世界の王と一国の王子
「守護神様、突然お呼びしてしまい申し訳ございません」
僕は今、国王からの呼び出しで王宮に来ている。
何事かと戸惑いながら部屋へ入ると、既に跪いていたクレフティヒ王が話し出した。
「本当は私から出向きたかったのですが、この立場上、なかなか叶わず、来ていただくことになりました」
「いえいえ、僕が自分の身分を隠したいゆえに起きたことですから」
「気になさらず、それと、お立ち下さい」
「ありがたきお言葉」
「では、そちらにお座り下さい」
そう言い、僕が座るのを確認してからクレフ王も腰をかけた。
ソファはふかふかだった。
「それで、なんの御用ですか?」
呼び出されただけで、僕は用を聞かされていなかった。
「冒険者協会から、ヘルフェン様が御仲間の方々と共にS級を目指されていると聞きました」
「そうですね、S級パーティがこの国に必要だと聞いて」
「ずっとこの国に居ることは出来ませんが、各国を回る際にその称号は役に立ちますし、ウォリアスに何かあった時にも動きやすいので」
「いや、ヘルフェン様の手腕には感服です」
「ウォリアスとして、大変助かります」
「それに関してなにか?」
「はい、S級昇格についてお話がありまして」
お、きたか!
実は、S級パーティは師匠以来生まれておらず、その昇格条件も公的に定まっていないのだ。
昇格について聞きたいと思っていたのだ。
「なんでしょうか」
「それが、S級昇格条件が決まっていないのです」
「え?」
王宮ですら決まってないの...?
「最新のS級パーティですら百年以上前のこと」
「その時は悪魔がバシレイア全域を襲い、それの鎮圧で活躍したことで、S級に昇格したそうです」
「つまり、こちらからS級を目指すと言うよりは、それ相応の事件が起きて、それを解決出来れば認められるということですか?」
「面目ないですが、そういうことになります」
これは非常に困った。
S級昇格相当の活躍ができるかどうかには自信があるが、それが起きるかどうかは完全に運任せ。
それに、そんなこと起きないに越したことはない。
つまり、今の最高ランクはA級ということになる。
役割はさぞ変わらないが、S級を目指していた者としては少しショックだ。
「なるほど、ではヘルンファミリーの目標はとりあえず保留ですね」
「申し訳ありません」
「現在、至急S級昇格について会議を行っていますが、滅多に起きないことゆえなかなか話がまとまらず」
「何か決まればすぐにお伝え致します」
「はい、よろしくお願いします」
「では、これで」
何も気にしていないように部屋を出たが、内心は結構萎えていた。
ここ最近の目標が達成出来ないとみんなに伝えるのも億劫だった。
王宮内をとぼとぼと歩いていると、人とぶつかってしまった。
相手はまだ幼く、倒れてしまった。
僕が咄嗟に謝ろうとするより早く、相手は謝罪した。
「前を見てなくて、ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ前を見てなくて」
十歳くらいに見える少年は、本を片手に立ち上がった。
金髪で、青い瞳をしている。
どこかで見たことがある気がする。
「あ!ヘルンファミリーのヘルンさん!?」
「は、はい、そうですけど...」
「任命式のとき、ぼ、私も参加していました!」
任命式の時...あ!クレフ王の息子か!
「これは、王子様でしたか」
「御無礼をお許しください」
「いえ、全然!ヘルンさんと一度話してみたいと思っていたのです!」
王子が僕と話したいなんて、何を話したいんだろう。
「なんなりと」
「私は魔法を練習中でして、ヘルンさんは魔法の達人だとお聞きしました」
「是非、私に魔法を教えて欲しいのです!」
なるほど、そんなことなら喜んで引き受けよう。
だけど、
「ウォリアス王から許可が降りたら、喜んでお引き受け致します」
「わ!やったー!今すぐ許可を取ってきます!」
そう言うと、少年は王室へ走っていった。
それにしても、魔法を教えるのか...
今まで魔法をちゃんと教えたのはヘレナだけ。
ヘレナは元から魔法適性が物凄かったから簡単だったけど、普通の人間に教えるのは初めてだな。
「ヘルンさーん!父上から許可を貰ってきましたー!」
え、早くない?さっき行ったばっかりなのに。
王子はこちらまで走り寄り、僕の手を掴んだ。
「改めて、リヒル・ウォリアスです!よろしくお願いします!」
その姿に、僕は昔の自分を見た気がした。
「じゃあ、まずは自分の中で一番強いと思う魔法を的に向かって打ってみて」
王からの許しが出て、僕たちは軍の演習場を借りて練習を始めた。
何かを教える前に、まずリヒルの実力を知る必要がある。
「一番強い魔法...出来るか分からないけど、やってみます!」
そう言うと、リヒルは的を見つめ、杖を向けた。
普通の人は、魔法を放つ時には何らかの媒体となるものを使うらしい。
ハネストが魔法を放つ時に剣を使っていたのは、そういう事だ。
まあハネストも途中から使わなくなったからなんとも言えないけど...
アディナモスとか言う奴も使っていた。
人間界では魔法を放つ時は杖を使うのが基本らしい。
リヒルは深呼吸をすると、詠唱を始めた。
「火炎よ、矢となり敵を貫け」
「ファイアアロー!」
そうリヒルが唱えると、炎の矢が的の真ん中を焦がした。
展開スピードも、速度も、精度も、問題ない。
ただ一つだけ、火力、つまり魔力が弱すぎる。
ファイアアローなら、このくらいの的は消し去ることが出来る。
「いいね、少し体内魔力を見させてもらうよ」
「はい!」
リヒルの魔力を見ると、それはとても脆弱なものだった。
あるかないか分からないほどの微少な魔力。
これなら、あの程度の火力になるのは当たり前だ。
「リヒルくん、少しショックなことを言ってもいいかな?」
「は、はい、それで魔法が上手くなるなら!」
「君の魔力蓄積限界量は非常に少ない」
「その上限を上げることは出来るけど、それをしても普通の人間程度くらいにしか到達しないと思う」
「え...」
リヒルの顔が明らかに曇り、目は潤いを得た。
「じゃ、じゃあ私は、もう魔術師にはなれないのですか」
戦闘職には大きくわけて二つの分野がある。
魔術師と剣士だ。
低レベルになるほど剣士が強く、高レベルになるほど魔術師が強いと言われる。
つまり、剣士は元からそれなりに強く、成長しやすいが、上限がさほど強くはない。
魔術師は最初はとても弱く成長もしにくいが、ほぼ永久に強くなれる。
一流の冒険者に魔術師が多いのはそういう事だ。
剣聖の集いも、剣士として成長限界を迎えたと言って過言ではない人達が、そこに魔術を混ぜることでとてつもない火力を出しているらしい。
魔力の蓄積限界量が非常に少ないということは、基本的にこれらの進路を絶たれるということになる。
そう、基本的に。
「安心して、リヒルくん」
「僕の蓄積限界量も最初はそんなに多くなかった」
「今も、普通の人よりは多いけど、仲間のほとんどに負けているんだ」
これは正真正銘の事実だった。
フィリアはもちろんのこと、アイシーやハネスト、ヘレナですら、僕よりも魔力蓄積限界量は圧倒的に多かった。
「それでもここまでやってこられたのには秘密があるんだ」
「秘密...教えてください!」
「いずれね、君にはそれを習得する前にやることが山積みだ」
「魔法技術の向上、上級魔術の習得、魔力蓄積限界量の増強」
「僕の秘密の技を習得しても、魔力蓄積限界量が全く関係無いわけじゃない」
「まずは普通の人くらいには上げていこう」
「わ、分かりました!」
「コレガイチバンジゴクダケドネ」
「え、何か言いました?」
「いや、気にしないで大丈夫だよ、早速やって行こう」
「はい!」
昨日投稿予定だったのを1日ずらしてしまい、申し訳ありませんでした!
ここまで読んでくださりありがとうございました!
新たな弟子の誕生!お節介ヘルンに熱が入る!
次の話もお楽しみに!
次話は、6月4日に投稿します!
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