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未知の種族

「ククリは、死んでしまったのか」

「ならば、そなたらも死ね」

師匠を思わせる圧倒的なオーラ。

僕一人で敵う相手では無い気までしてしまう。

そう、神族で最も強い階級である神王の僕でさえ、今、明らかな恐怖を感じているのだ。

能力だけで見れば、神族は数ある種族の中でも頂点辺りに位置する。

神族より上位の存在は、未だ一種しか確認されていない。

しかし、その種は数万年に一度程度しか生まれず、同時に二個体は存在できないという条件で絶大な力を得ている。

そして今存在するその種は、保護という形で神族が常時監視をしている。

つまり、ここにいるのはその種ではない。

未知の種。

ここまでの能力持ちとなるともう新種は見つからないと言われていたが、まさかこんな所で出会うとは。

人間の女性の姿をしているが、明らかに人外。

これほどの力にどう対処すればいいのか。

ただ、力を持つには、様々な条件が加わる。

例えば、死神は魔力が完全に尽きれば死ぬことや、生き物からしか魔力を吸うことができないことなどで莫大な力を得ている。

つまりこの種も、何かの弱点を抱えた上で、こんなオーラを放つほどの力を得たはずだ。

その弱点をつくことさえできれば、勝機はあるかもしれない。

まずはそれを見つけるまで、フィリアを守りつつ時間を稼がなければならない。

しかし相手は僕をやる気満々なようだ。

今にも魔法を展開して、僕の存在を消してしまいそうだ。

フィリアを連れて安全なところへ転移するのが、手段としては正しいのかもしれない。

しかし、上階にいるみんなを連れて行くことができても、ウォリアスの人々を全て転移させることは今のコンディションではできない。

そうなれば、ウォリアスの人々だけでなく、バシレイアの人々のすべての命が危険にさらされる。

そうなる事はきっと、僕の家族たちは望まないだろう。

ならば、家族の大切な人を守るためにも家族を集めた僕がこの世界を守るしかない。

その時、目の前にいた未知の種が突然手を挙げ、その手のひらに急速に魔力を集めだした。

当たり前のように、周りの魔力を利用しているようだ。

それは僕の必殺技なんだけどな...

呑気なことを言ってられない速さで魔力が大きくなっていく。

それが手を下げた瞬間、僕はその方向へメネシスを放った。

強力な閃光が周りを包んだが、攻撃はこちらまでは来なかった。

やはり、相手の魔力は神族の魔力と反発している。

だから、魔力がぶつかると相殺されて消えてしまうのだ。

これは、自分にとっても相手にとっても、面倒だがありがたいことだ。

相手に攻撃は届きにくいが、相手の攻撃も届きにくい。

時間を稼ぎたい僕からすれば、奇跡的な幸運。

周りの魔力が減った感覚がない。

ダンジョンでは使った魔力が再びダンジョンに吸収されるようだ。

つまり、この程度の攻撃が続くのなら、半永久的に時間を稼ぐことが出来る。

まあ、そんなこともないのだろうけれど...

「そなたが死神という種族のものですか」

死神のことは知っているのか。

「はい、私はあなたの種族を知りませんけどね」

「それはそうだろう、我が種は我が唯一の存在であり、我が始祖なのだから」

新種の始祖ということか。

それは誰にも知られてないわけだ。

「なるほど、で、ここで何を?」

「この場の魔力を頂きに来たと言えばわかるのか?」

まだ誕生して間もないということか。

それは嬉しい情報かもしれない。

こんなのが成長したら、神族を挙げて戦争することになる。

「魔力を吸い取って、どうする気です?」

「まだ考えてはおらぬ」

本能で力を得ようとして魔力の多いダンジョンに惹かれてきたのか。

でも、何か目的がないだけマシ、か。

「魔力なら私が渡しましょう」

「ここは人間の住処、あまり荒らすのは良くないです」

「人間、あの魔力のほとんど感じない生物のことか」

「確かに彼らは個々としては弱いですが、集まれば十分あなたの驚異となり得ます」

いや、多分ならない。だが、この人は誕生したばかり、あまり詳しいことは分かってないはず。

「そなたの言いたいことは分かった」

「だが、そなたにはククリの件の罰を受けさせなければならぬ」

やっぱり忘れてないか。

「私も生きるためにやったのです」

「許せとは言いません、ですが、関係の無い人々まで巻き込むのはやめて頂きたい」

「ふむ、それも一理ある」

「後僕は、ククリさんを蘇生できます」

「なんだと?」

「何回もではありませんが、僕は生物を蘇生させることが出来るんです」

「ふむ、ならば、そなたがククリを蘇らせたら、そなたの言う通りここを離れ、人間には手を出さないと誓おう」

思ってもみない好条件。

ククリが相当大切なようだ。

「では、蘇生します」

僕はククリの体に手を当てて、ソテイラを施した。

前とは違い、この量の魔力消費にも慣れ、敵の前で倒れるようなことにはならなかった。

魔法を施し終わると、ククリが呼吸を始め、やがて目を開いた。

「これは驚きだ、まさかこんな術が存在するとは」

「生きるので必死だったとはいえ、ククリさんを一度殺めてしまい、申し訳ありませんでした」

「私のことはどのようして頂いても構いませんが、どうか、私の仲間とこの世界の人々には危害を加えないで頂きたい」

「分かっているククリをやっていなければ、そなたが死んでいた」

「それが世の摂理」

「そしてそなたは、ククリを蘇らせた」

「いわば、そなたはククリの命の恩人と言えよう」

え、...え?

どういう風の吹き回しだ?

いや、まあこちらからすればいい流れなんだけど。

「いえいえ、そんなことは」

「ところで、どうして魔物たちを集めていたのですか」

「我は集めてないぞ」

この人の魔力に魔物が寄って行ったのかな。

「それなら大丈夫です」

「では、早くここを出ましょう」

「私たちのようなものがいると魔物が寄ってきてしまいます」

「ああ、魔力が流れ出ていたか、すまぬ」

「いえ、私達も目標の二十階まで来れたので、一緒に出ましょう」

「わかった」

結構聞き分けはいいんだな。

とりあえずここからこの人を連れ出して、安全なところに連れていかないと。

この人を野放しにしたら、この人も危ない。

はあ、死神は忙しい...

その時、回復したフィリアが起き上がり、目を擦りながら周りを見渡した。

「あれ、敵は...」

「もう終わったよ、みんなを連れて、ここを出よう」

「そ、そうなのかー!」

「恥ずかしい...」


ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

今まで存在しなかった新しい種、これからどんなハプニングを巻き起こすのか!

次の話もお楽しみに!


次話は、5月3日に投稿します!

ご意見、ご感想、お待ちしております!

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