回授業がこの三人のクラスだったのは不幸中の幸いだろう。
「今日から魔法実習の担当をします、ヘルンです」
「よろしくお願いします」
“よろしくお願いします!”
“あのヘルンさんだ!どんな授業になるんだろう!”
“もてはやされているけど、実際どうなんだろうね”
生徒間で様々な話が展開される。
学校ってこんな感じなんだ...怖...
「はい、静かにしてね」
「まずはお互いに実力を確認します」
「みんな、とりあえず自分の得意な魔法を一人ずつ使ってみてください」
何人かの生徒は僕に従うのを少し躊躇っていたが、一応みんなが列に並んで魔法を見せた。
ほとんどは初級魔法をそれなりに扱える程度の実力だ。
「はい、じゃあ次はリヒルくん」
「はい!」
「いきます!業火よ、我が命に応じて敵を焼き尽くせ」
「インフェルノ」
炎が渦巻きながら的に突進し、的を消し去った。
炎属性中級魔法。
中級魔法の中では一番高火力と言っていい魔法だ。
この歳にしては上出来すぎる。
火力も大分上がったな。
“す、すげぇ、さすが王子だ”
生徒がざわつく。
無理もないが、これがまた、彼の重荷となっているのだろう。
「じゃあ次はアスタさん、いけるかな」
「は、はい!」
「治癒魔法だよね、どうしようか」
「いえ、水魔法の攻撃魔法で大丈夫です」
お、フィオナが教えたのかな?
「よし、じゃあやってみて」
「はい!」
「水の精霊よ、私に力を与えたまえ」
「アクアボール」
水の塊を高速で飛ばす魔法。
的は砕け散ったが、やはり攻撃魔法はそこまで向いてはいないようだ。
しかし、治癒魔法使いで今の段階だこれだけ使えれば上級冒険者になれるだろう。
その後も様々な生徒が魔法を見せてくれたが、目を見張るものは一人か二人程度しかいなかった。
リヒルたちはこの学園でも上位層のようだ。
少し周りを見ると、アランは少し隅の方で一人立ちすくんでいた。
いけない、アランへの配慮を忘れていた。
そもそも、アランに魔法実習をする上での説明を一切されなかった。
ここは魔導学園、魔法主義者ばかりの場所だ。
もしかすれば、アランは仲間はずれにされているのかもしれない。
「アラン、次は君の番だ」
「え?でも、俺、」
“魔法が使えないやつは可哀想だな〜”
“どうするつもりだろ〜”
周りが少し騒がしくなり、アランは俯いた。
「静かにしろ」
三パーセントのオーラ放出、生徒たちは黙らざるを得なかった。
「アラン、今から魔法を放つ魔法人形を出すから、それと戦って見せて欲しい」
「魔法実習は何も魔法の練習の授業じゃない」
「魔法に対抗する方法、それも歴とした魔法実習だ」
「わ、分かった」
僕は少し強めの魔法人形を出した。攻撃魔法の他に、多少の防御魔法なども操れる。
それは、アランの実力に合わせたものだ。
「さ、頑張ってね」
「う、うす!」
アランは模擬刀も握らず、素手で構えた、
皆、その姿を小声で嘲笑していた。
しかし、アランが踏み込んだ瞬間、その場の空気が変わった。
飛行魔法かのような速さで人形に近づき、次々に攻撃を与える。
魔法人形も上手く防御魔法を当てているが、所々間に合わずに打撃をもろに受けていた。
攻撃を主な行動とする魔法人形が、一切それをせずに防御魔法に徹している。
それほどに、人形にとってアランは強敵だった。
そんなことを考えているうちに、次々と人形にダメージが入っていき、あっという間に人形はバラバラになった。
“あ、あいつ、あんなに強かったのか!?”
“てっきり何も出来ない雑魚だと”
「うん、素晴らしい」
「う、うす!」
そう返事するアランの顔には、少し自信が戻ってきたようだった。
「よし、みんなの実力はだいたい分かった」
「何人かは良いものを見せてくれたが、まだ未熟と言わざるを得ない」
「は?なんだと?A級パーティだ何だともてはやされて調子に乗るのも大概にしろよ!」
最初から少し反抗的だった生徒が立ち上がって言った。
何人かの生徒も、それに便乗した。
「おい、やめておくといい、ヘルン先生は偉大な御方だぞ!」
リヒルも立ち上がってその生徒たちに言い返した。
気持ちは嬉しが、ことを荒立てないで欲しいし、言い過ぎだ...
「そんなに言うならそれ相応のものを見せてみろ!」
反抗的な生徒が僕を指さして言った。
はあ...
「さっきの威圧でわかって欲しかったんだけどな...」
「相手のオーラなどを正確に感じ取ることも、戦闘においては非常に必要なこ」
「いいからはやくしろ!」
「静かに、今授業をしているんだ」
オーラ一割解放、これ以上は身体に軽くダメージが入る生徒が出てきてしまう。
反抗的な生徒も言葉が詰まり、恐れる目で僕を睨んだ。
「まあでも、僕の実力を見てもらった方がみんなにも教えやすいかもしれないね」
僕はオーラを消して言った。
「よく見ておくといい、これが君たちの先生となる人の実力だ」
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
ヘルン、ついに教師になる...!
次の話もお楽しみに!
次話は、6月18日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




