高貴な少年団
「いいかい?リヒルくん」
「今君に必要なのは、魔力の蓄積上限を底上げすることだ」
「僕が教える秘密の技は、確かに体内魔力の少なさを補うことが出来る」
「でも、一度に消費しなければならない魔力量は魔法によって増えていく」
「上級、最上級魔法を使う時に、何度も魔力を切らしていたら体がもたない」
「なるほど...自分に出来ることを教えて下さい!」
「なら、一つだけ聞いていいかな」
「はい!なんでも!」
「君は、なんで強くなりたいのかな」
「なんで、強くなりたい...」
「うん、それを聞かないことには、何も教えられない」
「将来、父のような勇猛な王になりたいから、です」
リヒルは暗唱するかのように言った。
まあ王子だもんなー、色んなしがらみがあるんだろう。
でも、
「本当にそれが目的なんだとしたら、僕は君に何も教えたくない」
「え...」
「自分の心を貫けない人間は、強くはなれないからね」
「⋯」
「これが最後だ、君の将来の夢は?」
「⋯」
「じゃあ、僕はもう行くよ」
僕はリヒルに背中を向け、歩き出した。
「私、いや、僕の夢は、冒険者としてこの世界を旅することです!」
「仲間と共に気ままに生きて、たまに頑張ったりして、誰かを助けちゃったりもして」
「僕はもっと、自由に生きたい」
リヒルが心から絞り出した言葉には、魂が篭っていた。
僕はクルッと振り返り、笑顔を見せた。
「よし!じゃあ始めるぞ!」
「はい!」
「じゃあ、ファイア、やってみて」
「ファイアですか?」
「うん、簡単でしょ?」
「まあ、分かりました」
リヒルは杖を懐から取り出した。
「ダメだよ」
僕はリヒルの杖を取り上げた。
「え、杖無しでどうすれば」
僕は的の方を向いて指さした。
「見ててね」
「ファイアアロー」
指先に炎が現れ、瞬時に矢の形を形成し、的に向かって猛進した。
瞬きする間もなく、的は燃え尽きた。
「凄い...杖も何も使わずに、魔法を...」
「杖は媒体に過ぎない」
「確かに杖は魔力を向上させたり、魔法の展開スピードを早めたりする」
「だけど、いざとなった時、杖が折れたらどうする?」
「今の君では、強者に屈することしか出来なくなってしまう」
「なるべく無駄を省く、戦闘においてはとても大切なことだ」
「確かに...冒険者になるなら常に危険と隣り合わせ」
「緊急時の対処法を考えないといけないのか」
「そういうこと」
理解が早くて助かる。
「じゃあ、とりあえずやってみて」
「はい、やってみます」
リヒルは目を瞑り、眉間に皺を寄せた。
指先をプルプル震わせながら、力を振り絞っている。
「力を抜くんだ」
「杖に魔力を流すのと同じように、指先に魔力を集中させるんだよ」
「深呼吸して」
「分かりました」
リヒルはゆっくりと深呼吸をして、再び目を閉じた。
見るからにリヒルの体内魔力が指先へと集まっている。
「さ、詠唱して」
「ファイア」
ポッ
リヒルの指先に火が灯った。
僕が初めてした時よりは大分小さい火だが、それは魔力量によるものだ。
これでもう、彼は杖の呪いから解放された。
「出来たね」
「出来ました...!」
リヒルはワクワクした目をこちらに向けた。
その瞳には年相応の光が戻っていた。
「火を消さない、ここからが修行だよ」
「わ、分かりました!」
「魔力が切れるまで、火を灯し続けるんだ」
「魔力が切れたら倒れちゃうんじゃ」
「そうだよ、そのために僕がついている」
「思う存分気を失うといい」
「えぇ...」
「めっちゃしんどいからね、覚悟しておいて」
「既に、結構、きついです」
魔力量的に、もう限界が来てしまうのか。
これは大変そうだ。
「毎回、頑張って意識を保とうとするんだ」
「その方が上限上昇効率が高くなる」
「なるほど...」
「でも、もう、げん、かい、か、も...」
リヒルは指を立てながら倒れた。
地面に落ちる前に受け止め、持ち上げた。
「まだまだ軽いな」
「今日はこれくらいにしておこう」
彼をベッドまで運び、召使いさんに説明して王宮を出た。
気づけば日が沈みかけ、宿に戻るとみんなが待っていた。
「おかえりヘルン、遅かったね」
「ああ、ちょっと弟子が出来てしまってね」
「お兄ちゃん、私は!?」
「はは、ヘレナも今度一緒に特訓しよう」
「うん!」
「私も行きたい!」
フィオナが右手を上げて名乗り出た。
「そうだね、フィオナも一緒に特訓だ!」
「ずるーい、ねぇ?アイシー」
ハネストがジト目で見てくる。
「そうね〜、ずるいわ」
アイシーまで...
「もう、今度みんなで一緒に特訓しよう!」
ハネストとアイシーがハイタッチした。
はめられた...
もうー!僕は学校の先生じゃないんだぞ!
翌朝、僕はまた王宮へ向かった。
「おはよう」
「おはようございます!ヘルンさん!」
リヒルはしっかりと寝て元気そうだ。
昨日の件もあってスッキリしたのかもしれない。
あった当初より顔色がいい。
「で、その二人は?」
何故か、リヒルの隣に少年と少女が一人ずつ居た。
「この二人は、アランとアスタ、僕のパーティの仲間です!」
「パーティ組んでたんだ」
「はい、ウォリアスでは、王になるためにみんなから認められるような功績を残さないといけないので」
「冒険者として修行するのが慣習となっているんです」
「なるほどね」
どちらにしろ一度冒険者にはなる予定だったのか。
ただリヒルは、そのまま仲間と旅がしたいと。
いい夢だ。
「二人とも、よろしくね」
「は、はい!よろしくお願いします!」
アスタが焦りながらお辞儀した。
「お兄さんってあのヘルンファミリーの!?すげー!」
茶色の短髪で模擬刀を片手に握るアランは、見た目通り活発な子のようだ。
それにしてもこの子、魔力がないのか?
魔力を全く感じない。
「ちょっとアラン!まずは挨拶でしょ!」
薄い水色の髪を靡かせるアスタは大人しめっと...
「で、三人のパーティの名前は?」
リヒルの方を見て聞くと、リヒルは少し頬を赤らめて言った。
「バーニングソード、です...」
「ふーん、燃える剣ね〜」
僕は少しニヤつきながら言った。
リヒルは顔を真っ赤にして俯いている。
可愛い。
「僕、剣に炎魔法を乗せて戦うのが一番得意なんです」
剣を媒体とするのは簡単だけど、剣に魔法を乗せるのは至難の業だ。
これが天賦の才といったものだろうか。
「二人は、なにを学びたいんだい?」
「俺、魔力無いから、剣術を極めたい!」
やっぱりか。
普通、どんな人間でも魔力を少なからず持っている。
でもごく稀に、魔力を全く持たずに産まれてくる子が居る。
その子たちに共通する特徴は、超人的な身体能力を持つこと、らしい。
「そうか、じゃあ僕が剣術を教えよう」
「お兄さん、剣も使えるのか?」
「うん、僕、結構剣術得意だよ」
「私は、治癒魔法を練習したい、です」
まあ、リヒルが火力、アランが火力補助とすれば、アスタは補助、治癒を担うのがパーティの基本か。
「分かった、治癒魔法に関しては僕以外にも詳しい人が居るから、今度紹介してあげる」
「僕もそれなりには使えるから、一緒にがんばろう!」
「はい!」
「リヒル、君は昨日のやつずっとやっててね」
「え...あ、はい...」
しょんぼりした様子で返事するリヒルは、昔の僕を再び彷彿とさせた。
頑張りたまえ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
少年団を育て始めたヘルン、また色んなハチャメチャが巻き起こる!かも?
次の話もお楽しみに!
次話は、6月7日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




