師とはなにか
「三人とも待たせたね、今日は助っ人を連れてきたよ」
リヒルたちの先生を始めてから数日が経ち、三人とも日に日に僕に慣れてきたようだった。
今日連れてきたのは三人、リヒルの先生役にハネスト、アスタの先生役にフィオナ、そして、アランにはカルディアさんを連れてきた。
そう、開国祭での武闘大会で決勝戦まで勝ち上がり、フィリアと相対した選手だ。
流石のフィリアには負けてしまったが、彼の境遇はアランと酷似している。
フィリアより親身になって教えることができるだろう。
ちなみに、カルディアは守護神としての僕からの招集で来ているから、当然招待はバレている。
招待は明かさないという約束の上で、協力してもらっている。
フィリアから彼は義理堅い男だと聞いた。
それに期待するしかない。
「さ、みんなお互いに挨拶して」
「まずは先生側から」
「じゃあ最初に私が自己紹介するね!」
ハネストが手を挙げて言った。
一歩前へ出ると、ハネストは明るく話し始めた。
「私の名前は、ハネスト・アレキサンダーだよ」
「元々イレーネ軍で隊長をしていて、今はヘルンに付き添ってヘルンファミリーに所属してるよ!」
「私が得意なのは氷属性魔法で、剣を使って魔法を放ったり、剣に魔法を乗せたりして戦うよ、よろしくね」
「じゃ、じゃあ次は私がするね」
フィオナはこの三人とあまり年齢が変わらない。
しかし、悪魔は思春期あたりの成長がとてつもなく早い。
見た目では四、五歳差くらいはありそうに見える。
「私はフィオナ、えっと...」
そう、任命式でもこうだったが、元悪魔であることは基本的に隠す方針にしている。
僕の政策で人間と悪魔の距離が近くなったのはなったのだが、未だに厚い壁を破れ切れてないのだ。
頑張れ...フィオナ...!
「私は水属性魔法が得意で、その中でも治癒魔法をよく使うよ、よろしくね」
うん、いい挨拶だ。
少し大人になったな。
「俺はカルディアだ、体術を得意としている、よろしく頼む」
淡白だが、戦士って感じがしていい。
「じゃあ次は生徒諸君!」
「はい!僕はリヒル・ウォリアスです!このパーティのリーダーをしています!」
「ハネスト先生と同じく魔法剣士を目指してます!」
「俺はアランだぜ!魔力が無いから、剣士一本で行くつもりだぜ!よろしく!」
「もうアラン!敬語使いなさいよ!」
「私はアスタです、治癒魔法使いを目指してます」
「えーっと、よろしくお願いします!」
アスタは幼いところが残りながらもしっかりしている。
リヒルも王子として育てられたからか品がある。
アランはまあ、年相応に元気でそれもまたいいだろう。
「よし、挨拶もこれくらいにして、各自担当のところにばらけて、早速授業を始めてね」
「僕はやらないといけないことがあるから一旦離れるね」
「後でまた見に来るよ」
そう言い、僕は訓練所を出た。
やらないといけないこと、は実は特にないのだが。
僕がいれば先生側も生徒側も、関係が深い僕に頼ってしまうだろう。
しばらくはこのままマンツーマンでしっかりやってもらおう。
じゃ、僕はお散歩でもしよっと。
〜一方その頃ハネストは〜
「リヒルくん、よろしくね!」
「ハネスト先生、よろしくお願いします!」
この子って王子なのよね...
いや、ヘルンからはあくまで先生と生徒としてって言われたし、これで合ってるよね...?
うん、合ってるはず、!
「リヒル君は魔法剣士を目指してるんだよね?」
「はい!」
「具体的にどんな風になりたいか教えてくれる?」
「えっと、僕は炎属性魔法を使えるので、それで戦ったり、それを剣に乗せて戦ったり、ですかね」
「うんうん、魔法剣士の王道って感じだね」
「でもヘルンから聞いたけど、魔力が少ないんだっけ?」
「はい、なので今ヘルン先生の指示のもと魔力増強訓練をしています」
「うーん、私もそうだけど、上級魔法やそれ以上の魔法は消費魔力が大きいんだよね...」
「それに比べて剣に魔法を乗せる魔剣化は最終的な消費魔力は多いけど、瞬間的な消費魔力は上級魔法とかとは比べ物にならないくらい少ないから、そっちの方がいいんじゃないかな」
「なるほど...」
リヒルくんがしょんぼりしちゃった!?
魔法が使いたかったのかな、どうしよう!
「まあどちらにしても、ヘルンから教わった魔力増強訓練は続けた方がいいよ!」
「それに、私もヘルンに出会う前は最上級魔法を一発打ったら倒れちゃってたの」
「でも今は、複数の最上級魔法を同時に展開出来るくらいにまで成長できた」
「リヒルくんは確かに魔力に関して他の人より優れてないかもしれない」
「でも、努力すればそんな差は一瞬で埋まって、その人たちよりも圧倒的に強くなれるから」
「一緒にがんばろう?」
私はめちゃくちゃ焦りながら言った。
リヒルくんの顔をちらっと見ると、しょんぼりはしていなかった。
「は、はい!頑張ります!」
リヒルくんの瞳にまた光が戻り、私はやっと落ち着いた。
ふぅ、さて、何から教えようかな〜。
魔法に関してはヘルンに任せた方がいいよね。
「じゃあ、剣術しようか」
「軍の剣術を教えてあげる」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
私は模擬刀を借りてきて、リヒルくんの前に立った。
「よし、じゃあ早速」
私は一切の準備行動をせずにリヒルくんに模擬刀を振った。
頭の横に拳一個分程度の隙間を空けて剣を止めた。
リヒルくんの顔が青ざめる。
「剣を持ってる間は気を抜いちゃだめ」
「実践だったら死んでたよ」
「わ、分かりました」
リヒルくんは顔を少し強ばらせて、剣を構えた。
構えは軍のものと同じ。
恐らく幼い頃から軍の剣術をある程度教わったのだろう。
「よし、じゃあいくよ!」
私は再びリヒルくんに襲いかかった。
今度は一撃目は反応されて止められたが、そのままリヒルくんの剣を流し、剣を少し持ち替えてリヒルくんの横腹に振った。
「これが軍の剣術の本質だよ」
「軍の剣術は冒険者みたいな一撃必殺を想定してないの」
「相手と剣をぶつけてから、いかに相手の隙を捉えて先に攻撃するか」
「相手との読み合い、瞬発能力、それらは魔法ではどうにもならないから」
「なるほど、もう一回お願いします!」
「そう来なくっちゃ」
私とリヒルくんはそのまま何戦も何戦も剣を交えた。
軍剣術の最も効率的な習得方法は対戦を重ねることだと言わている。
私もそう思う。
ただ力や技だけではない軍剣術は、実際に相手が居ないとなかなか身につけられない。
「よし、これくらいで終わろう」
日が少し暮れてきて、私は対戦練習を終わらせた。
「僕はまだいけますけど」
「うん、分かってるよ」
「じゃあ、もういっせ」
「腕立て伏せ」
「...え?」
「上体起こし」
「走り込み」
「他にも重量系もやって欲しいけど、今は成長期だからそれは大人になってからでいいかな」
「な、何の話ですか?」
「何の話って、やるんだよ?」
「え?」
お互いにキョトン顔で目が合った。
「剣士は体が資本!魔法にも体力とかは必要不可欠だってヘルンも言ってたし!」
「なるほど...うぅ...」
「さ、私も一緒にやるから、頑張るよ!」
「は、はい...」
あれ、なんか私スパルタの時のヘルンみたいじゃない?
まあ、いっか!
久しぶりに鍛えるぞ〜!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
ハネストもついに先生に!
ドジなところもあるが、ちゃんと先生をやり切れるのか!
次の話もお楽しみに!
次話は、6月11日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




