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A級:ヘルンファミリー

「体調はどう?ククリくん」

アンナとククリを保護してからしばらく経ち、ククリも徐々に体力を取り戻しているようだった。

「ククリ、早く元気になるんだぞ」

アンナが無機質に言った。

だが、アンナは宿にいる時はいつもククリの傍について、看病していた。

ククリを家族として大切におもっているのだろう。

「随分良くなりました!アンナ様のおかげです!」

「いや、お前を蘇生させたのはこのヘルンだし、お前に治癒魔法をかけたのはフィオナさんだ」

「なるほど?」

「アンナ様はこの人たちとご一緒になるんですか?」

「ああ、とりあえずそのつもりだ」

「じゃあ、僕も仲間に加わります!」

「当然、ククリはずっと我と一緒だ」

「アンナ様〜!」

ククリがアンナに抱きついた。

アンナは明らかにそれに抵抗した。

「おい!やめんか!離せ!」

ツンデレ、なのかな?

そのまま二人がじゃれ合いだしたので、僕は空気を読んで部屋を出た。


中央ダンジョン、無限の迷宮は急速に埋まっていき、ただの平地と化した。

元々ダンジョンの入口があった場所は、周りよりも低く矢などが外へ出にくいため、冒険者の演習場となった。

ウォリアスはダンジョンから採取される魔石で稼いでいる国だから今後の財政を心配したけど、ダンジョンはそれなりの数があるし、今のところ急になにかに影響するほどではないらしい。


今日、ヘルンファミリーは正式にA級パーティに昇格する。

B級昇格の時とは違い、A級は国家権力級、パッとなれるものでは無い。

国軍総長から任命される形となる。

これから、僕らは公衆の面前で勲章を授与される。

その場には、例の剣聖の集いというパーティも参列するらしい。

僕らをA級として認めたのは他でもなく彼らだ。

直接会ったことはないが、人間でA級になったということは、相当な手練れなのだろう。

ヘルンファミリーが公の場で何かをするのはこれが初めてだ。

印象は大体第一印象で決まる。

細心の注意をはらわなければ。

その時、僕の部屋にハネストが入ってきた。

「ヘルンー、そろそろ行く?」

声からして、余裕がありそうだ。

ハネストは軍にいた時は天才として様々な栄誉を受けていた。

こういうのは慣れているのだろう。

僕もそのはずなんだけどな...

「ああ、そうだね、そろそろ行こう」

僕は少ししょげながら正装に着替えた。

死神として着ていたものだが、死神の前でしか来たことがないから、まあ大丈夫だろう。


準備が整うと、みんなを集め、任命式を行う場所に向かった。

ククリは宿にいることを勧めたが、どうしても行きたいと言って、もうある程度のことは出来る程度まで回復していたので仕方なく連れてきた。

軍の第一演習場、十万人弱を収容することが出来る、とにかく大きい場所だ。

この任命式には、冒険者たちはもちろん、ウォリアス中の人々が見物に来る。

この二人はまだ人間慣れしていない、大丈夫だろうか。


第一演習場に着くと、国軍兵士が傍に来て、敬礼をした。

「国軍第一軍軍団長のロイ・フラムであります!」

「A級パーティ、ヘルンファミリーの皆様を、お席までご案内させていただきます!」

「よろしくお願いします」

僕は朗らかに挨拶した。

だが、傍らからハネストが焦る様子で囁いた。

「第一軍団って、ウォリアス国軍の中でも最強の軍団って言われてて、超絶エリートだけで構成された軍団なんだよ!」

「無敗の軍とも呼ばれてて、今まで各国との戦争とか、ダンジョン攻略とかでも負けたことがないの」

「第一軍団だけで、中央ダンジョン二十階層のボスを討伐してるんだよ!」

そうか、冒険者のここ数十年の最高記録が十八階層なだけで、軍は二十階層までは行ってたんだな。

まあ、人数も全然違うし、比べようがないか。

「その団長って、階級的には違うけど、実質的には国軍総長の次に影響力を持ってるって言われてるんだから!」

なるほど...

でも、もう国王とかにも礼を尽くされてしまったし、そこまでは驚けなかった。

ハネストはやはり元軍人として、上官に先に敬礼されてしまったことが大分気まずいのだろう。

この人が身分を言った時、ハネストは大慌てで敬礼していた。

焦っているハネストを見ると、僕の心が何故か和んだ。


ロイさんに案内されて、僕らは演習場の中央の台に並ぶ豪華な席についた。

クロには、いかにも質の良さそうな座布団が用意されていた。

横を見ると、国王クレフティヒ・ウォリアスがその席群の中央に堂々と座っていた。

その横には爽やかな青年、恐らく彼の息子だろう。

そして厳つい男や圧倒的なオーラを放つ人達が座っていた。

国の上層部と剣聖の集いの人たちなのだろうが、剣聖の集いの人たちのオーラは人間のそれではなかった。

ハネストは間違いなく人類最強級、なのに、それに並ぶオーラを放っている。

さすが、A級パーティだ。


壇上の席が全て埋まると、会場は徐々に静まった。

厳かな空気が流れると、いよいよ僕の緊張は最高に達した。

ロイさんは僕らが座る壇のすぐ近くに立っていた。

数人たっているのを見て、軍の上層部が立っているのだろう。

彼の後ろには、見覚えのある青年が立っていた。

ウォリアスに着く前に軍と戦った時の。

僕の攻撃に唯一耐えた兵士。

「彼は...」

思わず声が漏れた。

すると、隣に座っていたハネストが彼の身分を教えてくれた。

「彼は、史上最年少でウォリアス軍副団長、しかも第1軍団の副団長に上り詰めた天才なんて言葉じゃ表しきれない逸材よ」

「なるほど」

あの時も、一人だけ僕の魔法に反応した。

あの時の団長はロイさんではなかったし、援軍として同行していたのかな。

そんなことを考えていると、宰相と見られるおじいさんが壇上の中心に立ち、開式宣言した。

「これより、冒険者パーティ、ヘルンファミリーのA級任命式を執り行う!」

「国軍総長グロース・アルティヒ、ヘルンファミリーリーダーヘルン、前へ出よ」

「は!」

やはりと言ったところだろうか、この中で一番厳つい男が前へ出た。

貫禄ある体を包む鎧は日光を反射させ、彼の偉大さを表した。

僕も遅れないように立ち上がり、前へ歩いた。

何万人もの視線が、自分に集まっていることを感じ、足取りは少し不安定だった。

グロースが手に持っていた巻物を伸ばし、読み始めた。

「冒険者パーティ、ヘルンファミリー」

「貴殿らは数多くの偉業を成し遂げ、冒険者協会のみならず、国家の運営さえも手助けした」

「その実力と功績を認め、貴殿らをA級パーティとして認める」

「よって、ヘルンファミリーを代表して、ヘルン殿にこの勲章を授ける」

そう言うと、僕のローブに左胸の位置に、光り輝く金色の勲章を付けた。

手のひらより二回りほど小さい大きさで、冒険者協会の紋章の交差する剣と、軍の紋章の鷲が描かれている。

これは、A級パーティが、ただの冒険者ではなく、国に認められたパーティであるということを示していた。

会場が湧くかと思ったが、予想とは裏腹に、会場は静まり返っていた。

人々からの視線を感じる。

僕が何か言わなければいけないことは明らかだった。

しまった、この流れを予想していなかった。

今までもこうだったじゃないか!

な、何を言おう...

どうしよう、何も思いつかない...

「私たちは、いや」

言葉が詰まった。

唾を飲み、もう一度言い直した。

「僕たちは、最強になる」

僕が言ったのは、その一言だった。

それを放った瞬間、地震が起きたかのように会場が揺れた。

とてつもない大きさの歓声に包まれ、皆が僕らを賞賛した。

前世の孤独な生活とは真逆な状況。

そこで初めて、僕の緊張は解け、口角がゆっくりと上がった。

飛び跳ねたくなるのを抑えて、僕は自分の席に戻っていくのだった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


ヘルンファミリーはついにA級に到達。

これからの活躍と旅路に要注目!

次の話もお楽しみに!


作者の事情により、一週間近く投稿を休んでしまい、お待ちになって下さっていた方々、すみませんでした。

その補填と言ってはなんですが、本日と、明日も投稿させて頂きます!

次話投稿:5月28日


ご意見、ご感想、お待ちしております!

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