ダンジョン攻略
ダンジョン内は特殊な鉱石により明るいものの、ヒヤリとした空気が頬をかすめ、何かしらの不気味さを感じた。
ウォリアス中央区ダンジョン、「無限の迷宮」
普通のダンジョンは、魔力などの情報からおおよその最下層の階数が分かるのだが、この無限の迷宮は、測定可能な階数をゆうに超えており、探索によって最下層を見つけるしかないのだ。
最下層がどこか分からない、それで、無限の迷宮と呼ばれているらしい。
実際、僕の魔力量でさえ、最下層を見つけることは出来なかった。
まあ、別に最下層に行かなければならない訳でもない。
楽しみながら、二十階層まで行ければいいんだ。
にしても、
「魔物、全然居ないね」
「うーん、まだ一階層だからかなー」
「それにしても居ないねー」
ハネストから見ても少し異常らしい。
これが会長の言っていたことなのだろうか。
「まあでも、都合はいい」
「一気に駆け抜けよう」
「そうだね!」
二階層、三階層と走り抜けて、四階層まで来た。
その道中、低級の魔物の一匹すら、存在しなかった。
ダンジョン内には静けさのみが広がり、とても戦いの場には見えなかった。
「ダンジョンはここであっているのか?」
「うーん、間違ってるなんてこともないと思うけど、さすがにこれはおかしいよ」
アイシーは既に走り疲れたのか、イラついているようだった。
フィオナとヘレナは地面に座って手をついている。
「これが、会長の言っていた異常なのかもしれない」
各世界で起こる異常、魔力の溜まりすぎや地形上の問題、様々な理由で起こるが、そのどれもが一国を危機に晒すほどの大規模なものとなる。
守護神の仕事は、その異常の排除。
魔導国カリタスの王座はネロに譲ったけど、元よりある神王の座とバシレイア守護神の座には、未だに僕が座している。
つまり、この異常は僕が解決すべき問題だ。
「僕、ちょっと一人で先の方を見てくるよ」
「危なくない?一緒に行くよ!」
「大丈夫さ、僕は超高速で飛ぶことが出来るし、強敵に遭遇しても、対処法はいくらでもある」
「むしろ、みんなを連れて行けば、僕が逃げれてもみんなが逃げられない可能性もある」
「これは、神界によって定められた、僕の仕事だ」
「ヘルンファミリーが命をかけるのはこんな所じゃない」
「うーん、でも、!」
僕を止めようとするハネストに、フィリアが言った。
「ハネスト、やめておけ」
「実に遺憾だが、ヘルンの言っていることはまちがっていない」
「私たちは強者だが、それはあくまで人間界では特別というだけだ」
「ヘルンは神界、一人一人が世界を揺るがす存在の中で、特別な存在として扱われる、まさに異次元、異端、理解不能の存在なのだ」
「失礼だな」
「まあそういう事だ、私たちはここで休んでおこう」
「うん...わかった...」
「ごめんねみんな、なるべく早く戻ってくるし、危なかったらすぐに引き返すよ」
「うん、気をつけてね!」
「じゃあ、また後で」
ダンジョンの階層全体に魔力探知を広げ、冷たい空気を斬りながら飛び続けた。
服がバタバタとなびき、風の音が響いた。
それは、ダンジョン内に自分以外のものが何も無いことを示していた。
ハネストによれば、ダンジョンの多大な魔力により、魔物は倒しても少ししたらまた出現するはずだ。
ということは、ダンジョンの魔力が尽きかけているのか?
いやしかし、ダンジョンの魔物は倒されるとその魔力をダンジョンに返還する仕組みになっている。
つまり、理論上ダンジョンの魔力は尽きない。
それに、ダンジョンからはまだしっかりと魔力を感じる。
何らかの理由でダンジョンで魔物が生まれなくなったのか、はたまた、生まれた魔物がその階層に留まらずにどこかに行っているのか。
どちらにしろ、ダンジョンに異例の事態が起こっていることに変わりない。
ダンジョンの異変は、人々に甚大な被害を与えかねない“異常”だ。
その処理は当然にして守護神である僕の仕事。
迅速に片付けて仲間のもとに戻る。
それが今の僕の課題だった。
いつの間にか十階層、十二階層、十五階層と飛び抜け、現存するパーティの最高到達階層である十八階層までやってきた。
その時、足元の方から莫大な魔力を感じた。
ダンジョンから発せられる強力な魔力を打ち消すほどの、強大な魔力。
その恐怖に、身体が一瞬凍りついた。
本能的に体外へ漏れ出る魔力を遮断し、周りを確かめた。
平行方向にのみ魔力を流してみたが、特に何も感知出来なかった。
おそらく、強大な力はここよりも下の階に留まっている。
魔神エルを思い出す程の恐怖。
並の死神なら単騎での解決は不可能だろう。
神王である僕ですら、師匠を呼びたくなる。
引き戻すか...
いや、これほどの力をこのまま置いておく訳にはいかない。
いつ爆発してもおかしくない。
なるべく早く対応しなければ、最悪ウォリアスが滅亡する。
みんなを呼ぶか?
いや、だめだ。
頼る頼らないの問題じゃない。
僕はもし何かあれば転移出来るし、そもそも死ぬ可能性が極めて低い。
単騎直行、それが僕に残された、最悪な選択肢。
足が震えるのは、久しぶりだった。
何とか出した足は徐々に早くなり、僕はその異常に向かって駆け出した。
十八階層を走り抜け、十九階層へ繋がる階段へと差し掛かった時、石が僕の頬をかすめた。
目の前には、数十匹のゴブリンが武器を持ってこちらに向かってきていた。
魔力探知を広げると、十九階層は魔物で溢れかえっており、奥へ行けば行くほど強い魔力を感じる。
それはまるで軍隊のように並べられており、自然的なものとは到底思えない。
メネシスで吹き飛ば、いや、だめなんだった...
ハネストが言っていたじゃないか、ダンジョンで大技は使えない。
特にダンジョンボスの居る場所でも無い細い洞窟であるここでは絶対に大技は使えない。
僕が使えばダンジョンが崩壊してしまう。
ダンジョンは多少の崩れは自分で修復する。
普通の人の全力程度なら大丈夫だが、メネシスにはさすがに耐えられないだろう。
となれば、最速でこれを片付ける方法はシンプルだ。
デスサイズで、切りまくる。
そういえば、一つやってみたいことがあったんだ。
デスサイズは死神によって形が全く違う。
つまり、自分の考えようで形を変えられるのではないか。
鎌の形は少数相手では強いのだが、大量の敵を相手する時はあまり使い勝手が良くない。
もっと振り回りやすく、切りやすい形。
目をつぶり、そう念じると、手元のデスサイズの形は変わり、一筋の剣が輝いていた。
一枚の刃は片方は鋭く、片方は切れないようになっている。
刀、対象を切断するための武器。
自分のトップスピードで敵を切り捨てる。
刀を構える。
魔力を抑えている僕を、ゴブリンが馬鹿にしながら近づいてくる。
覚悟しておけ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
昨日の投稿日、お休みしてしまいすみませんでした!
楽しみにしていたダンジョン異常、ヘルンは仕事を無事に終わらせられるのか。
次の話もお楽しみに!
次話は、4月23日に投稿しようと思っています!
ご意見、ご感想、お待ちしております!




