ヘルンはダンジョンに潜りたい
「歴代最速のB級昇格、か」
まあ、冒険者登録の五日後とかだもんな。
でも僕らはこんなところで止まる訳にはいかない。
すぐにA級、そしてS級にならなければならない。
この国に長く留まるつもりは無いけど、この国が変わるまで、この国を変えられるまでは、僕らは決して逃げない。
「でもさ、今更だけど、S級になる必要なんてあるのかな」
「どういうこと?」
「先輩は、人手が足りないって言ってたでしょ?」
「私達がS級の力を持っていることはたしかなのに、わざわざS級になる必要なんてあるのかなって」
「たしかには実力的には昇格する必要無い」
「でも、会長さんが言っていた、王からの勅命や軍との協力」
「それは、力を持っていれば出来ることじゃない」
「民からの信頼、実力の証明が必要になる」
「それには、冒険者としてのランクを示すことが一番手っ取り早いんだとおもう」
「なるほどなあ...」
「まあ、Sランクの昇格に相当する依頼が起きるかどうかも分からないけどね」
「そういえば、普通の人ってどうやって昇格するの?」
「今回はたまたま討伐依頼が見つかったけど、討伐依頼って全然無いよね」
「そうだね、私は冒険者じゃなくて軍だったから詳しくは分からないけど、ほとんどの冒険者はダンジョンで魔物を討伐して、その魔石を持ち帰ることで成績になるらしいよ」
「その魔石の買取額が給料にもなるの」
ダ、ダンジョン!!!!
人間時代、暇過ぎて嫌という程漫画を読んで、ずっと妄想していた。
夢の場所、ダンジョン...
「僕らもダンジョンに行こう!!!!!」
「わあ!?」
つい大きな声を出してしまい、ハネストがひっくり返った。
「いてて」
「ごめん!?大丈夫?ハネスト」
「大丈夫だよ、ダンジョンに行くのは良いけど、昇格するための成績を集めるには結構非効率だよ」
「なるほど...なにか方法はない?」
「んー、あ!フロアボスかな!」
「フロアボス?」
「ダンジョンには階層があって、各階にボスがいるの」
「一階層とか二階層のボスを倒してもさほどの魔石は取れないけど、二十階層のボスくらいになれば、魔石を取れれば金貨十枚にはなるらしいよ」
「え、そんなの冒険者協会が破綻しない?」
「そのくらいの魔石だととんでもない価値があるし、ダンジョンの魔物は何度も生成されるけど、人はそこで死ねばそれで終わりだからね」
「そう簡単に何回も行ける訳じゃないんだよ」
「それに、一度ボスを倒すと、その人がダンジョンに潜ってもフロアボスだけは生成されないの」
「だから、同じボスを同じ人が何回も倒すことは出来ない」
「なるほどねー」
「今の最高到達階層は、確か百年以上前のSランクパーティが到達した、四十四階層」
「でもそれからその記録が破られることはなくて、ここ十数年の最高到達階層は十八階層くらいのはずだよ」
「今ウォリアスで唯一のA級パーティがその記録を出して、話題になってたよ」
「剣聖の集い、だったかな」
「軍にいた頃に一緒に遠征に行ったことあるけど、相当強いよ」
「その人に認めてもらえれば、実質昇格だよね」
「うん、ウォリアスにA級は一つのパーティしか居ないからね」
「ウォリアスにってことは、他の国には居るの?」
「うん、でも、昇格に関わるのは審査を受ける冒険者協会がある国のA級パーティだけだから、他のパーティは関係ないよ」
「なるほど、じゃあとりあえず、二十階層だね」
「二十階層を突破すれば、認めてもらえるんじゃないかな」
「いいと思う!」
「ダンジョン?に行ったことが無いのだけれども、ダンジョンで気をつけることはあるかしら」
「うーん、特に討伐依頼とかとわかったことは無いけど、ダンジョンは洞窟みたいになっているから、場所をとる大技はなかなか出せないかも」
「なら私の魔法は使いにくいわね、私は補助に回るわ」
「アイシーって補助魔法も使えるの?」
「言ってなかったかしら、私の本職はそっちよ」
「戦いで自分も戦うことができるように大規模攻撃魔法だけ習得したけれど、本来は味方の補助と敵の妨害をする補助魔法が得意なの」
「それであの威力...」
こわぁ...
「安心しろ、私は元から攻撃特化だ」
「だよね、流石にね」
フィリアまで本職じゃないなんて言われたら、当分僕は魔法の訓練をしないといけなくなる。
「私は火力補助にする!」
「フィオナは回復頑張る〜!」
「じゃあ、僕、フィリアが火力、ハネストが近距離、ヘレナが後方火力支援、アイシーが全員の補助と敵の妨害、フィオナが回復ね」
役割分担はチーム戦において最重要。
僕が指示を出せない状況になっても、みんながある程度自分で動くことが出来るようになる。
「じゃあ明日、さっそくダンジョンに行ってみよう!」
「おー!」
翌朝、僕らはウォリアスで一番大きいダンジョンへと向かった。
「私たちにはヘルンがいるから、食料も寝具も要らないね」
「寝具?」
「うん、潜ったらその分また戻ってこないといけないから」
「基本的にダンジョンに潜る時はダンジョンで何泊かはしないといけないんだよ」
「そうなんだ」
「とりあえず二十階層まで行って、戻ってこよう」
「了解!じゃあ入ろうか」
「みんな一応言っておくけど、二十階層は、昔国が兵を上げて攻略しようとして全滅した歴史を持つ、とんでもない場所だよ」
え、それ結構やばいんじゃない...
「私たちならいけるだろうが、気を抜かずに行こう」
「フィリアの言う通りだよ、ヘルンもだからね!」
うぐっ、ダンジョンが楽しみすぎて調子に乗ってるのがバレている...!
「わ、分かりました...」
その時、少し遠くから僕らへ発せられたであろう声が聞こえた。
「お前たち、良かった、間に合ったか」
「あ、先輩!」
「おう、お前らがダンジョンに潜るって聞いてな」
この人は、アンドレイアさんから僕の正体を聞いていないのかな。
それとも知っててやっているのか。
どちらにしろ、気を遣われない方がこちらとしてもやりやすい。
「二十階層を目指すのか?」
「はい!今のA級が十八階層ですよね?」
「そうだ、剣聖の集いが最近十八階層に到達した」
「二十階層にたどり着けば、認めてもらえますかね」
「恐らくは大丈夫だろう、剣聖の集いのやつらは剣のこと意外に関してはまともだからな」
剣に関することにはまともじゃないってこと...?
「まあ、頑張ってくれ」
「かつてのS級は四十四階層まで行ったらしいですね」
「つまり、僕らは二十階層でつまずいていられない」
「ヘルフェン...助かる、今のウォリアスの冒険者協会には、S級パーティが必要だ」
「近頃複数のダンジョンで異例の自体が起きている」
「軍と普通の冒険者では対応出来なくなるかもしれない」
「頼む、S級パーティとしてこの国を助けてくれ」
「先輩...」
「任せてください、僕、強いので!」
「はは、それは頼り甲斐がある、任せたぞ」
「はい!」
会長に見送られ、僕らはダンジョンへと入っていった。
ダンジョン内は不思議な光る鉱石で出来ているそうで、前が見えないなんてことは無さそうだ。
夢にまで見たダンジョン、目一杯楽しんでやる!!!
邪魔するやつは、許さない。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
ダンジョンにワクワクを隠しきれないヘルン、無事に二十階層までたどり着けるのか!
次の話もお楽しみに!
次話は、4月17日に投稿します!
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