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銀狼の秘密

「僕はあなたと戦いたくない」

―ふむ―

―しかし、我にもブラックウルフとしてのプライドがある―

―我を下につけるのならば、それだけの力を示してみよー

「いいでしょう」

デスサイズを呼び出しながら僕は言った。

「あなたに攻撃をするつもりはない」

「ただの攻撃魔法を見せたところで仕方がないでしょう」

「となれば、うーん」

「あ、さっき仲間から聞いたんですけど、ブラックウルフって雷からエネルギーを吸収出来るって、本当ですか?」

―ああ、本当だ―

「おお、ならちょうどいい!雷を起こすのでエネルギーを補給して下さい!」

―は?どういう事だ?―

デスサイズを頭上にかざす。

天変地異を起こすことなんて、神王からすれば余裕なのだよ。

自然干渉系の魔法は、超上位の魔術師にのみ許される高度な魔法。

周りの環境を覆い尽くす為の莫大な魔力が必要となる。

空広域に魔力を流すと、だんだん空は黒く曇りだし、数十秒もすれば雷がゴロゴロと鳴り出した。

「いきますよ!」

僕がデスサイズをブラックウルフの方へ向けると、空から一筋の大きな雷が落ち、ブラックウルフに直撃した。

ブラックウルフの巨体を稲妻が駆ける。

黒い毛が立ち上がり、全身で雷を吸収している。

見とれるまもなく、まだ少し体の周りをピリつかせながら、ブラックウルフは食事を終えた。

「どうでしたか?」

―素晴らしい、信じられないが、疑いようもない、空をも自在に操る様、神と言って差し支えないだろう―

ま、まあ、神ですから...

―しかし、これだけの力を持っていて、我々を力で従わせるようなことが起きないことをどうやって説明するのだ―

「仲間だから」

「それじゃだめですか」

「あなたが一番知っているのでは、仲間というものがどのような繋がりなのか」

―ふむ―

「僕についてくる気になりました?」

―いいだろう―

―我と我の仲間たちは、お前に協力する―

よしっ!

「じゃあこの戦いも終わりですね」

―そうだな―


精神会話でみんなに終戦を伝えた。

まもなく僕のところに全員が集まり、ブラックウルフと話し出した。

「ブラックウルフを仲間にしちゃうなんて、さすがね...」

「シルバーウルフは偵察などに長けている、いい戦力になるだろうな」

あ、そういえば...みんなシルバーウルフと戦ってたんだよね...シルバーウルフが死んでしまったらブラックウルフ怒るんじゃ...

それで和解破棄とかになったらどうしよう...

「あ、あの・・・」

「気絶させたシルバーウルフたちものちに起きるから安心してくれ」

―ああ、助かる―

ああ、助かる。

そっか、そうだよね、もうみんな、僕が何も言わなくてもわかってくれるんだよね。

「ヘルン、なにか言おうとしたか?」

「いや、なんでもないよ、全然なんでもないから」

「そうか、ならいいが」

「にしても、シルバーウルフたちはどこに住んでもらおう」

「宿には流石に入らないし」

―そのことなら任せてくれ―

そう言うと、ブラックウルフは仲間に届くように遠吠えをした。

その瞬間、シルバーウルフたちが銀色の光となり、ブラックウルフに取り込まれた。

...どういうこと?

―ブラックウルフは、シルバーウルフを隠すことが出来るのだ―

―我々は物理的な意味合いでも互いに一つだということだ―

―そしてこんなことも出来る―

そう言い放った瞬間、視界からブラックウルフが消えた。

「どこに行ったの?」

「主人よ、下を見ろ」

可愛らしい声が、足元の方から聞こえた。

その方向を見ると、一匹の黒い子犬がお座りしていた。

「え、可愛い」

「子犬にもなれるんだ」

「犬ではない、狼だ」

「ああ、ごめんごめん」

「にしても、可愛い〜!ちょっと撫でてもいい?」

聞く形をとりながら、僕の手はもうブラックウルフに触れていた。

「や、やめろ!ふれるなー!」

「ええ〜なんでよ〜」

そこに、可愛いもの大好きちゃんズまで来て、その場はブラックウルフを愛でる場と変わった。

「お兄ちゃん!この子が今日から仲間なの!?」

「そうだよ〜!」

「やったー!」

ヘレナとフィオナが喜びながらブラックウルフを撫で回している。

元気だなあ...

ブラックウルフは助けてくれと言わんばかりに吠えたが、それすら可愛くてより状況は悪化していったのだった...

お疲れ様...

「そういえば、この子の名前は!?」

「まだ決めてないよ」

「君の名前は?」

「我に名など無い、好きに呼ぶがいい」

「んー、どうしようかな」

ブラックウルフ...黒い狼...黒い...クロ...

「よし、君の名前はクロだ!」

「可愛い響だね!いいと思う!」

「好きにするがいい」

「クロ、拗ねてるの?」

「いや、嬉しいんだよ、きっと」

「なわけないだろうが!!」

そうして、クロはヘルンファミリーに加わったのだった。

「じゃ、一緒に村の壊れたところ直すよ」

「あ、...分かったのだ...」


「ブラックウルフの群れの鎮圧...ですか?」

受付嬢の少し疑いの入った驚き声に、周りの冒険者たちは僕らを鼻で笑った。

まあ、信じられなくても仕方がない。

冒険者になりたての新人がブラックウルフを鎮圧したなんて、誰が信じるのだろうか。

ヘレナとフィオナは僕らを笑いものにする冒険者たちを全力で睨んでいる...

やめな...

「シルバーウルフの群れの討伐を引き受けたのですが、そこにブラックウルフもいまして」

「ブラックウルフの魔石などあれば成績として記録できるのですが...」

「ないですね、倒してないので」

「...というと?」

「仲間にしました、名前はクロです」

僕は受付の台にクロを乗せた。

その瞬間、協会内が笑いで包まれた。

「にいちゃん、それはさすがに冗談がすぎるぜ」

「その辺の野良犬をブラックウルフとは言わねぇんだよ」

「その子犬を連れて早く帰りな」

ヘレナとフィオナの怒りが爆発しそうだったので、最終手段をとることにした。

みんな怖がるから、あまりしたくなかったんだけど...

「はあ、仕方ない」

「クロ、元の姿に戻っていいよ」

「了解した」

「え、なんで子犬が喋って...」

受付嬢のその言葉が終わるのを待たずに、クロは協会内を窮屈にさせる大きさに戻った。

見た目も先程とは全く違い、威厳と迫力に満ちていた。

協会内の全員が息を飲む中、僕はクロにまた小さくなるように指示した。

「これで大丈夫ですか?」

「も、もちろん!ブラックウルフの群れの鎮圧、村の救助に復興協力まで、お疲れ様でした!」

まだ落ち着ききれていない様子で受付嬢が言った。

「では、会長に確認してきます!」

そう言い放ち、受付嬢は職員用通路へと走っていった。

少しして、奥に入っていた受付嬢の人が帰ってきて、僕らに元気よく伝えた。

「会長も文句なしの昇格です!B級冒険者昇格、おめでとうございます!」

よし、何とかB級、あとはA、そしてSになるだけだ。

「ありがとうございます」

「にいちゃんすげーな!!!」

「私たちのヘルンは凄いんだからー!」

「じょうちゃんたちも相当強えんだろうな」

「ふふ、もちろん!」

ハネストが誇らしげにしている。

まあ、よく頑張っただろう。

クロも色んな人に神聖視されて満足そうだ。


「クロ」

「なんだ主人よ」

「仲間として、家族として、これからよろしくね」

クロのしっぽが少し上に立ったが、直ぐにまた垂れた。

「あ、ああ、よろしく頼む主人よ」

「うん」

僕は笑顔で応えたのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

新キャラ「クロ」登場!ヘルンファミリーのペット枠!?今後の活躍に期待しています!(私も)

次の話も楽しみに!


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