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Ep6-12 三泉記念美術館

広大なレイドエリアの別の一角では、レムナンツ・ハンズの面々がレイド攻略に挑んでいた――

 1時30分 新日本橋駅2番出口


「時間だ。いくぞ」

 特徴のない白いバンのスライドドアを開けてレムナンツ・ハンズのメンバーが時間貸し駐車場のアスファルトを踏む。周囲を確認し、真っ先にリーダーのカサギが地下通路の入り口に降りたシャッターを開ける。その間に車を施錠したトオノが追い付き、写楽倣介を含めた五名が揃う。

 シャッターが上がりきらないうちにケイタが切り込み隊長よろしく階段を駆け下りていく。終電を過ぎて間もない地下連絡通路はまだ照明が灯っていた。今回のレイドは地下と建物内だけという制限があるもののエリアは広大でターゲットのお宝も豊富だ。カサギは出来るだけ他のレイダーと競合しないよう一番端の孤立したエリアにある三泉みつい記念美術館を最初のステージに選んだ。狙いは当たったようで、地下鉄三越前駅に続く地下連絡通路に人影はなかった。

 三泉みつい本館の地下連絡通路につながる入り口から建物内に入る。最初に警備室に入って警備システムに細工をする。本来警備室には二十四時間警備員が詰めているのだが、どうやったのか運営が手を回して無人になっている。ただし、電子的な警備システム自体は作動したままだ。

「本当に無人だ。不用心だねぇ」

 ケイタが暢気につぶやく。

「ボクはむしろ運営の恐ろしさをより強く感じるよ」

 倣介がぶるっと身震いする仕草を見せるが、若干大袈裟でからかい半分というところか。

「軽口叩いてんじゃねぇ。事後の訴追はないことにはなってるが、身元を示す証拠は残さないよう油断するな」

「おうよ」

「わかってますって」

 相変わらず軽い返答にカサギが苦虫を潰した顔で頭を振る。

「ったく、いつからウチは託児所になったんだか……」

「ドンマイ、リーダー」

 無口なメイが珍しくカサギに語り掛け、肩に手が届かないのか精一杯背伸びして背中をぽんぽんと叩く。それを受けてカサギがさらに大きくため息をつく。

「よし、完了っと。内部の警報装置はそのままだけど外部の警備会社への通報は止めたよ」

 トオノが警備システムにつないだケーブルを回収しながら告げた。

 量子結晶に関連したレリックの盗難は運営のほうで調整してくれることになっている。それ以外の器物破損や貴重品の窃盗は警察に突き出されるので細心の注意を払う。それが今回のレイドのルールだ。ケイタとしては窮屈に感じていて要塞攻略みたいな派手に暴れられるレイドが好みだったがレムナンツ・ハンズは小規模レイドチームなので仕方がない。倣介のような手練れをどんどん仲間に入れてチームを強化したいという思いが強い。

「よっしゃ、行こうぜ」

「気合の入りすぎも問題だと思うけどねぇ」

 美術館があるのはこの建物の七階だ。エレベーターを使って上がる。中身は最新式だがデザインは落成当時を再現しており、エレベーターの位置を示す針がゆっくりと動いて籠の到着を告げる。

「クリア」

 一応、通路に人がいないことを確認して籠を下りる。

「こっちだ」

 カサギの指示に先行してケイタが走る。この建物の配置図は事前に頭に入れてある。目的地は三泉みつい記念美術館の金庫室だ。

「おっし、いいぜ。誰もいない」

「へえ、金庫室までそれっぽいねぇ」

 歴史を感じさせる重厚な大理石の化粧壁の壁の真ん中に、まったく別の意味で重厚な特殊鋼板の金庫扉が埋まっている。

「わかってないなぁ、写楽君は。見てよ、このリベット。ほれぼれするなぁ」

 トオノが頬ずりしそうな勢いでふらふらと金庫扉に近づく。

 胸元と膝の高さに太いステンレスの横棒が通り堅固けんごかんぬきを構成している。重さが2トンあるという鋼鉄に取り付けられた蝶番が扉の右半分を縦に貫き、ケイタの腕よりも太い軸がそれらを支える。百年の間手入れされてきた特殊鋼板の肌は虚飾ではない本物のシャンパンゴールドの輝きを鈍く放つ。

「とっととやるぞ」

 トオノのバックパックをつかんでカサギが扉から引き戻す。

 バックパックから三脚といくつかカメラの形状をしたガジェットを取り出して金庫扉から1メートルほど離れた位置に設置する。トオノが扉のダイヤル付近に音響センサを取り付ける。複数のガジェットから伸びるケーブルを手元のコンソールに接続し、画像を見ながら二つあるダイヤルを右に左に何度か回していく。

「よし、開いた」

 歴史的な価値には一目も二目も置くが、残念ながらセキュリティ技術の面では百年前の骨董品だ。手順を踏めば解錠は簡単だった。

 トオノがセンサーを片付けて後ろに後退し、ケイタが前に出る。海賊船の舵輪を思わせる六本の棒が突き出たハンドルを逆手で握る。ケイタの二の腕に力こぶが盛り上がる。ぐいっとひねると案外スムースにハンドルが回り、分厚い扉の中で上下左右にあるロッキングボルトが引き込まれる手ごたえが伝わる。同時に閂が左右にスライドして扉の中心部に向かって移動し、ロックが外れる。

〔つづく〕

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