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Ep6-8 美術館巡り(4)

信託博物館をスルーした英太たちは地上ルートで日本銀行本店の前を通り、日本橋三越本店本館、三泉記念美術館のある三泉本店と巡っていく――

「ねぇ、たいへん。呉服橋の交差点が地下通路でつながってないわ。これじゃ地下だけでたどり着けない!」

 その通りだった。地図アプリにはないけどオフィスビルの地下街同士がつながっていないかなと期待していたのだけれど、ここは完全に分離している。しかもその先、日本橋駅の地下通路に入ったとしても、目的地の三越前駅との間は日本橋川に阻まれてやはり地上を行くしかない。

「うーん、これだと三泉みつい記念美術館はあきらめた方がいいかもな」

「えー、始める前からあきらめるの?あきらめたらそこで試合終了、ってよくネットに流れてるじゃん」

「いや、そもそも今回のレイドは優勝とかそういう評価はないだろ?一つもロスト・アセットをゲットできないのは避けたいけど、俺たち一人一つずつくらい確保できれば十分だと思うんだ」

「えーっ、もっと欲張ろうよ。目指せ、最多獲得賞!」

 びしっと空の一点を指差す。シックな今日の装いとはおよそかけ離れたポーズだ。

「制限時間の九十分で回れる範囲は限られるだろ?欲張ってどっちつかずになるより、さっき見つけた二つのロスト・アセットを確実にゲットしようぜ。ほら、片梨さんも急がないと誰かに奪われるって言ってたじゃん」

「たしかに一理あるわね。うーん。分かったわ。作戦は英太に任せる」

「ははっ、ありがたく拝命いたします」

 大仰おおぎょうに頭を下げる。

「うむ、良きにはからえ」

「よし、じゃあとりあえず地上を通って美術館に行くか」

「えっ、行くの?」

「せっかくここまで来たんだし、当日何があるかわからないじゃん」

「うー、なんか納得いかないけど任せたんだからいいわ、付き合ってあげるっ」

 そういうと笑いながら信号が青に変わった横断歩道を渡り始めた。


「そうだ、せっかくだからこっちから行こう」

 俺は一石橋を渡って日本橋川の対岸へ渡る。そこには地下鉄半蔵門線の駅があるわけだが、目的は地下通路ではなく、地上にそびえる日本銀行本店本館の建物だ。こちらも竣工年でいえば今回のレイドの主役である山下氏が活躍したころから建っている歴史的建造物だ。一階部分はどっしりとした安山岩を積み上げてできており、門の正面には窓のような開口部が少なく、固く侵入を強く拒絶している印象を与える。さすがに勝手に見て回れる場所ではない。もっとも事前予約すれば見学コースを回れるらしいけれど、俺たち二人だけでのレイドで日本銀行本店に侵入するなんて考えられないので最初から除外していた。

「へぇ、ここにお金がたんまりあるのかしら?」

「造幣局は別だから現金はないと思うよ」

「なんだ、つまんない」

「だけど、中には竣工のときからの大金庫が設置されているっていうから、その中にはお宝が眠っているかもね」

 少なくとも特大級の量子核晶がゴロゴロ転がっているだろう。

「いいわねぇ」

 片梨さんの目がキラキラと光る。

「もっとも、今回のレイドのエリアからはぎりぎり外れているみたいだから、侵入したら本当に捕まっちゃうと思うけど」

「ダメじゃん。って、なに?からかってる?」

「あはは、ごめんごめん」

「英太のくせに生意気」

 ゴスンと正拳突きが肩に入る。ちょっと痛い。

 そのまま正面玄関を通過してビルの谷間を歩く。と、左手に見上げるような柱頭の列が何本も並んで現れる。

「ここも凄いわね」

「日本橋三越本店の本館だよ」

「目的地はここ?」

「惜しい、ここの隣」

 広い通りに出て左に曲がる。豪奢な百貨店の前を通り過ぎ、次のブロックに三泉みつい本館があった。

 コリント式の巨大な列柱が三方を支え、神殿のごとき荘厳さを振り撒いている。

「この中に三泉みつい記念美術館があるんだ」

 三泉みつい記念美術館のコレクションは茶器類が多くあるが、書跡や絵画、刀剣類も豊富で日本の芸術品が集まっていた。

「リストにあるような古道具類はないみたいね」

「そうだね。名品が揃い過ぎてて収蔵していても表に出てこないのかも」

「そうなるとお手上げだわ。金庫に忍び込んで片っ端から鑑定するなんて気が遠くなりそう。やっぱり所在が分かっているやつを狙いましょう」

「御意」

 俺たちはようやく一日の調査を終えて、帰路についた。

レイドエリア内に含まれるすべての美術館を狙うことは時間的にも能力的にも無理があると判断し、英太たちはターゲットを絞り込む――

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