強国の闇
「私の名前は、クレフティヒ・ウォリアスであります」
金髪にがっちりとした身体、いかにも強そうだ。
「守護神様に攻撃を行うという無礼、私の処刑でお許しいただけないでしょうか」
ええ...でもまあ、普通に考えればおかしくはない。
守護神に手を出すのは禁忌の行為。
報復として国を潰される可能性もある。
王の命で国が救うのが王の役目だ。
きっとこの男は誠実な男なのだろう。
「顔をあげてください」
「こちらの損傷はありませんし、私は守護神」
「自ら有能な王の命を奪うことなどしません」
ウォリアスはこの数年で急速に繁栄しており、この王が優秀なことは元から知っていた。
そんな男をそう簡単に手放せば、ネロたちが困る。
「なんとも寛大なお心、しかし、何もせずに終わらせる訳にはいきません」
「ええもちろん、私たちに手を出したのですから、それ相応のことはして頂きます」
「は!何でもお申し付けください」
「一つ、この国で私たちの情報を漏らさないこと」
「二つ、今守護神として働いているネロ様に極力力を貸すこと」
「それで今回の件は無かったことにします」
「承りました、ご希望に添えるよう全身全霊で働いてみせます」
「はい、では、私たちは行きたいところがあるので」
「あ、あと、火炎の魔術師アディナモスについてですが」
「盗賊との関係、守護神様への無礼、軍への虚偽報告などで、地位の剥奪と、相応の処罰が確定しました」
「そうそう、火炎の魔術師ってなんですか?」
「この国には特に強い魔術師を属性ごとに定め、互い協力し、高め合うという体勢を取っております」
「その魔術師たちは政治においても権力を持ち、人々から敬われているのです」
「でも、火炎の魔術師さん?全然強くなかったですけど」
「あいつはコネでなったので当然です、あいつの父親は偉大な魔術師だったのですが、息子はその権力に溺れ、努力もせず職権乱用を繰り返していたのです」
「私の不徳の致すところ、申し訳ありません」
「そのような腐敗した部分を除去できるよう、邁進致します」
「頑張ってくださいね」
「はい、ところで、皆様の部屋を取らせましょうか?」
「いや、いいです、私たちは普通の旅がしたいので」
「なるほど、では守護神様たちの旅が素晴らしいものとなりますように」
「本日はお越しくださりありがとうございました」
「あ、一人だけ案内役をつけて貰えませんか?」
「冒険者協会まで連れて行って貰えれば結構です」
「もちろん、すぐに御用意致します」
王城を出ると、一人の若い兵士が僕らを待っていた。
「私が皆様をご案内させていただきます」
「ああ、ありがとう」
「では、さっそく」
改めて街を歩くと、やはりイレーネやサスティナと比べても随分と栄えている。
数年前までは小国だったはずだが、冒険者を上手く呼び込みここまで栄えたのだろう。
街の人々もみんな笑っている。
必ずこの国は、ネロの助けになる。
「ここが冒険者協会です」
「意外と早いな」
「では、私はこれで」
「はい、ありがとうございました」
目の前には一目では見れないほどの大きな建物が建っていた。
白く塗られた石造の建物は、その辺の建物とは全然異なるものだった。
開放された入口から、ここが賑わっていることが伝わってきた。
「入ってみよう」
全員にフードのついたローブを創造した。
「なるべく顔を見られないようにしてね」
「みんな、開国祭で顔が知られているから」
「まあ、会場は大きかったし、そんなにちゃんと特徴を捉えている人は居ないだろうけど」
協会に入ると、目立つ余所者に皆が一度視線を向けた。
こ、こわぁ...
受付へ行くと、受付嬢の人が冒険者証の提示を求めてきた。
提出すると、受付嬢は少し困り顔をし、それを返してきた。
「この証書は有効期限が切れています」
「恐らく、半年以上申請無く活動を休止なさったのだと思われますが」
え、これ期限切れるとかあるの...
「再発行って出来ますか...」
「出来ますよ」
「僕の連れもお願いしたいのですが」
「はい、皆様書類に情報をご記入頂ければ結構です」
その時、受付の奥の方からハリのいい男の声がした。
「おおー!ハネストじゃないか!」
「あ!先輩じゃないですか!」
先輩...?
「この人、メガロス帝国で修行してた時代の先輩!」
「その時1番強かった人だよ!」
「先輩、軍団長になったんじゃなかったのですか?」
「あの仕事はつまらなかったから辞めた」
「今はウォリアスで冒険者協会の会長をしている」
「はは、先輩らしいですね!」
「ところで、この男の子は誰だ?お前の弟か?」
「いえ、似たようなものですが違います!」
「なんて言えばいいんでしょう」
「弟というか、主というか、将来のだんn」
「あ、お前がヘルフェンか!アンドレイアから話は聞いたぞ!」
「なんかすごいらしいなあ!冒険者証の発行なら任せておけ」
「あ、ありがとうございます!」
いい人そうでよかったあ。
「だが、俺からも一つだけ頼みたくてな」
「今、この国の冒険者協会は人手不足でな、強いパーティが欲しいんだ」
「そこで、お前さんたちにS級パーティになってもらいたい」
「S級パーティ?」
「冒険者パーティにはランクがある」
「低いものから順にE級、D級、C級、B級、A級、S級だ」
「C級くらいから冒険者として食っていける」
「A級ともなれば軍から協力要請が来る」
「S級は今は居ない、数十年に一度生まれるか生まれないかの奇跡的なパーティだ」
「王からの勅命で動いたり、国運を任せられたりもする」
「聞いたぞ、強いんだろう」
「S級になってくれないか」
え、えぇ...そんな急に言われても...
「ちょっと先輩、ヘルンを困らないで下さいよお!」
「はは、ついな、すまん、ゆっくり考えてくれればいい」
「それに関係なく冒険者証はちゃんと発行してやるからな」
「分かりました、ありがとうございます」
冒険者協会を出ると、僕らは宿を探し始めた。
「何人部屋にしようか」
「フィオナはフィリアと同じ部屋がいいよね」
「私はハネストお姉ちゃんと一緒がいい〜」
「確かに、ヘレナも一人にするのは危ないか」
「じゃあ私はヘルンと同じ部屋ってことかしら?」
その瞬間、空気が凍りついた。
二、三個の鋭い目線を感じる。
「い、いや、アイシーは一人かどっちかの部屋に入ったらいいんじゃないかなあ...」
「でも三人なんて狭いし、一人は寂しいわ」
「アイシー、うちの部屋に来ればいい」
「フィオナはまだ小さいから狭くもないだろう」
「あら、いいのかしら」
二人は笑っている。
笑ってはいる。
ただ、目の奥が笑っていない...
結局、冒険者協会の近くの宿で、三つの部屋を取った。
アイシーは、フィリアの部屋に少し拗ねながら入っていった。
ひとまず一件落着...
旅も少し疲れたし、散歩でもしてこよう。
少し暗くなった街だが、賑やかさはあまり変わらず、屈強そうな男たちが増えた気がする。
冒険者たちが帰ってきたのだろうか。
しばらく歩いていると、少し静かな路地に入った。
すると、いわゆる路地裏から小さな叫び声が聞こえた。
走って向かうと、小さな男の子が二人の男に腕を掴まれ、連れ去られそうになっていた。
「お前たち、何をしている!」
「んあ?おお、商品が自分から飛び込んできたぞ」
「何をしてるかって?んなもん人身売買に決まってんだろ」
「お前も今から売られるんだよ」
「はあ、」
そういえば、盗賊が軍に通報したのだとすれば、あの盗賊はウォリアスの人間ということになる。
ウォリアスは自由な国だ。
それ自体はいいのだが、やはり犯罪も横行しているのか。
「パラライズ」
「お兄ちゃん、ありがとう」
「いいんだ、おうちは分かるかい?」
「うん、すぐそこだよ」
「じゃあ連れて行ってあげよう」
この国を救うことは、放浪する神の、責務なのかもしれないね。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
ヘルンはS級冒険者になるのか、ウォリアスの現状とは!?
是非次の話もお楽しみに!
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