神の実力
A級パーティ任命式、勲章を授かり、大歓声の中席へ戻っていった。
宰相と国軍総長も席に着くと、今までほとんど話さなかった国王が立ち上がり、迫力ある声量で語り出した。
「この国に、二つ目のA級パーティが生まれたこと、喜ばしく思う!」
「近頃はダンジョンやら魔物やらが異常行動を取るようになり、軍だけではやや手に余っていた」
「この二つのパーティがA級として様々な大事を解決し、やがてはS級となってウォリアス、引いてはこの世界の安全を築いてくれることを期待している!」
国王の言葉に、会場は再び湧いた。
さすがウォリアスの国王、その絶大なオーラで、もはや国の中で誰が最適な国王なのかなど考える余地さえ与えない。
儀式的なものが終わり、ヘルンファミリーのお披露目会のようなものが始まった。
僕ら一人一人の軽い説明がされる。
「リーダーヘルン様の右から、ハネスト・アレキサンダー様」
「元イレーネ軍第一軍団第二部隊隊長」
現在、ハネストは守護神防衛隊に所属している。
だが、守護神防衛隊はその仕事内容の重要性から、メンバーは一切非公開で、各国の国王程度しか知らず、配下に教えることも禁じられている。
ハネストは、普通に軍を辞めたという設定になっている。
「氷の剣姫と呼ばれ、現役時代はその名を轟かせていました!」
「現在はヘルンファミリーの副リーダーを務めているようです!」
みんなハネストのことを知っているようで、会場はハネストの名を何度も叫んだ。
ハネストはとてつもなく恥ずかしいのか、顔を隠して俯いた。
「その右、フィリア様」
「彼女に関して一切の情報がありませんが、姿を現してからリーダーヘルンに次ぐ火力枠として活躍されているようです!」
「ハネスト様と同じ副リーダーをされています!」
「その右、アイシー様」
「彼女も情報がありませんが、フィリア様同様戦闘においてヘルン様サポートをされているそうです!」
「その右、ヘレナ様」
「彼女も...情報がないようですね」
「火力、補助、様々な役割が出来るようで、まだ成長過程故、今後の活躍に期待、とのことです!」
「その右、フィオナ様」
「彼女も...情報なし...」
「えっと、治癒魔法を得意としており、治癒魔法だけで見ればヘルン様に並ぶとのことです!」
「その右、アンナ様並びにククリ様」
「御二方については...まだよく分からない、とのことです...!」
明らかに、会場が盛り下がっている。
何せ、うちのパーティはほとんどが元悪魔、アンナとククリに関しては本当に僕も何も分からない。
「その右、クロ様」
「シルバーウルフの上位種であるブラックウルフであり、シルバーウルフたちによる人海戦術を得意とし、ヘルンファミリーのマスコットキャラクターのようなもの、だそうです!」
そう、情報がない部分に関しては、事前に僕に質問され、みんなの役割や特徴は僕が言ったことを反映しているのである。
クロの方をちらっと見ると、明らかに怒っていて、少し面白かった。
会場が異質な紹介に戸惑う中、僕の番が来た。
「さあいよいよ、皆さんお待ちかねのヘルン様です!」
「彼に関しては、ヘルン様からも何も聞けなかったため、本当に何も情報がありません!」
「え」と聞こえてきそうなほど会場は盛り下がり、みんな、なんなんだこれはと、疑問と怒りの混じったような顔をしている。
その時、観客席の一部からある声が聞こえ、それがやがて会場全体に広がった。
「こんな正体不明なパーティをA級にしていいのか!」
いずれそれはコールのように何度も叫ばれ、会場はある意味湧いた。
国王の方を見ると、目を瞑っているが、明らかにキレている。
まあ、僕の正体を知っている国王からすれば、この状況は守護神に対する侮辱行為に他ならない。
バシレイアは特に守護神への信仰心が強い世界だ。
その世界の国王が、こんなことを許容できるはずがない。
でも、怒りに任せて自分の身分をバラされても困る。
国王がついに動こうとした時、僕はその場で立ち上がった。
国王もそれには少し驚いたようで、こちらを見て少し固まった後、元の姿勢に戻った。
普段、僕は自分のオーラ、魔力や実力から生み出される威圧感を極力消している。
これは死神修行の時に師匠に教わった。
それを常時しておけと、師匠は強く言った。
なぜなら。
僕は自分のオーラを三割ほど放った。
その瞬間、会場の人々は口をつぐみ、頭を抱えた。
恐怖心、そのような言葉では片付けきれない感覚が、人々を襲った。
兵士たちでさえ、フラフラとしている。
中央の壇上の人と、その傍についていた兵士たちは、一瞬目を見開いたが、流石と言うべきか、元の体勢のまま耐えている。
数秒して、僕は再びオーラを消した。
人々は皆、ハアハアと息をし、中には気分の悪くなっている者もいたようだった。
「これで分かっただろう」
「この者らの実力はA級パーティに相応しいと言えよう」
国王が大きな声を響かせた。
この状況で、それに異を唱える者は誰一人として現れなかった。
ヘルンファミリーの実力は、ウォリアスの人々の脳裏に、強制的に刻まれることとなった。
式が終わると、僕は真っ先にある人の元へ向かった。
「あの、ちょっと時間ありますか?」
「え、あ、はい、ヘルン様の御用でしたら」
それは、あの時の青年だった。
少し細身な体型に、凛とした可愛らしい顔をしている。
しかし、放たれるオーラと視線は、大人よりも力強いものがあった。
「君、あの時居たよね」
「平原での魔術師無力化作戦ですか?」
「た、たぶん?」
そんな名前だったんだ。
「やはり、あの時の魔術師がヘルン様でしたか」
「最初は気づきませんでしたが、先程のオーラで気が付きました」
「そうそう、それで、あの時、君だけが僕の魔法に耐えきったよね」
「あの大規模なパラライズですか」
「命を奪わない程度の加減されたものだったので、なんとか」
「いや、そこじゃなくて、僕はあの時、障壁を壊すヘルフレイムと、パラライズを零点零一秒の誤差で放った」
「それに反応できたのは君だけだった」
「なんというか、別に反応できた訳ではありませんよ」
「体が勝手に、というか」
「強いて言うなら、直感...?」
...え。
流石は天才、というもので片付けていい話なのか?
圧倒的な戦闘センスはこんな神業すら起こせるのか。
いや、にしてもでしょ...
「なるほど...ありがとう」
「いえ、では私はこれで」
「うん、これからもよろしくね」
敬礼をすると、彼はロイ団長の後を小走りで追いかけた。
この世には、僕が予想もできないことがあるもんなんだな...
久しぶりに、自分の無力さを感じた。
その日の夜、僕は草原に出てひたすらに魔法の練習をするのだった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
ヘルンの真の実力とは...もはや私ですら分かりません...
次の話もお楽しみに!
次話は、5月31日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




